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あるロボットの話  作者: 織子
「ロボット」の話
1/3

「ロボット」の話①


私は世界初、人間と同じように成長する人工知能が組み込まれたロボットです。


人間と同じように笑い、泣き、怒るなどの感情を持っています。


人間と同じように食事をし、運動し、そして眠ります。


人間と同じがコンセプトなので教えてもらわなければ何もできません。


パーソナルコンピュータのように人間の役にたてないことを悩んだ(ロボットですが悩むのです)こともありますが、私を作って下さった三尾博士は私がただ毎日心も体も健やかに大きくなることが、何にも代え難いと、そうおっしゃってくれました。


ただ成長スピードはとてもゆっくりです。どうやら私は人間の十分の一程の速度で成長をしているようです。(ここは人間とは違うところですね)




私の現在の知能は約10歳なので、作られてから

だいたい100年は経っています。

なので、三尾博士はとっくに亡くなられ、三尾博士の研究(という名の私の観察)を受け継いだ三尾博士の娘さんも亡くなられて久しいです。

今現在私の研究をしているのは三尾博士のお孫さんです。




私の研究は代々三尾家に受け継がれています。




研究者は人間と同じく学校に通う私の保護者も兼ねています。

なので研究者とその配偶者のことをお父さん、お母さんと呼んでいます。

どのお父さん、お母さんも私を本当の子どもと分け隔てなく育ててくれています。

本当にありがたいことですね。


そうそう、私の名前はアイです。



**

私の1日は朝7時に鳴る目覚まし時計の音で始まります。

たまに眠くて二度寝もしてしまいますが、そんなときはお母さんが丁度10分後に起こしてくれるので遅刻の心配はありません。

リビングダイニングの扉を開けるとお母さんが「おはよう」とギュッと抱きしめてくれます。


お母さんは(もちろんお父さんも)とても暖かいです。

これは私の体が冷たいから相対的に暖かいと感じます。


しかし完全に冷たい訳ではありません。パーソナルコンピュータなどが起動中に発するものと同じ熱を私も発しています。



この熱を表皮全体から放熱しています。 

これが私の体温です。



ギュッと抱きしめられた後は朝ごはんです。

ここでお父さんが起きてきます。

家族そろって「いただきます」をします。


今日の朝ごはんはトースト、目玉焼きとサラダです。

これを今日の予定や昨夜見た夢の話などをしながらゆっくりと食べます。(ロボットだって夢を見るのです。)




**

朝ごはんを食べ終えた後は身支度をして、いよいよ登校です。

私は家から5分ほど歩いたところにある小学校に通っています。

ここの学校には研究協力を頼んでいて、私の知能が一定年齢に達したと判断されたら、次の学年に進級できるようにしてもらっています。


昨年度末に進級の許可が降りたので、今年度から私は5年生です。

登校途中の道に咲いている桜の花が満開です。




今年もとてもいい年になりそうだなと思いました。




新学期最初にすることは自己紹介です。

今年は進級ができたので去年とクラスメイトは変わらないのですが、いつもはここで初めましての挨拶をします。

この学校に入ってくる人は、みんな私がロボットであることを知っていますが、とても親切にしてくれます。


人間は自分とは違うものを避ける傾向があるといいます。

ですが、私は仲間外れになんてなったことはありません。 とてもありがたいことですね。




授業もみんなと一緒のものを受けます。

ただ私はとても理解が遅いので、何回も同じことを聞かないと理解はできません。

なので同じ学年に何回も留年します。

技術の限界だとお父さんは言います。


このことについても悩みました。

でも悩んでも私の理解速度が上がる訳ではないのです。

今は仕方がないことなのだと思っています。  

少し寂しいですが。




同じように私はみんなとは同じ速さで走ることができません。

みんなより遠くまでボールを投げることもできません。

技術の限界です。


今日も体育の時間でボール投げをしましたがやっぱり遠くまで投げられません。

いつもならちょっと悲しい気持ちでボールを取りに行くのですが、今日は一味違いました。

なんとクラスメイトがよく飛ぶ投げ方を教えてくれました。

そのおかげでちょっと記録が伸びました。



やっぱり今年はいい年になりそうです。



**

学校が終わると校門の前にお父さんの車が止まっていました。

今日は検査の日です。私は体に不具合がないか年に1回私の生まれた研究所で検査を受けています。

ついでに私の成長にあったボディにも交換しているそうです。よく分かりませんが。

お父さんの職場もここです。


いつものように「こんにちは」と言ってドアを開けて3階の一番奥の部屋に入ります。

そこにはいつも機械整備士のおじさんが待っています。

そのおじさんに、

「調子の悪いところはありませんか?」

「変わったことはありませんか?」

と聞かれるので答えます。


私は本物の病院にいったことはありませんが、きっとお医者さんというものはこんな人なのだと思います。


質問が終わるといよいよ精密検査です。

ここで私のすることはありません。

アイマスクをして、ただベッドに横になるだけです。

そのうち腕に小さな衝撃を感じると、段々と意識がなくなります。


眠るとは違う意識のなくなりかたですが、

パーソナルコンピュータでいうシャットダウンと

同じなのです。ゆっくりと電源が切れるのです。





そのうち目が覚めます。本日も異常なしです。

検査が終わるといつもお父さんは「検査を頑張ったご褒美」と言ってショッピングモールに連れて行ってくれます。

そこでいつも欲しいものを一つ買ってもらいます。

雑貨屋さんでたくさん迷った結果、今日は新しい

ペンケースを買ってもらうことにしました。



雑貨屋から出たところで綺麗なお姉さんとすれ違いました。

私と同じ水色のワンピースを着ています。

膝下までの丈で白い襟が付いているだけのシンプルなワンピースでした。 

歩くたびに裾がひらひらと踊る素敵なワンピースでした。


そっと自分の着ているワンピースを摘まみます。

10年ほど前に買ってもらった子ども用のワンピースです。


別にこの服が気に入らない訳ではないのです。

でも、人間の女の子ならば10年経てばあのような素敵な洋服を着ることができるのです。


私はいつになったら着ることができるのでしょうか。




**

家に帰ってただいまを言うと、お父さんの娘さんの

シノちゃんが出迎えてくれました。

いつもは遠くの学校に通うために一人暮らしをしていて、1ヶ月に一度ほど帰ってきます。


シノちゃんは今年で大学2年生です。ロボット工学を勉強しています。


そう、シノちゃんも私のお母さんになりたいと勉強を頑張ってくれています。


「本当にそれでいいのですか?」

2年前、私はロボット工学科を受験すると言った高校3年生のシノちゃんに聞きました。


人間の可能性は無限です。

少しは自由があるといっても、所詮プログラムと

鉄で出来ているロボットである私とは違います。

だから父親や祖母や曽祖父がロボットの研究をしていたからという理由で、自分までロボットの研究の道に進む必要はないのです。


そう考える私に、シノちゃんは屈んで、私の目を見ながら答えてくれました。

「それがいいの。だってずっとアイちゃんと一緒に居たいから。」


いつかも同じような言葉を聞きました。

「僕決めたんだ。アイの父さんになるって。」


「アイちゃん大好きよ。私ね、アイちゃんが大きくなるお手伝いをしたいのだけど、どうかな?」


「アイ、大事な大事な我が娘。パパはいつまでもお前の幸せを祈っているよ。」


その言葉を思い出すと今でも胸がキュッとなって温かくなります。

プログラムと鉄の塊である私を大切に思ってくれる人がいる。

このキュッとなる温かい気持ちがきっと「幸せ」なのでしょう。

だから私はずっと幸せです。 


(ツキンと指すような冷たい痛みは無視すること。)

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