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刻の刻印  作者: 舞原倫音
刻の刻印:第一部
20/24

そして…。

「――…れ? リィフィンは?」


「…あぁ。さっき梨留の方に行ったわよ?」


「ぅあ…。…行き違ったか…」


 瀬識に割り当てられた部屋のドアを、問答無用で美夜は開いて部屋の中へと押し入った。


 そこにいたのは、椅子に腰掛け顔に手を付き、手元に置いた紅茶を眺めていた瀬識であった。


 その様子から物思いに耽っていたのだろうと安易に想像がつく。


 まぁそれも仕方の無いことだ。


 あれから時は過ぎさって既に今日、終業式を終えていた。


 ――…あのあと、光と共にリィフィンの手の感触は消え失せて、居たはずの場所にも姿は見えないようだった。


 そして数日間にわたり、リィフィンは姿を眩ましたがその事についてはリィフィンは口を閉ざしてしまい何もきけずじまいであった。


 もっとも彼の居なかった数日間、それどころでは無かったという事実もあるのだが…。


「…ね、そういえば大丈夫?」


 隣にある椅子に腰掛けて、ふと美夜が言葉を掛ける。


「えぇ…、まぁ。必要最低限の遵守項目は一通り記憶してあるわ。」


「じゃなくて…」


「あぁ能力?さすがにこればかりはね…。


 でも、なんとかしてみせるから、心配はいらないわ。」


「…。」


 ──…ゴガシュッ!


 自分の放った一声のあと、景気のよい音がして、瀬識は痛んだ箇所に手をあてた。


「――…っ、ナ…」


「…ったくもう、あたしは体調を聞いてんの!


 あんたね、わかってやってるんでしょ!?」


 ――…そう実は、リィフィンが消えた数日間。


 発熱、目眩、嘔吐感等、度合いの違いは有るものの、対象外だった筈の男性陣をも含め、全員寝込んでしまっていたのだ。


 元々の体力的な問題からか比較的男性陣は回復が早く女性陣は長引いていた。


 中でも一番酷く体調を崩したのは瀬識であった。


 なにせ昏睡に近い状態で、意識を取り戻したのは昨日である。


 わずかに有った準備期間は、瞬く間に過ぎさって、今日終業式を終えていた…


 …何が起こるかわからない場所へ行くのだからと出発をわざわざのばさせて、


 休養をさせた身としては、拳の一撃位入れたくなるもの。


 …という言い分からの一撃である。


「――…っもう。病み上がりな人間に何するのよ…」


「んじゃ病人らしくしといてよ?!」


 目を細め、じと目さながらにずずいっと指で瀬識の顔を指指すと、


「──……っ


 ――…あ~…。あんたやっぱり変わってる…」


 美夜から思わず笑みがこぼれた。


 つられて瀬識も笑い出す。


「それはお互い様でしょう? …あなたの方が風変わりだし。」


「いや、あたしいたって普通だし…」


「嘘おっしゃい!


 あなたが普通なら私は優等生になっちゃうわ。」


「なにそれひど~」


「事実でしょう?」


 ――…ぷっ。


 言ったそばから微かに漏れる含んだ笑い。


 だがその笑みも、決して長くは続かなかった。


「…美夜?」


 突然笑顔の消えた彼女に瀬識は問いかける。


「…」


「ちょっと?どうしたの?」



「…いやだって、笑ってる場合なんかじゃないじゃん?」


 怪訝な顔をしていると、美夜が微かに呟いた。


「──…で? 実際どうなのよ?」


「もちろん、平気よ?」


 探るような射る目で問う美夜に、瀬識は穏やかに微笑んだ。


「本当? あんまり良くないってきいたけど?」


「…誰に聞いたのよ。


 本人が言ってるんだから大丈夫なのよ。


 それに弱音なんか吐ける立場じゃないもの。過去行きを願ったのは私自身よ?


 そんな事で弱音を言ってちゃ、揩にも神流にも顔向けできないわ。」


「…そ。


 まぁ、瀬識がそーいうならいいんだけどさ。


 ……無茶はしないでね?」


「ぇぇ。」


「じゃ、あたしはリィフィンに用があるから。


 ──…おやすみ。また明日──…」


「えぇ。オヤスミなさい。」


 席を立ち、ひらひらと手を振りながら、美夜は部屋から出ていった。



     *  *  *  *  *  *



 時を同じく。


 静まり返った闇の中、ドアを叩く音が響いた。


 ──…返事はない。


 もうとっくに寝ちまったか? と、誰に言うわけでもなく呟くと、「起きてんだろ?」と彼は部屋のドアを開いた。


 踏み入った部屋は薄暗くはあるものの、一筋の光が部屋に存在していた。


 必然的に、彼は視線をそちらへ送る。


(──…やっぱりな。)


 寝てるわけが無いとタカをくくっていた。


 その部屋には、窓からさしこむ月明かりが部屋を静かに照らしていた。


 それは彼が窓を開け、外を眺めていたゆえのもの。


 椅子に腰掛け部屋付けのテーブルにひじをつき、彼は空を眺めていた。


「…目、悪くなるぜ?」


 ドア横に設置されてるボタンをパチンと押して、揩は部屋に灯りを灯す。


「──…なにか?」


 明るくなった部屋の中、応えたのは神流であった。


「あぁ、ちょっとな──…」


 静かにそう答えると、揩は静かに扉を閉めた。


 こうして──…


 思い思いの夜が静かに更けて、そして翌日──…


「「「ヴィン幻輝ゴーラっ!!!」」」


 過去の遺物を捜す為…


 過去への扉が開かれて、刻の狂った歯車が今、静かに回り始めていた…。


             ──刻の刻印 第一部-記憶- 完──

そして…。:web初出は多分…2004年7月24日


HPに上げてあった本編はここまでとなります。

当時かいていた後書きをのせるのはちょっと…という判断から、後日後書きとキャラ紹介を執筆して掲載、その後、旧後書きは活動報告へコピペ掲載しようかな…と思っています。

また、1部と2部以降ではジャンル的な問題もあるので、キャラ紹介等掲載後には一応の完結扱いにさせて頂こうと思います。

最期まで閲覧頂いて、ありがとうございました。

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