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私は勇者になるはずだった  作者: 大木戸いずみ


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 …………どれぐらいの時間が経っただろう。気付けばもう日が暮れていた。

 また地面に叩き落とされて、月が出てきているのを見て、こんな時間なのかと気付く。

 ああ、そろそろ体力が切れそうだ。

 逃げ出したくなる。もう戦うのをやめたい。…………けど、逃げ出せない。

 私はなけなしの力を振り絞って、またフラフラとその場に立ち上がった。

「いつまであの二人やり合ってるんだよ」

「よく体力持つよな……。俺ならもうぶっ倒れてるよ」

「団長は分かるが、あのお嬢様まで…………、バケモノだな」

「あのカイル様とあそこまでやり合える奴なんかここにいるか? どんな育ち方をしたら、あそこまで強くなれるんだよ。……令嬢だとは到底思えない」

「ありゃ、天賦の才だな」

「エルヴィ嬢、嫁なら恐ろしいな」

「けど、すっげえ美人だけどな。……ヴィナス様の隣にいても見劣りしねえんだぜ?」

「僕のお嫁さんになる予定だから、あげないよ」

「「「「ヴィ、ヴィナス様!!」」」」

「今日はもう終わりだろう? 帰ってゆっくりするといい」

「「「「はい!」」」」

 ……騒がしかった騎士たちの話し声が消えた。訓練場にいた騎士たちが帰っていくのが目に入る。

 ここにいるのは私とカイルだけになったのかしら。……こんな時間まで付き合ってくれるカイルに感謝ね。

 私はまた剣を振る。集中力が切れかけている。……まずい。最後まで気を抜いてはいけない。絶対に手を抜くものか!

「動きがどんどん鈍くなっているぞ」

 防御したが、軽々と私はカイルからの攻撃で飛ばされた。上手く受け身が取れずに私はそのまま地面に転げ落ちる。

 ……全身が痛い。またこんな痛みが走るのかと思うと、立ち上がるのが怖い。もうこのまま倒れたふりをしたい。

「今日はここまでか」

 …………………………ダメ。 

 私の中の奥底にある熱い思いがそう言った。

 私は気力だけでその場に立ち上がる。息が上がっているのが自分でも分かった。

「もう戦えないだろう」

 カイルが私を哀れむように見る。私は彼を睨むように真っ直ぐ見つめた。

「…………なんなのだ、お前は。何度負けに来るつもりだ?」

「負けに来たことなど一度もない。……私は毎度あなたに勝ちに来ている!!」

 私は剣を力強く握り、彼に向けた。

「なんて目をしてるんだ。どの騎士にも持っていない目をしている。……何がそこまでお前を奮い立たせるんだ」

「……ヴィナス様が私を守ってくれたんです」

「は?」

 突然の私の告白にカイルは眉をひそめた。私は話を続けた。

いつも読んでいただき、本当にありがとうございます!

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