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G・F ~ゴーストフレンド~  作者: 沙φ亜竜
第4章 水の瞳(ほし)へ愛を込めて
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「あのね、私、幼稚園くらいまではこの町にいたんだけど、引っ越して遠くの町に行ったんだ。でね、最近になってこの町に戻ってきたの。それで、イトコの翔くんに連絡を取ってみたら、ちょっと相談があるって言われてね。だからここ最近、何回かふたりで会って話してたのよ」


 辺りはすっかり真っ暗になっている。

 僕たちは道の端に寄り、街灯の下で清美さんの話を聞いていた。

 当然そばには詩織ちゃんもいて、姿を消して僕たちの会話にじっと耳を傾けている。


「相談……ですか……」

「うん。なんか、瞳さんのことを意識しちゃって、恥ずかしくてまともに喋れないって言うのぉ~。可愛いよねぇ~♪」


 けらけらと笑う清美さん。

 ……そっか、姉ちゃんの言ってたことで、ほぼ合っていたってわけか……。


「でもまぁ、ふたりっきりで会ってたのは、マズかったかな。瞳さんに心配かけさせちゃったわねぇ♪」


 と言いつつも、楽しんでいるような口調。


「そうですね。水沢さん、どんどん悪いほうへと考えちゃうみたいで……」

「あはは♪ でも翔くんって人気あるからねぇ♪ 瞳さんも頑張らないと、他の人に取られちゃうゾ、な~んて言っちゃおうかな♪」


 ――やっぱり、完全に楽しんでるな、この人……。


「もしくは、私が取っちゃうゾ、とか♪」

「え゛?」

「冗談だってば! あはは♪ 私、彼氏いるしぃ~♪」


 むぅ……。僕まで、からかわれてしまった……。


「でもでも~、ほんと、おかしぃ~♪」


 そしてまた笑い始める。

 ほんと、明るくてよく喋る人だなぁ、清美さんって。


「あ……ところで、さっきなにか買ってたような……。あれって……」

「ああ~~、あれね~! あれは……」


 と言いかけたその瞬間、背後からふたつの人影が現れた。


「あれ……? 夕時……?」


 そう、現れたのは夕時と……もうひとりは水沢さんだった。


「あ……あれ? どうして???」

「こんばんは」


 困惑する僕をよそに、水沢さんは慌てた様子もなくペコリとお辞儀をする。

 夕時のほうに目をやると、ニヤニヤしながら口を開いた。


「話はすべて聞いたぞ。今日は水沢さんとふたりでお前らのあとをずっとつけて、様子をうかがってたのさ」

「えええっ!?」

「お前が警官に見つかって大慌てで逃げる様子もバッチリ見てたぜ! ね、水沢さん」

「あ……はい」


 う~~、夕時の奴め~~。

 用事があるとか言っておいて、また僕に内緒でそういうことを……。

 まぁ、そういう性格だからな、コイツは。今さらどうこう言っても、仕方がないか……。


「ふふっ。あなたが瞳さんね。初めまして! 翔くんから、よく話は聞いてるわ! ほんと、仲よしなのよね♪」

「ど……どうも、初めまして」


 清美さんの勢いに若干の戸惑いは見せたものの、水沢さんは照れ笑いを浮かべながら答える。


「ああ~~っ! でも、さっきの話も聞かれちゃったのね! ちぇっ! 私が取っちゃうゾ、って、からかってあげたかったのにぃ~~!」


 ははは……。やっぱりこういう人なんだな、清美さん……。

 冗談で言っているだけのはずだけど、水沢さんは不安そうな表情を崩せないまま。

 なんだか心なしか冷たい風が通り過ぎる。

 初夏とはいえ、この時間になると、まだちょっと涼しかった。


「今日はもう遅いし、明日、翔くんも呼んで話す、ってことにしないか?」


 夕時が提案する。


「うん、おっけ☆ それじゃ、また明日ね♪ ……そうね、美島公園に十時ってことで、いいかしら?」

「はい」


 美島公園というのは、近くにある大きな噴水が特徴的な公園だ。

 敷地は広くはないけど、全体的に清潔で綺麗な印象で、とても雰囲気のいい場所なのだ。

 お金のない学生にとっては、デートするには持ってこいの場所、とも言える。


「翔くんには、私から電話しておくわね♪」

「……余計なことは言わないで下さいよ」


 楽しげな口調の清美さんに、念のためツッコミを入れておく。


「大丈夫、大丈夫☆ 私を信用しなさいって♪」


 ――いや、信用できないから言ってるんだけど……。


 ともかく電話は清美さんに任せて、今日のところは解散することになった。


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