Ep 2-3 大隊戦術群再編/緊急事案ИГ-2
異世界仮定時間 5月10日 18時34分
連邦軍SS統合参謀本部 仮設司令室
SS総司令官代理 コアトル・バイカル上級中将
SSオホートニク大隊戦術群指揮官 ジーナ・アリサ大佐
「魔族の国との交渉は成功したと」
「はい、魔族の国…予鶴国との交渉は一旦の成果は見せました」
あの後に大佐は皇魔殿下としばし談義を続け、結果として領内への基地建造や軍の駐留、領事裁判権等を含めた平等条約の草案を連邦本国へと持って帰ってきた
「やろうと思えば不平等条約を結ぶこともできたであろうに」
「それは不要な争いを生みかねません。我々連邦と予鶴国は文明人らしく平等な条約を結ぶべきかと」
「そんな事を言いながら、占領地における化石鉱物資源の採取権限はこちらが握るのだな」
「彼の国に領土的野心は少なく様で、宝の持ち腐れかと思いまして。それに多少の技術協力もするのです」
「なるほどな…大佐、君は思ったよりもいい成果を持って帰ってきてくれた。私の方から上級大将に進言して、他三方面に投入される筈だった部隊を引き抜き君の部隊に充てる。おおよそ…1個機甲旅団と砲兵旅団、後方支援の部隊も付与する」
「機甲旅団戦闘団…ですか?!確かに士官学校で旅団指揮幕僚課程は習得しましたが…」
2個戦車旅団に1個機械化歩兵連隊を合わせ戦車650両強にBMP400両余りを主軸にした機甲旅団戦闘団、十中八九大陸侵攻の主力部隊だ
「この部隊はこれから師団となる、その中枢だ。大事に扱え」
「わかりました...ただ副官として先任将校を付けて頂きたいです。なにぶん2週間前まで大隊の指揮官だったもので」
「分かっている。各連隊の指揮官から歴の長い者を選抜する」
「異例中の異例だな?あぁ、昇進で思い出した。君は旅団戦闘団指揮官になる関係でそのまま大佐だ」
「は...わかりました...事務仕事が多くなると言う事で?」
「嫌か?」
「...率直に言えばそうです。私は前線将校でしたので、そういうのは性にあいません」
「では大佐となっても前線に出向く気か?万一にでもキミが殺られたらどうするつもりだ」
「わたしは叩き上げの前線将校です。2000年は周回遅れの蛮族共に殺されはしません」
「...まぁ、いいだろう。戦術の研究もあるし、前線に出ても構わん。だが死ぬなよ」
そう言って座っている椅子をぐるりと回し、こちらに背を向ける
「お心遣い、感謝します。しかしそれは無用でしょう」
「我々連邦軍は、勝ちますから」
━━━━━━━━━━━━━━━┫
同日 同所 尋問室 21時47分
「さて、我々もようやく周辺の絶対安全が確保出来たので、貴女と政治的な話をする運びとなった」
「トリィシア・リーフル・ネクルト・カルクレイン...カルクレイン神聖国の皇女様とな」
「嫌味ったらしい言い方でしてね...」
「そいつぁすまないが、尋問官ってのはこういう仕事なんでね?まぁ本題に入ろう、我々は10日程前の取引に伴い、情報の交換を行った。我々はこれを元に各種計画を立案するのは、言った通りだ」
「わかっております。貴方達の目的を考えるに次は...」
「大陸侵攻...SS統合参謀本部令0009号、通称大陸打通作戦だ」
「...だと思いました。それで、私に何をしろと仰るつもりで?」
「貴女には各地に置ける民衆解放、その導き手となって欲しい」
「と、言いますと」
「我らはこれから各国に位置する神縛の鎖、その奪還を主目的とするんだ。その道中で多くの集落を解放するだろう。君の話によれば民は重税に苦しみ、飢えの末に死に至る者もいるとな」
「少なくとも、カルクレインの北西南部においてはそうです。貴族と聖職者が免税を含めた特権を濫用し、民を不当に扱っております。だから...」
「だから皇帝になって、民を救いたいと」
「...はい...まさか?」
「我々は占領地を新しい第三国の領地としたい、そう考えている。貴女をトップとしてだ」
「それは...なぜです?貴方達が直接統治すれば良いではないですか」
まぁ、それも最もだ
我々は数千年の歴史の末に成熟された統治のノウハウや技がある。
しかしそれではダメなのだ
我々の世界においても立憲君主制が制定されたのは1600年代、民主主義は1900年程度である
この時代の皇帝や王は神の子、それか神そのものであり、その力は神より与えられた物という考え方が一般的なのだ
そこに突如民主主義だの共産主義だのをぶち込めば、各地でフランス革命の二の舞三の舞がおこる
各地で内戦起こして誰が敵で誰が味方か分からない中味方を進めるのは愚策なのだ
「まぁ、事由は理解しました。ですが問題は1つ」
「ほぅ?なんだ?」
「私が皇帝になるには、戴冠式を行わねばなりません。しかし戴冠を行うのは前皇帝、それか他国の皇帝でなければなし得ない」
唐突に告げられた難問に対し尋問官は思考を巡らせる
そうして1分も経ったか、という時に言葉を漏らす
「皇帝...前皇帝...なるほど...」
そう言って机に拵えられた受話器を手に取り、内線に繋げる
「もしもし...私だ、帝室警護庁に取り繋ぎたい...あぁ、そうだ。それだ、準備してくれ。詳細は後々だ、切るぞ」
ガチャリと受話器をはめ直すと、尋問官は彼女の方へ向き直る
「貴女の戴冠式は、我が国の前皇帝陛下が担われるでしょう」
「貴国の...前皇帝陛下が?」
「うちだって40年くらい前は帝政でしたからね、つったって立憲君主制でしたが」
「さて、諸々の諸準備に半年以上はかかるでしょう。艦隊編成に基地建造。国家の体裁を整えて帝室に話を通して...」
「全く、これだから戦争はやりたくない」
そう言う尋問官の口元はすこし笑っているようだったと、後に彼女はそう零していた
━━━━━━━━━━━━━━━┫
異世界仮定時間 5月28日 13時05分
エグラント島東部海峡上空11500m
連邦防空軍 第761戦略偵察飛行中隊
Su-30SM3R コールサイン《ハイランド9》
中/高高度偵察用カメラとSapsan-E TGPを装備し増槽を三本搭載
自衛用にECM装置2基とK-77を4本搭載
「ハイランド9よりAWACS アナザースカイへ報告」
「こちらアナザースカイ、報告せよ」
「エグラント島東部海峡入口の南方150kmに大規模な船影郡を視認。対象予想数750、速力約10kt前後で北上中」
「高度4000まで降下し詳細を確かめる。オーバー」
「アナザースカイ了解、幸運を」
そうして通信を切り、機体を反転させ急降下する
エンジン出力を絞っているにもかかわらず、加速する機体に翼が軋む
HMDの中に映る雲の合間に海面が見え、更にエンジン出力を絞りエアブレーキを展開して速度を落とす
速度と高度を落としながら、徐々に操縦桿を引き機体を水平に戻す
「TGP IR起動、ECM出力最小。合成開口開始、データ収集に移行」
右のMFDでレーダー上に映った船影を解析に掛け、その間に先の情報から進行ルートを中央のMFDで予測
付近の友軍情報を左のMFDに表示して情報を整理する
「こちらハイランド9、付近を航行中の全友軍艦隊へ通達。グリッドGK8で大規模艦隊を発見。総数750余り。ほぼ全てが帆船であり速力11ktで北上中。最大102mから最小19mほど。予想航行ルートを戦域データリンクで表示する」
「こちらSS第1艦隊 第2水上小艦隊。我が艦隊は現在ウダロイⅡ級1隻、ゾヴレメンヌイ級1隻、ネウストラシムイ級1隻を保持し南下中。これより接近し臨検する」
「ハイランド9了解。以後の任務はハイランド2が引き継ぐ。ハイランド9 RTB」
連邦軍はこれを緊急事案ИГ-2と認定
海岸線に近い全部隊に即応待機を下令
内陸にて再編を行っていたSS 第1機甲旅団戦闘団は海岸線へ移動を開始




