ノーマンに突き付けられた選択肢
ノーマンは地下から上がると女官に耳打ちをされた。
「エレメンタイン様がお部屋でお待ちです。」
「あ、ああ。ありがとう。」
ノーマンは自室でリガティアが自分を待っていることを知り、心に羽が生えた様な感じで一歩を踏み出したが、彼女とかわした会話も思い出していた。
――答えを探しながら愛し合う。
「そうだ。俺達は結婚をしないで愛し合う事を提案しあっていた。王と魔女はタブーなんて俺の方から言い出していた!ああ、もしかして!俺と思い出作りしたら出ていくつもりか?生贄は必要ないと言ってリジーに結婚を申し出て、いや、リジーはそれほど俺と結婚に拘っていない。彼女が拘っているのは俺と心が通じる事だけだ!ああ、どうしよう!」
ノーマンは踵を返すと彼はアンティゴア領内をネフェルトで見回り始め、自分が地下水を地上に呼び出したからではなく、おそらくリガティアの魔法によって川が呼び戻された風景を眺める事となったそこで涙を落とした。
流れる川の水は青々としているが、彼が子供の頃の川と比べれば幅も狭く流れる水の量も少ない。
地面は未だに表面が割れて乾いている。
塩害で草も生えないこの土地をどうやってまずは再生させていくべきか。
「こんな状態で彼女をこの国、いや、俺に縛り付けられない。」
彼は日が暮れるまで自分の国の大地を眺め続け、それでも自分が出した答えが受け取れないとそこに居続け、最後にじれた馬に放り出された。
可愛がっていた馬が自分を地面に放りだした上に、一目散で厩がある城へと戻っていく姿を見送りながら、ノーマンは大声をあげて笑っていた。
「ああそうだよ。俺はそのうちにリジーに放り出されるのが怖いだけだよ!ああ、俺はリジーよりも十近くも年老いている。十年後にリジーが俺を捨ててもリジーはきっと引く手あまたのいい女のままだろうさ!」
ノーマンは散々に自分を馬鹿にして笑い飛ばすと、答えが見つからないまま立ち上がり、とりあえず主人を捨てて戻ってきたネフェルトの姿に領民が不安に陥る前に城に戻ろうという事は決めた。
そして一時間歩いて泥まみれのまま自分の部屋のドアを開け、まだ自分を待っていた自分の恋人の姿に言葉を失った。
彼女はノーマンが粉々になるほどの最高の笑顔を作ると彼に抱きつき、彼は自分が完全に彼女に打ち砕かれたと思いながら、自分にとっては夢でしかなかった彼女を抱き締めた。
「おかえりなさい!」
「ただいま。」




