白うさぎ
「あ~、うさぎさん」
布告役の白ウサギは、裁判官役の王たちの前でその罪状を読み上げていた。
「え~、ありす は 女王のタルトを盗んだ疑い……」
「待ちなさいッ! 女王のタルトを盗んだ疑いは ハートのジャック だった筈よ?」
「……での起訴をここに」
「待ちなさいと言っているでしょッ? 私の話を聞かない気? それに、この裁判は ありす の裁判ではないわッ!! 私の 死刑宣告 返上 裁判よッッツ??!」
「証人、帽子屋」
「はい」
「名前を」
「ハッタ……マッドハッターです」
「嘘は言わないと誓いますか?」
「誓いますとも、白うさぎ」
「あなたは ありす が女王のタルトを盗んだのを見ましたか?」
「ちょっとッ! 私の話を聞きなさいよッッ!!」
「いいえ、わかりません」
「どういう事?! マッドハッター、貴男は ありす の無実は知っているでしょ? この子はそんな子じゃないわッ」
「本当に?」
「え?」
「本当に、そうだって……言い切れるの?」
「言い切れるわッ!」
「どうして?」
「どうしてって……」
「君は さっき 後悔をした。 ありす の事を信じた自分が馬鹿だったと言ったみたいだった。
なのに、信じられるの? 何で? ありす とは、会ったばかりなんでしょう?」
「それは……」
「ありす 君は、どうだい? 自らの行いを、自分を無実だと、胸を張って言える?」
白うさぎ は ありす に聞いた。アリスは静かに ありす を見つめた。
「わたしは……わからない」
ありす はうつむいた。
「どうしてッ? あなたはしていないのッ! ありす もっと、自分に自信を持ちなさいよッッ!!」
アリスは ありす に叫ぶと、ポケットから ピンクのきのこを出した。ふたつに割くと、ありす の口に詰め込んだ。
「新たな証拠が提出されました。審議します」
白うさぎ は、何やら手に持つと、王たちと審議し始めた。ありす の身体が元の大きさに戻る頃、アリスは叫んだ。
「何よ、ババアッッッツツ!!! 王様もッ! あんたたちなんか、ただのトランプのくせにッッッツ!!!!!」
アリスは泣きながら叫ぶと、残った半分のキノコを口の中に入れた。
「こんな世界…… こんな世界 要らないッ! 私はッ ここの女王になんかッ なりたくもないわッッ!!!」
トランプたちは一斉に舞い上がった。アリスに一斉に飛び掛かってきた。
アリスは泣き叫んでいた。
遠い記憶を鮮明に思い出していた。
だれも わたしの話なんて 聞いてくれなかった
だれも わたしを 見てくれなかった
さみしかった
つらかった
傷付けて わたしに気付いてもらえた
うれしかった
でも
くるしかった
強くなりたくて
強がって
傷付けた
だくさんの人を
その倍 わたしも
痛かった
痛かったの
アリスは 遠い記憶を 夢のように感じていた。




