161 3年生最後の文化祭午前の部
次の日、文化祭2日目。一般公開。
子供から老人まで人がごった返している。
僕は3年2組に陽と春斗と来ていた。
唯盛が言っていた通り、2組はかき氷屋だ。
かなり儲かってるようで、40人程、長蛇の列ができていた。15分位待って、やっとかき氷にありつけた。1つ200円というのも人気の秘密だ。
僕はイチゴのかき氷を急いで食べて、頭がキーンとした。
「部活動の方回ろうぜ!」
「そうだな」
「英語研究部って何をするんだろう?」
「英研から回ろう」
僕は栞を見る。
英語研究部のほかに、漫画研究部、美術部、新聞部、吹奏楽部、ダンス部、演劇部、写真部、オカルト研究部が出し物や展示を行っているようだ。
全部は見れるかわからないが見ていくことになった。
英語研究部は英語で書かれたレポートが廊下に貼ってあった。
「読める?」と陽が聞く。
「「分からない」」
僕は本当は読めるがあえて言わなかった。
(全部読めと言われたら面倒だ)
「ゴリラの愛の話だな。ドラミングが求愛行為、または糞を投げるなど愛情表現の一種と言われています」
陽は自慢げに言い出すので、僕と春斗はゆっくり聞きながら進んだ。
次は漫画研究部。中ではオタクらしい我が校の男子生徒が談笑している。
中に置かれた机にはアニメのイラストや漫画を描いた紙でいっぱいだ。腐男子が書いたであろうBLのキャラ物が多い。
パシャリ。
僕は端にあるメイド服のオリジナルキャラの女の子が可愛いので写真に収めていた。無意識のうちに待ち受けにしていた。
「そんなに気にいる写真でもあったのか?」
春斗は僕のことを窺う。
「あ、いや……」
僕はとっさにケータイをポケットにしまう。無論、パンダのお守りはポケットから出して見せている。
(僕が萌絵に反応したことがバレたらキャラ崩壊する)
パー、パラパッパッパッパッパラー! パーパッパッパッパラ、ラー!
中庭からトランペットなどの楽器が聴こえてくる。
「〝宝島〟だ」と陽。
「曲分かるのかよ。すげーな、陽」
春斗は中庭の方の窓際に寄った。
僕は男子しかいない吹部に興味を示すことはなかった。
(だが、救われたのも事実。特別に見ておくか)
「可もなく不可もなしという感じだな」
「なんでお前、偉そうなんだよ」
「さ、次々!」
僕らが次に向かったのは美術部だ。中に入ると式典のように絵が数枚飾られていた。
クレパスで描かれた水の入ったペットボトルや、石膏デッサンのミケランジェロのダビデ像、そして葉阿戸が描かれた肖像画その他諸々だ。とても精巧な作りだ。
「あ、葉阿戸さんだ」
「あぁ、可愛い。お持ち帰りしたい」
僕はよだれが垂れるのを必死で抑えた。
「たいって、葉阿戸さんが関わると変態になるよな」
「変態じゃないよ、仮に変態だとしても変態という名の紳士だよ!」
「なんで某ギャグマンガのクマが出てくるんだよ! 通報するぞ!」
「2人とも、次は新聞部だ」
「あいつら、ちゃんと部活動してるのか?」
僕らは部室まで不意打ちを備えて、やってきた。
「〝新聞部、オカルト部は合同になりました″、とさ」
そう書かれた紙がドアに貼ってあった。
横に留められた新聞は運動部のことや葉阿戸のことが取り上げられていた。平和でほんわかした1組、知的な2組、ド変態バイオレンスな3組として有名にしようとしているようだ。僕ら3組の盛られた蛮行が載せられていた。それからユーマに関する話題も記されている。そのおそらくが3組のせいにされている。
「なんで俺らだけ変な感じになってんだよ、1年と2年も風評被害受けてんじゃねえか!」
「南波の仕業か?」
「え? あいつ新聞部だったの?」
「陽は知らんのかい! あいつ2回、留年してるぞ、高校を」
「そうだな、なんか飛距離大会に出てたよな。大会でボコしてやるからな! 僕は負けないぞ」
「じゃ、ダンス部は後夜祭で踊るから見なくてもよし、演劇部はもう劇やってないな。写真部は――」
陽が言っているとたん、校内放送が流れてきた。
ピンポンパンポーン。
『12時をお知らせします。これより13時まで各クラスの出し物の休憩時間となります。なお、体育館に休憩スペースを用意しております。どうぞおくつろぎくださいませ』
ピンポンパンポーン。
モンの放送が頭に入ってくる。
「もう12時かー、そろそろ教室に戻るべ」
春斗の言葉に僕らは頷き、教室に行き着いた。
教室にて。
僕らは教室の後ろの空間に丸くなって食べることになった。
皆が食べ終わると茂丸が背中から四角いアルバムの様なものを見せつけた。
「葉阿戸の今までのコスチューム集借りてきた。写真部の烏有から」
「茂丸と烏有君、感謝!」
「皆で見ようぜ」
「いや、僕はいいや」
僕は皆のそそり立つ欲望を見たくなかった。
(葉阿戸にお願いすればコスチュームくらいしてくれそうだし)
『おい、何を惜しい事を、ムギャ』
僕はポケットにある盟津のことをすっかり忘れていた。そこで、うるさい為、尻ポケットに入れておいた。
(さてと、葉阿戸は視聴覚室にいるかな)
僕は歩いていると1人で不安そうに迷い込んでいるかのような美女が目に留まった。
(この人は確か……)
「えっと、芽亜里さん?」
「たい君。えな君ってどこにいるの?」
「2年は教室か、……生徒会かな? ですが、今休憩中なので1時になるまで体育館に行きましょうか?」
「そうよね、ごめんなさい。あの、私、すごい方向音痴で」
「良ければ案内しますよ。ちなみにえな君は2年3組です」
「まあ、ありがとう」
芽亜里は靨を見せて笑った。
僕の心はいともたやすく崩れそうだった。
(なんだ、この可愛い生き物。男子校だぞ。危ういぞ)
ぎくしゃくしながら芽亜里の斜め前を歩いた。
「高校生って若くていいわね」
「へ? あ、そうですね」
僕は彼女の一言で動悸が激しい。
「えっと、お姉さんは大学生でしたっけ」
「社会人。東京でデザイン系の会社で働いてるアラサーよ」
「東京! 僕も東京の大学に進学する予定です」
「もうちょっと大人になったら、飲み行こうね?」
「は! はい!」
僕は振り返り答えるも、芽亜里の胸に目がいってしまう。
『おい、たー君、そんなことしたら日余さんにいうからな』
「えっと、ここです」
やっとたどり着いた、体育館。見る限り人であふれかえっている。
「短い時間ですが、ありがとうございました」
「たい君、それは私のセリフよ、うふふ、ありがと! これ」
芽亜里は四角い名刺を僕に渡してきた。受け取り、走って逃げる。
「盟津君、今のは内緒だよ?」
『いいからポケットから出せ、たわけ!』
盟津の声があまりにもうるさいので僕はケータイを右手で出した。お守りをゆらゆら揺らす。盟津が無反応なので葉阿戸を見つけに行くことにした。




