過去編 その④ ニルの絵
いよいよ、大詰めに入りました。
過去編も残すことあと3、4話になりました。
オルフェであったジン
そして、アリア
すべてが重なる時、現在へと続きます
では、どうぞ。
忘れられない面影
記憶だけはそこにある
でも、もう話すことはない
ただ、頭の中で笑っているだけ
思い出すのはそれぐらいだ・・。
****
我は、いっものように、ソリドゥスと剣の修行をしていた
あれから、あのメノリという学者は我達に関わることは無かった
けど、空はだんだん・・。
「雨が降るようだな・・。」
「そうみたいだ、どうする?」
「・・・今日はここで終いだ。見ろ・・アリアが来る」
向こうから走ってこっちに来る
アリアの姿があった
「オルフェ、ソリドゥス」
そこには、息を荒くしたアリアが来たのだ
「はぁはぁ、遠いわよ!!ここから王宮まで」
息を乱しながら話すその姿は、かなり急いでいるようだ
「ご苦労だな・・で、どうかしたのか?」
「お父様が・・。」
「父上がどうかしたのか?」
「宝のお披露目をするみたい。」
「・・・。」
「・・・。」
場が静寂する
我は、ついていけない
なので、とりあいず・・
「・・・なんでだ?」
「知らないわよ!!」
怒鳴るアリア
我はため息を吐く
「落ち着け」
「・・そ、そうよね」
少し、息を吸って吐きながら
落ち着いたのか
ポッリ、っと話始める
「お父様の、歴史物に関してはオルフェも毎度知っているよね?」
「まぁな・・それでどうかしたのか?」
「お披露目するって変じゃないかしら?」
「・・。」
「たしかにな。」
「今まで、そういうことすら、無かったのに何かあったのかしら」
「さぁな。」
我は、大体知っているわけではないが
あのメノリ・カルディアと何か関係あるのは恐らく間違いないだろう
そう思っているとアリアは
「・・私は、あの女を監視するわ、絶対何か起こるはず!!」
「・・お前、そんなに苛立っているのか?」
「コケにされたからね。」
ああ、あの時のことか
嫉妬で、ヒステリーに叫んだのはいいが
逆に仕返しされたことか
かなりの屈辱だっただろうな・・
アリアもその母親も
「お母様も怒りがすごいわ・・こっちまで浸透しちゃう。」
「・・・。」
それは、かなりのことだな
あんなに敗北したらそれは怒るのは当たり前か
アリアは、悲しそうな顔をして
「でも、仕方ないのよね・・お母様も悪いだから」
「・・そうか。」
「私の母親は、公爵家のことオルフェも知っているでしょ」
「・・ああ。」
「政略結婚が多いのよね・・だから、初恋も知らずにここに嫁いできたのよ・・そこで出会ったのが最初の初恋ということかしら?」
アリアは、淡々と話す
我は思い当たる人物像が浮かび上がる
「それが、我達の父親ということか?」
すると、アリアはそうね・・と頷き
「そうかもしれないわね・・お母様は、ただ愛情が欲しかっただけただ・・それだけなのよ。」
恋すらしたことない高貴な生まれなのなら
仕方ないかもしれないな
「・・そうか。」
「それに、お父様のことは仕方ないのよ。
政略結婚したのは、貴方のお母様以外全員だもの・・やりきれないわね」
「・・・。」
母上のことが少し頭の中によぎった
笑った顔が記憶にあったが
結局、最期に見えたのは死に顔ぐらいだ
アリアはハッとしたのか
「とにかく、連絡したからね・・ソリドゥス、行くわよ」
「あ・・あの」
「早く。」
「はっ、今行きます!!」
かわいそうに
アリアに逆らえなくなっているな
上下関係が激しくなっている
ポッ・・ポツ
我の頭に雫が落ちていく
「雨だ・・。」
冷たさを我は感じていた
*******
その日の夜は、我達は全員王座に集められた
もちろん、我以外の王子、王女がいる
そこにはもちろん、アリアの姿があった
「・・・。」
重い空気が我には感じた
それぞれが、牽制しあう空気
仕方がない
晩餐会とは違い、空気が重いな。
あんまり交流がないのも仕方がない
「兄上」
ヒソヒソ声で、オルフェに語りかけてくる少年
今日は、棒付き飴を舐めてはいないようだ
礼服を着て、堅苦しそうな顔をしている
「・・クロスか」
ニコリっと笑う姿はやはり好感は持てるが
はっきりいえば、胡散臭い。
「今日は父上が、何かの宝を自慢するそう。」
「・・自慢?」
「うん、詳しくは知らないけど。兄さんは知っている?」
「さぁな。」
「楽しみだよ。父上はどんな宝を見せてくれるだろう」
そう笑顔のままクロスはピリピリとした空気の中に入り込む
我はただ前を向いていた
そしてやがて王座には父上が来たのだ
となりには、妃であるメノリを従えて
同時に、殺気が来る
どうやら、アリアの母親からのようだ
我は深いため息を人知れずにする
「皆の者、よく来てくれた。今回、お前たちを
集めたのは、この宝を見せたかったのだ」
そういって王の間に運ばれてきたのは
見たこともない絵だった
それは、不思議な絵
「これは・・。」
「これは最近、発掘された”ニルの宝”と言われるものだ」
「ニル?あの女神の?」
我は思わず聞き返した
「そうだ。この姿は女神のニルが描いた絵だとも言われる」
俺は、その絵を見つめていると不思議な感覚に陥いった
まるで、絵が生きているような・・。
ゾッとする気持ちが湧いてくるのだ
他の者は何を考えているのかわからないが
嫌にその絵に注目を浴びている
「・・・。」
我だけはその絵が恐ろしく感じていた
その絵のお披露目が終わり
我は、帰っている途中に
「ねぇ、オルフェ」
アリアが我を呼び止めた
「なんだ?」
「あれだけじゃないみたいよ、お父様の骨董品は」
「え・・。」
我は思わず目をまるくした
あれだけじゃない・・?
「ふふっ。後でお父様の書斎に一緒に行かない?」
「・・・やめとけ、ヘタにしたら父上から
雷が落ちるぞ・・。」
我が呆れているとアリアは笑を浮かべて
「あら、普通の方法で行けば簡単よ」
「・・普通の方法?」
すると、向こうからアリアを呼ぶ声がする
「あ、ごめん。後で話すわ。またね」
そういってアリアが去っていく姿を見届けた
その時、深く聞けば良かったとあの時思ったのだ
そうすれば、事件など起こらずに済んだ
そして、変わることなどなかったはず
今となれば・・それがよかったのか分かりはしない
そして訪れたのだ
すべての始まりの事件
そして、忘れもしない事件へと発展したのだった・・。
ニルの絵
それは、本編でも影響がある絵です。
今回は過去編が大きく出ましたね
そろそろ、現在へと戻る予定です。
あ、ちなみにお昼にももう一話更新予定なので
楽しみにしていてください。




