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陽に咲く氷華  作者: 無名の記録者
プロローグ
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1/52

氷華

 天井の一部が崩れ落ちた、小さな洞窟。

 外界から切り離されているにもかかわらず、そこだけが空と繋がっていた。


 洞窟の奥には、ひっそりと泉が横たわる。

 水は驚くほど澄みきり、揺らぐたびに天の色をそのまま映し返していた。


 その水面には、蕾が揺れていた。

 細い茎を水中に沈めたまま、まだ開くことのない花だった。


 雨に打たれ、水面は小さく波立つ。

 煽られるように、蕾も震える。


 風に吹かれ、大きく揺れる。

 葉が、一枚落ちた。


 魚に弾かれ、重みに耐えかねて首(こうべ)を垂れる。

 茎が、かすかに曲がった。


 それでも、折れはしなかった。


 やがて、天井の裂け目から、そっと陽が差し込む。

 降りてくる光に応えるように、伏していた蕾がゆっくりと空を見上げた。


 閉じていた花弁の先が、かすかに緩む。

 ひとひら、またひとひらと、内側から押し開かれていく。


 光は花の内へと差し込み、透けるような花弁を淡く染め上げる。


 それは──氷のように凛とした、一輪の華だった。

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