金曜日前編 楽しみな事って、その準備も楽しいよね!
「う~~ん、はぁ~」
朝起きたら、体調の方はもうすっかりよくなっていた。
「あぁ~、なんか無性にふたりに会いた~い」
昨日は、突然ふたりと離れ離れになってしまう夢をみてしまって、だからいつにもましてふたりのことが恋しい。まぁ、その分昨日はお姉ちゃんにいっぱい甘えちゃった。
準備をしていると、インターホンがなった。
「ん? 誰だろう、は~い」
「おはよう柚、調子はどう?」
「元気になったですか? ユズキ」
ドアをあけると、ふたりがいた。
「うわ~里香、シャルちゃん、どうしたの~、なんでなんで~」
「元気そうなら、いっしょに登校しようと思ってね」
「Oh~ユズキ、いっしょに行きましょう」
「迎えにきてくれたんだ~、すっごいうれしい! すぐ準備するからまってて~」
というわけで、急いで準備をすませて家をでた。
「おまたせ」
「じゃあ、いきますか~」
「Let's go~」
一緒に登校、まず話題に上がったのは当然一昨日のこと。
「柚、一昨日は帰ってすぐに開封の義とやらをやったんだって~?」
「あっ、いや、それは~」
「まったく~」
「だ、だって~、楽しみにしてたやつが届いてたんだもん」
「だって~、じゃないの」
「い、いひゃい、いひゃい~」
両方のほっぺを引っ張られた。
「どれだけ心配したことか~」
「ごめんなひゃい~、ゆるひて~里~香~」
「リカ、そろそろゆるしてあげてください」
「まぁ、シャルちゃんがそう言うなら……って柚!?」
「えっ?」
気がつくと、ほんの少しだけ涙が。
「ご、ごめん柚。ちょっとやりすぎちゃったかな」
ここまでするつもりはなかったと、あせっているようだ。
「あっ、ちがうの里香、これはその……。なんか嬉しくて、里香とシャルちゃんが一緒にいてくれるのが」
「柚どうしたの?」
「ユズキ、なにかあったですか?」
「実は、昨日すっごく怖い夢をみたんだよ。ふたりが急に遠くに行っちゃう夢」
昨日の悪夢のことを話した。
「ふたりとも、どこにもいかないよね? ずっと一緒にいてくれるよね?」
思わずそう尋ねると、シャルちゃんはギュッっと抱きしめてくれながら、里香は頭をなでてくれながら。
「ユズキ、シャルたちはこれからもず~っと一緒です!」
「あたしが柚を独りになんて、できるわけないじゃん」
「よかった~」
そのふたりの言葉が、心の底から嬉しかった。
「ほら、あんまりのんびりしすぎると遅刻するよ」
「Oh~それはたいへんです」
そういうとふたりは、左右からそれぞれ私の手を握った。
「えっ? えっ?」
「ちょっと駆け足でいくよ!」
「ユズキ、いきましょう~」
「うん!」
ちょっとてれくさかったけど……。まっ、いいか。
「そういえば、いよいよ明日は~」
「ハイ、ふたりがシャルの家に遊びに来てくれるですね!」
「うん、すっごい楽しみだよ~」
「きっかけは柚が、GODIVAのチョコっていったことだったよね」
「あの時はおどろいたよ~、ほんの冗談のつもりだったから~」
「ふたりがあそびにくるってマムに話したら、『せっかくだから泊まってもらえば』っていってました~」
「ありがたいだけど、迷惑じゃない?」
「ふたりなら大歓迎で~す」
「じゃあ、折角だから、そうさせてもらおうかな」
「あっ、じゃあさ、ちょうどふたりに似合いそうなパジャマあるんだけど~」
「却下!」
「ちょっ、大丈夫だよ~、かわいいパジャマだから、おそろにしたら楽しいかな~と思ってさ」
「シャルはいいと思うですよリカ、楽しそうです~」
「う~ん、まぁ、それなら~、どんなやつなの柚?」
「それは、当日までのお楽しみ」
「なんかのアニメネタだよね」
「おお~、さすが里香さん、よくおわかりで。あこがれてたんだよ~三人でおそろいのパジャマですごすの」
そうこうしてるうちに、学校が見えてきた。
「じゃあ、話の続きは学校でするか~」
「そうだね」
「ハイ」
教室に向かっていたら、職員室の前で優子お姉ちゃんを見かけた。
「あっ、優子お姉ちゃん!」
「あらっ、相原さん、体調の方はすっかり大丈夫みたいね、よかったわ」
「うん、昨日お見舞いに来てくれたおかげだよ~、ほんとありがとう!」
「い~え、元気になってよかったわ、あと学校では優子先生でしょ」
「あっ、そうだった~、ごめ~んお姉ちゃん」
「もう、わざとやってるでしょ~、まぁいいわ。もうすぐホームルームの時間よ、教室に急ぎなさい三人とも」
「「「は~い!」」」
その後のホームルームで、先生はみんなに週末は楽しく過ごしてほしいけど、くれぐれも体調には気をつけてほしいと言っていた。そう、みんなに。けして私だけに言ったのではない。……たぶん。
その後一時間目、二時間目と過ぎていき、現在昼休み。いつものように昼食をとりながら、今朝の話の続き。
「ディナーのリクエストはありますか?」
「えっ、リクエストしていいの?」
「ハ~イ、なんなりと~」
「え~っと、う~ん、里香何かある?」
「あたしは、そうだな~、シャルちゃんが好きなものとか?」
「あ~それいいかも、シャルちゃんの大好物って何?」
「シャルの大好物ですか、1番好きなのはマムの焼くパイですね。デザート系だとアップル、チェリー、ラズベリー。料理系のミートパイやポットパイなんかも、どれも最高なんで~す」
うっとりした顔になるシャルちゃん、その表情がどれだけおいしいかを物語っている。
……ゴクリ
「それはぜひ食べてみたいね!」
「私、出来たてのパイって食べたこと無い」
「どんなのがいいですか?」
「え~なんだろう? 色々あって選べないよ~シャルちゃんのおすすめは?」
「Oh~シャルも選べないです、どれもおいしです!」
「そっか~、どうしよう~」
「シャルは、どうしても決められない時、ミニパイにします」
「なるほど~、大きいのを一つじゃなくて、小さいのを複数、そうすれば色々楽しめるってことか~」
「That's right!」
「いいね~、そうしよう」
「ねぇ、柚。むこうになにもかもお願いするのは悪いし、入れたいフルーツとか具材は、あたしたちで用意しよう」
「そうだね、じゃあショッピングモールに行って、色々調達してからシャルちゃんの家に~」
「No~、それはだめです」
「えっ? シャルちゃん?」
「ショッピング、シャルも一緒にいきたいです」
「ごめん、ごめん、間違えた。まずシャルちゃん家に集合して荷物とかおかせてもらって、その後三人で買い出しにいこう!」
「ハイ!」
満面の笑顔を見せるシャルちゃん。
「夕飯の後は何する? ゲームとか持っていこうか~」
「お泊りの夜といったら、トランプとかUNOも必要じゃない」
「修学旅行の夜とかだと定番だよね~、罰ゲームとかも考えておこうかな」
「Oh~罰ゲームですか~、ドキドキするです」
「う~ん、シャルちゃんが楽しそうなら反対はできないな~、あんまり過激なのはだめだよ」
「わかってるって! 私もやることになるかもしれないし、どうしてもって時は、拒否権もありにする」
キーンコーンカーンコーン♪
「えっ、昼休みもう終わり? なんか早くない」
「だね~、今日はあたしも早く感じるよ」
「Oh~続きは放課後、ですね!」