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主人の性格悪すぎ
当然だが、寮から学舎へは結構近くにある。ただ、領主邸は更に近くだ。客員として来た学者が何かを要求しやすいように、非常時にすぐに避難できるようにするために2重の配慮をしているらしい。もっとも、その2つが必要になったことはまだないし、どちらかと言えばお嬢様が簡単に通える様にするためと考えた方が正しいと思う。最初の時は馬車で通っていたため、その必要性もあまりなさそうではありけれど。少なくとも、そのおかげで僕らはサボることはあれど、講義に遅刻することは一度もなかった。
「個人的には机上の空論よりももっと実用的なことが学びたいんだがな」
彼はここに対する不満を言うとき、常にそれを口にする。現に、彼は学舎で学んだ中で興味を示したのは家畜・野菜の育成論や人体に影響のある野草等だ。中でも申し訳程度に行われている、過去にあった戦争の顛末などは教師に直接聞きに行くことがあるほどだ。だが、ここはどちらかと言えば、より錬金術に重きを置いているためそこまで学べる機会も、資料も少ない。免罪符にはならないが、それが気分屋の彼を遊ばせるに至る理由にはなっていた。
そんな中、今日は彼の言う『机上の空論』の講義ばかり。昨日はそこまで遊べなかった彼は消化不良の恐れもある。要するに、今日もサボるだろうなと僕は思っていた。だが最初の講義が始まる直前、彼でも講義に受けざるえない事態になった。
朝――。既に空腹になり始めた腹に不満を覚えつつ、僕と彼はいつもどおり一番後ろの席を陣取った。
「腹減ったな……」
「言うだけ虚しくなるから止めよう」
その時には既に僕らは机に突っ伏していた。空腹からではなく、寝るつもりだからだ。
そんな感じで、いかにもやる気のなさげな気配を出していたら、「あの」と僕らに話しかける声が聞こえた。言うまでもない。お嬢様だ。僕はすぐに顔を上げてる。
「なんでしょうか」
「……」
彼は机に突っ伏しながらも目線だけを彼女へ向けていた。その様子に気圧されてか、視線を下に下げながらも彼女は言葉を繋ぐ。
「よろしければ……私と一緒に前列に行きませんか?」
意外だった。普通、あれだけ黙りこくっていたのに次の日に話すとは思えなかったから。その上で一緒に講義を受けましょうなんて尚更だ。僕たち――というよりを公正したいのだとしたら、その心意気に関心すら覚えた。
「……」
だが、答えは無言だ。拒絶はしないものの反応もしない。ある意味一番ひどいと思う。顔と実力でモテる男はやはり違うなとこちらにも感心した。




