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氷華
天井の一部が崩れ落ちた、小さな洞窟。
外界から切り離されているにもかかわらず、そこだけが空と繋がっていた。
洞窟の奥には、ひっそりと泉が横たわる。
水は驚くほど澄みきり、揺らぐたびに天の色をそのまま映し返していた。
その水面には、蕾が揺れていた。
細い茎を水中に沈めたまま、まだ開くことのない花だった。
雨に打たれ、水面は小さく波立つ。
煽られるように、蕾も震える。
風に吹かれ、大きく揺れる。
葉が、一枚落ちた。
魚に弾かれ、重みに耐えかねて首を垂れる。
茎が、かすかに曲がった。
それでも、折れはしなかった。
やがて、天井の裂け目から、そっと陽が差し込む。
降りてくる光に応えるように、伏していた蕾がゆっくりと空を見上げた。
閉じていた花弁の先が、かすかに緩む。
ひとひら、またひとひらと、内側から押し開かれていく。
光は花の内へと差し込み、透けるような花弁を淡く染め上げる。
それは──氷のように凛とした、一輪の華だった。




