明日世界
掲載日:2026/02/16
朝がまだ眠っている街角で
世界はそっと
僕の肩を叩いた
「おはよう」より先に聞こえたのは
昨日より少し軽い靴音
雲の隙間から落ちてきた光 は
ポケットに入れるにはあまりにも
大きすぎて破けてしまいそう
代わりにブレスレットみたいに巻くことにした
どこへ向かうのかなんて知らないまま
僕の背中を押したあいつは今日も多分笑っている
転んだ跡に草が芽を出して
風がそれを揺らして歌っている
「痛みはいつか景色になるよ」
まるで秘密を教えるみたい
踏切の向こうで
昔の僕が置いていった迷いを
拾い上げたら意外と軽くて
今の僕は簡単に解くことができた
ざざっと音が遠ざかる頃には
胸の奥で何かがほどけていく
ポケットの中で揺れる昨日と
靴紐に結んだ願いごと
どちらもまだ頼りないけれど
歩くたびに少しずつ形になる
振り返れば置き去りにした季節が
手を振り揺れて
ちゃんと僕を見送ってくれていた
信号が青に変わる瞬間
世界はまた僕を選んで
背中を押すみたいに風が吹いた
行き先はまだ知らない
それでも昨日よりずっと軽い音が鳴る




