戦後処理
戦があれば死体が転がる。
それが敵味方であってもそれぞれを差別なく集めて安置し、敵側と交渉があれば遺体の受け渡しも行われる。
その時に賠償金についても話し合われるほか、捕虜があればその交換かあるいは金銭によっての取引となる。
フォルモーサスは彼等は話し合いどころか味方の兵の遺体など野ざらしで構わないというぐらいにほうほうの体で逃げて行ったが、それは彼らが誇る古代兵器が謎の一撃で粉々にされればそうなるだろう。
あの攻撃は古代兵器船で勝手に乗りつけて来たジークによるものに違いないとノーマンは考えている。
さらにノーマンを苛立たせているのは、ジークがかけた脅しによってフォルモーサスとギルドの連合軍が逃げ帰ったばかりか、ノーマンにフォルモーサスが掛けた懸賞金とギルドによるリガティアへの国際手配の取り消しを賠償代わりに申し出て来たところであろう。
彼こそリガティアを自分の手で守りたいと考えており、彼女が手配犯ならば自分の国がいつでも彼女を受けいれる事で彼女の安息地であろうとも考えていたのだ。
「おーい、王様。あんたは寝てんのか?」
ノーマンは忌々しいとジークを見返した。
ジークは王様なんて威厳も無くそこいらの若者のようにふらふらとノーマンの方へと歩いてきており、ノーマンは人の目と自分が未だに王様のままだという身の上を考えてジークに気軽な罵倒を返す事は諦めた。
「ご心配ありがとうございます。バルモア王。」
「いや、ご心配していないけどさ。で、黄色の石が手に入ったんだろ。バカだよねえ。古代兵器を動かしてここを襲わせるなんて馬鹿なことをしないでさあ、今まで通りにフォルモーサスの宮殿の奥底に隠しておけば君を誘い込んで殺す方法なんていくらでもあったのにねえ、バッカだよねえ。」
ノーマンは確かに自分の幸運も喜んでいた。
シュメラーゼルが連れて来た古代兵器は光線によって粉々になったが、そこにはめ込まれていた石は無傷でノーマンの手へと戻ることが出来たのである。
「じゃあさ、その石を嵌めに行こう。俺のお姫様が君の王城の取り扱い説明をしてくれるよ。」
ノーマンは素直に頷くしかない。
全てが終われば誰かしらが、要石と生贄の必要性という余計な事を唱え始めるやもしれないのだ。




