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我らが強き連邦を~対異界侵攻戦役~  作者: 連邦軍戦史記録課█████中将
第二章 水星作戦
24/33

Ep 2-5 エグラント海峡沖海戦

異世界仮定時間 5月28日 14時15分

エグラント海峡南部の海面を、24本のKh-35M対艦ミサイルが波を立てて滑空する

高度10m以下をシースキミングで突っ切り、そのシーカーは目標を捉えて離さない


「弾着まで5…4…3…弾着!今!」


「全弾命中!敵艦の反応減少中!」


「全艦最大戦速!左先梯形陣に陣形変更!一気に距離を詰めて砲戦に持ち込む!主砲自由撃ち方!砲術長!撃ち漏らすなよ!」


「アイサー!一隻たりとも逃しません!」


艦隊速力30kt、左先梯形陣で700隻の艦隊へ突っ込んでいく

砲戦火力はAK-130連装砲が3基6門にAK-190、100mm単装砲が1門

10km未満となればCIWSの有効射程ともなる

FCSに統制された主砲は距離15kmで移動目標に対し命中率80%、海賊退治では19km先の小型ボートにも当てた事がある

100m越えの目標に対してなら外れる事もないだろう


「距離12km!間も無く砲戦距離です!」


「距離10kmまで詰めた後に同航戦に持ち込み砲撃を開始する」


「アイサー、艦長」


━━━━━━━━━━━━━━┫


唐突だった

この大船団の上を爆音響かせながら飛ぶ飛竜らしき物に対空魔導をばら撒いて、退かせたと思っていたその直後

艦隊の先陣を切っていたカニアブル(大型戦列艦)以下20余隻が爆沈したのだ

当然俺達は浮き足立って、混乱に包まれた


「クソったれ…なんだってんだ!俺たちゃ魔族を殺しに行くだけだったろ!クソッ!」


「船長!どうするんですか!何も出来ずに死ぬのはイヤですよ!」


「わかってる…わかってるさ!クソ!最速で敵に突っ込むぞ!旗を上げろ!」


「アイサー!船長!」


敵が何か知らないが、距離を詰めてバリスタで対船魔導をぶち込めば沈む筈

しかし問題はバリスタの射程だ

なまじ大型なだけあって、飛ばすだけなら4kmだが、当てるとなると2kmまで近づかないとである


「マストのヤツ!敵は見えるか!」


「お待ちを!」


索敵は基本飛竜が受け持つが、最近はいくら飛竜を飛ばそうが帰ってこないため、個々のマストに居る見張り員に一任されている


「見えました!1時の方向 !ギリギリ見えてるので相当向こうです!」


「よし!さっさとバリスタの射程に引き摺り込むぞ!」


「相手は3隻です!この数で引き潰しましょう!」


「よぉし!最大速度で突っ込めぇ!」


20余隻を沈めたところで、3隻では700隻を超える大艦隊は止められない

...はず、であった


━━━━━━━━━━━━━━━┫


「全艦、右舷砲雷撃戦はじめ」


「主砲撃ち方。各砲塔自由測距射撃」


「砲術長、撃ち方始め」


「撃ち方始め」


『てェッ!』


駆逐艦2にフリゲート1の備える艦砲が、真昼間の海峡上に砲煙と爆音を轟かせる

130mmの高性能爆薬をたっぷりと詰めた榴弾は木製の船体をいとも容易く貫き、船内で爆発して大惨事を引き起こす

高温高圧に起因する火災はその手を瞬く間に伸ばし、大型艦は数十mのキャンプファイヤーと化す


「砲弾は持ちそうか?」


「大型艦1隻当たり20発ですので、指数関数的に減衰するとしても200隻撃沈で打ち止めです」


「....作戦を修正、距離8kmを維持し同航戦に持ち込む。できる限り数を減らし、後続の対艦ミサイル部隊の負担を減らす。残弾20%にて海域を全速で離脱し母港へ帰還する」


「現在89隻を撃沈、砲弾消費は予想より23%増」


「対艦ミサイル部隊は?」


「第688地対艦ミサイル連隊隷下のASM102基が準備を整えていますが、後20分はかかるとの事」


「20分を稼げば、多少は撃ち減らせるか」


「はい、それと5分後に第2071、1977ロケット砲兵大隊が保有するBM-30の2個中隊24両も9M531(多用途クラスター弾)を用いて対艦攻撃を行うとの事」


「9M531とは、木造船相手にはオーバーパワーだな」


最大射程90km、おおよそ120mmのRHA(均質圧延鋼装甲)を貫通する徹甲クラスター弾を636発封入した300mmロケット弾が288発、つまり子弾約183000発が敵艦隊上空で炸裂する

しかし状況が好転するかと思われたその時、事態は急変する


「艦長!SS統合参謀本部より緊急電です!」


「何事だ」


「エグラント海峡北部より敵艦隊300が南下中!第1艦隊残存艦は民間ならびに非武装船舶を護衛し緊急出航!各任務遂行中の小艦隊はグリッドDZ29で本艦隊へ合流せよと!」


「戦闘を放棄し撤退しろと言うことか!それどころか完成したばかりの港まで見捨てろと?!」


「おそらく、そう言う事かと」


「艦隊参謀の腰抜け共め…!」


「どうしますか艦長!このままでは…!」


艦長は歯軋りしつつ、必死に思考を巡らせていた

20秒程の後、ダンッと机を叩いて声を上げる


「我が艦隊はこれより母港に帰港し補給を行い、然る後に港の前面に展開し防衛線を築く。方位3-4-9へ向け第5戦速」


「命令に背いてでも港を守るおつもりですね?」


「あの港には上陸の為の大量の武器弾薬や設備が備蓄されている。あれを失えば侵攻は最悪来年まで延期になる」


「…やっぱり艦長は戦術指揮官の器じゃないですね。早く艦隊司令になられては?」


「47で大佐だ、なんにもなけりゃこのまま退役だよ」


━━━━━━━━━━━━━━━┫

同時刻 SS第1機甲旅団戦闘団 第1機甲旅団

第1戦車連隊


「各車速度を落とすな、できる限り速く進め」


「第7大隊に整備不十分を原因とする落伍車が増加中」


「車列後方5時より航空機8機、防空軍の攻撃機です」


至急の事案につき即応出撃を果たした第1機甲旅団戦闘団は落伍する部隊を多数出しながらも最高速で海岸へ進行している

統合参謀本部は今次事案における敵の戦略目標をエグラント島への上陸と断定

保持する全戦力を持って予想される上陸地点へ向け適宜分散

海上戦力は燃料弾薬の温存を図り1度島の北西に避難

陸上並びに航空戦力のみをもってこれを撃滅する事とした...が


「現在地上軍の弾薬備蓄は多く見積もって定数の65%。これは全力戦闘19時間分でありはっきり言って足りません。燃料は82%、各方面への移動で69%まで低下します」


「防空軍は燃料弾薬共に70%を維持していますが、全力出撃12時間分。攻撃機並びに爆撃機に出撃を限定したところで燃料より先に弾薬が切れます」


「そもそも編成途中の部隊を移動した影響で指揮系統に混乱が見られ、落伍部隊も多いとの事。直球に申し上げますが、現戦力での状況打破は困難です...戦術核の使用も視野に」


「バカか、相手が核に相当する兵器を持っている可能性があるのに安易に戦略兵器など使えん」


状況打破の為に何が必要か

必死に頭を回し、これまでの将校人生の中で学んだものを掘り返す

さらなる兵器?さらなる弾薬?さらなる燃料?さらなる部隊?

違う、もっと根本的な...作戦...いや...


「戦術か...!情報が足りない、偵察機を出し続け情報収集を行う。狙うは戦術指揮官だ、可能な限り戦術指揮官の乗る船を割り出して撃沈し、敗走を狙う」


「対艦ミサイル部隊は可能な限り温存し、誘導爆弾を活用する。出撃可能な偵察機を直ぐに出せ」


「それでも敗走しなかった場合は?」


「敵を上陸地点に足止めし、残存する全重砲弾を叩き込みすり潰す」


戦力と情報に劣る連邦軍は窮地に立ち、一手一手を詰めることもままならない

正に絶対絶命、背水の陣


(水は腹の方にあるんだけどな、ははっ)


脳内に浮かぶ乾いた笑いは、虚しく響くこともなかった


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