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虹色の光をまとう転生少女は、神に生き様を見守られている。  作者: 三月べに


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18/28

◇18 他言無用の約束。




 どこから話そうか。

 小首を傾げて、少し頭の中で整理する。

 もちろん、いきなり前世や姫君の生まれ変わりだとか神ワンナの話をするつもりはない。これらを話すのは、あの三方と会う手段のために【カエルム】から許可をもらう時だろう。


「私が【カエルム】の存在について知ったのは、えっと……三週間ほど前ね。隠されていた本棚を見付けまして、そこでハート家の始祖が、世間では神として名を残したワンナだと知ったの」

「ほう……。つい最近だな」

「ええ。ワンナの肖像画があって、姫君とワンナの本当の話が書かれた本を読み漁って、色々と知れた。ワンナは、神なんかじゃなくて、元は人間だったのでしょう?」

「ああ、そうだ。じゃなきゃ、お前は神の子孫になる」


 確認のために質問したら、ちゃかされた。


「でも、神と語り継がれれば、本当に神となるらしいから……神の子孫というのは、あながち間違いじゃないわよね?」

「そこ、真剣な顔で考えるな」


 自分から言い出したくせに。

 まぁ、この話を掘り下げて、脱線してはいけないか。


「秘密組織【カエルム】は、イターリーの安寧を守るために動く組織だとは書き記されてはいたけど、300年は経っているし、現在はどうなのかなって疑問が湧いた。前々から、父が警備兵だと言ってイターリーに何週間も行っては、数日休みに来る仕事のスタイルが不可解だったから、実は秘密組織の人間なのかと疑ったの。その隠し本棚の辺りだけ、掃除させないから、父は間違いなく真実は知っているはず。職業を偽ってきた父に、疑心暗鬼になったわけだから、調べることにした。正直言って、秘密組織ってだけで、怪しいイメージしか湧かないし、家族想いの父の全てが嘘かもしれないとさえ思えてきて……もやもやしたから、晴らすためにもイターリーに連れて行ってもらった」

「それが……一週間前か」


 もやもや感を表現するために、げんなりした表情をした。

 そう。それが一週間前のことだ。


「ワンナの直系だから、【ギア】を覚醒していれば、【カエルム】のボスの資格を持っている。父がボスか否か、そして【カエルム】は善か悪か。探れるだけ探ろうとしたの。まぁ、一番の目的は、王城から見れる、【約束の広場】の龍だったけど」

「観光が一番の目的かよ」

「秘密組織だから、そうすぐに尻尾捕まえられるわけないってわかりきってたもの。現地だからこそ知れることは知ろうってことで、出来る限りをする予定だった。【約束の広場】だって、【カエルム】とは無関係じゃないでしょ?」


 嘘はつかない。省いてはいるけど、正直に話す。

「まぁ、無関係ではないな」と、アルトはしぶしぶ頷いた。


「現地まで行って調べるとか……行動力すげーな、お前」

「お兄さんだって……間違えた。アルトだって、隣国まで追いかけてきたじゃない。もやもやする疑問を、解決したい行動力があるのはお互い様」


 言われてみれば……と、アルトも自分の行動力の強さに気が付いて、頭を掻く。


「幸いなことに、父の部下であろう人に観光案内しているところで、【カエルム】の現ボスに会えたから、父が現ボスじゃないってわかった」

「は!?」


 ギョッとしてしまうアルト。


「う、嘘だろ? その口ぶりからして、カロスに直接紹介されたわけじゃなく」

「遭遇した。お父さんの部下であるレイチェルさんを覚えていたから、会話に入ってきたの。レイチェルさんの紹介で、お父さんが自慢していた娘だって知って驚いてたわ……」


 どんな自慢話をしていたのやら。

 苦笑を零してしまいそうになる。


「観光案内の最中に会うかよ……フツー。なんで現ボスってわかった?」

「本で何回か見た【カエルム】の紋章の指輪を嵌めてた。それなりに組織内で地位が高そうなお父さんを名前呼びだし、レイチェルさんも緊張してたわ。それに護衛らしき人が、ボス呼びしていた声が聞こえたもの」

「それだけで、現ボスだと? ……いや、間違ってはいないんだが……確かに、ボスが引き継ぐ指輪があるとは聞いている」

「アルトは直接見たことないの? あのおじいさん」

「秘密組織のボスをおじいさん呼びするなよ……。気軽に会えるような人物じゃねーからな。時折、親睦会みたいなパーティーをやるから、その際に遠目に見たことはある」


 へぇ……。

 秘密組織も、親睦会なんてやるのかぁ……。意外すぎる。


「別れた直後、レイチェルさんが尾行に気付いて、撒くためだったのか、公園広場を回って出たところで、拉致された。目を覚ましたら、縛られることなく、ソファーに寝かされていたの。犯人達が、戻ってきたから、寝たふりしてたんだけど……私の連絡魔導道具でお父さんを、私を返すって嘘ついて、別の場所に呼び出して罠にかけるってわかった。その魔導道具は壊されたし、もうお父さんを罠に誘い込む準備は済んだから、殺されかねないしなんとかお父さんに連絡しないといけないと思って、脱出することにしたの」


 ……なんだろう。

 アルトが、呆れたような眼差しを向けてくる。

 不思議になって首を傾げて見せれば。


「そんな経験をした五歳児が、淡々と語るのが……不気味だと思っただけだ」

「もう、年齢のことは、一旦忘れましょう?」


 話に集中してほしい。

 見た目はどう足掻いても、五歳児だから難しいだろうけれど。


「魔導道具の火炎銃を発砲されて、咄嗟に水の魔法で壁を作って気付いた。魔法が強すぎているって。身体も軽いし、足も早くなっていたから、もしかして【ギア】が覚醒したのかもって過ぎったけど、確認している場合じゃない。階段を降りようとしても、下にも敵がいて挟み撃ち。今度は多くの銃で発砲されたから、絶体絶命だと思った」


 ここで一度、言葉を止める。


「でも、ゴーンッて、鐘の音が響いたの。アルトも見たでしょ。虹色の光り」


 そう告げた。

 アルトは大きく目を見開いて、衝撃を受けた顔をする。


「鐘の音が鳴り響き、虹色の光りが周囲に散乱する光景。神のみわざの特殊能力……! 本当に、伝説の【ギアヴァンド】なんだな!?」


 鐘の音と虹色の光りという特徴は、【カエルム】の者なら、知っていることなのだろうか。


「ワンナと姫君が揃っていて初めて使えていた特殊能力【ギアヴァンド】……。あれは、あまりにも強すぎて危険だって理解した」


 アルトは伝説の技を見たという確信を得て興奮気味だけど、私は沈んだように静かに言う。


「どんな魔法も絶対に受け止めて防いでくれたし、階段から落ちても怪我しないように受け止めてもくれた。強力だったであろう雷の魔法だって、私を無傷で守った」

「……確かに、とんでもない雷鳴の音がしたな」

「うん。辺りは焦げてたほどの強力な一撃だったわ。こんな力が、私にあるって広まったら、家族は危険だし、狙う者に群がられる。だから……目撃した敵を、口封じのために爆破した」


 気は重いが、悔いてはいられない。


「そういうわけで、隠したいの。まだ秘密組織【カエルム】を信用していないし、知る者は少ない方がいい。だから、アルトには黙っていてほしいと頼んだ」


 秘密組織【カエルム】を信用していないから、存在を知っていることも、【ギア】と【ギアヴァンド】が覚醒したことも、身を守るためにも隠したい。その気持ちを、目を見て真っ直ぐに伝えた。

 これが、何故使えるのか、そして何故隠すのか。その疑問の答えだ。


「なるほどな……。ハート家の秘密を知ってしまって、嘘をついた父への不信感を払拭するためにも調べてイターリーに来たら、命の危機で【ギア】と【ギアヴァンド】が覚醒したってわけか……。わかった。これで、他言無用の約束は、誇りにかけて果たす」


 幸い、アルトは追及はしないでくれた。

 【ギア】はともかく、【ギアヴァンド】はどうして覚醒したのか。

 【ギアヴァンド】が使えたワンナの末裔だから。その一言でも、片付けられると思ってくれたのかもしれない。

 他にはないだろう。まさか、ワンナと一緒に【ギアヴァンド】を発動させた姫君の生まれ変わりで、神ワンナがわざわざ子孫に転生させたなんて……。

 ここまでは、伏せては省略もしたし、ありのままに真実を語った。でも、これ以上は、誤魔化したり、嘘をつく必要もある。


「よろしくお願いします」


 ペコッと、頭を下げておく。お願いの際は、ちゃんと敬語で伝えるべきだ。


「それで、この返答次第で、何か言いたいって言ってたけど……それは?」

「ああ……そうだな」


 顎を摘まんで、真剣に考える素振りをするアルト。

 じっと、私を見てくる。見定めるような感じだ。

 じっくり、と考えているので、私は待つ。


「エコー」

「うん?」


 愛称呼びに、首を傾げる。

 でも、そういえば、最初はエコーと名乗ったと思い出す。

 ……まぁ、いいっか。

 この前、取り戻した記憶の中でもあったけれど、現在の身分は王族の姫ではない。

 不快でなければ、誰に愛称を呼ばれても、別に。



「オレは【カエルム】の7代目ボスになってほしい」



 アルトの告げた言葉に、目を見開く。

 見つめ返して、私は左右の後ろを、そろーっと振り返った。


「いや、お前に言ってんだよ。他にはいないだろ、おい」


 ほんとうだ。ほかにだれもいない。



 

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2024/07/20

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