金曜日後編 シャルちゃんは守護神? やっぱり『可愛い』は最強!
「さ~て、午後は体育だよ、早く着替えないとね」
「……体育か~」
「ユズキ、体育は嫌いですか?」
「う~ん、体を動かすのはあんまり得意じゃないし」
「シャルもそんなに得意じゃないですよ、でも楽しいです」
「うん、楽しむってことがなによりだよ! 苦手なことでも、徐々にできるようになればいいと思うし」
「ていうか里香って、コツをつかむの早いよね~、たいていのことはすぐものにしちゃうし、ほんとうらやましい」
「Oh~、確かにうらやましいで~す」
「そういえば、前に部活でバリバリやってた人に勝っちゃったことあるよね」
「いや、あの時はハンデもあったしさ~」
里香は中学校時代、体育の授業でやった簡易ルールの試合で、なんと当時レギュラーだった生徒に勝ってしまったことがある。
「ハンデがあったとはいえ、相手は経験者だよ。私もゲームで対戦とかだったら、負けないんだけどな~」
「あたしだって、ゲームで柚に勝てる気はしないよ」
「やりこみ時間がちがうからね! ていうか『eスポーツ』っていうくらいだし、体育の項目に入れてもいいと思うんだけどな~」
「そうなったら、私もたっぷりとやりこんでからのぞまないと」
「やめてよ~、里香がやりこんじゃったら、私が天下とれなくなる~里香に唯一勝てるものが何もなくなっちゃうじゃん」
「そんなことないって、柚の集中力の高さ、あたしも見習わなくちゃって思ってるよ」
「そ、そうかな~」
「そうだよ~、それを勉強とか他のことに生かせたら、もっといいんだけどね」
「それ褒めてないでしょ。ふ~んだ、わかってますよ~どうせ私の集中力が発揮されるのはゲームとかだけですよ、役に立たないですよ~」
「あれ、自覚あったんだ~」
「うぅ~、もぉ~、もぉ~、里香のバカ!」
「ごめん、ごめん、冗談だよ。あっ!? やばい、ちょっとゆっくりしすぎたかも、ふたりとも早くグランドいくよ、遅れたりしたら例のアレが……」
しゃべりながら着替えていたら、いつの間にか開始五分をきっていた。
「そ、そうだね、早く行こう」
「Oh~急ぎましょう」
体育の授業に遅れた生徒は、特別メニューの筋トレフルコースが待っている、体験した生徒によると、その日の夜は筋肉痛がとてもつらいらしい。考えただけでも息が上がりそうだ。
「普段体を動かさない柚には、ちょうどいいかもしれないけどね」
「絶対にいやだ! そんなことになったら、明日にも影響がでるよ~」
「Oh~それはシャルもこまります、明日のお泊り会、中止はいやです」
「あたしもそれはいや。よ~し、こうなったら~」
そういうと里香は、私とシャルちゃんの手をにぎってさらにペースをあげた。
「ふたりともしっかり着いて来てね、いくよ~」
「わっ、ちょ、ちょっと~」
「Oh~はやい、はや~い」
おかげで授業に遅れずにすんだ、それに軽い準備運動にもなった。
さて、今日の体育はサッカー、クラスを四つのチームにわけての勝ち抜き戦。ちなみにチーム分けは、先生があらかじめ決めていて、三人それぞれ別々のチームに。
結果は、まぁ思った通りだが、里香のいるチームが一位。相手のディフェンスをものともせず、次々にゴールを決めていく。さながらエース・ストライカーって感じ。
そして二位だったのは、なんとシャルちゃんのいるチームだ。里香のチームが攻めるチームだったのに対し、シャルちゃんのチームは守るチーム。しかも驚くことに、シャルちゃんがゴールキーパーを。シャルちゃんがやってみたいといったようで、ならばとチームが一丸となり、ゴールを、というよりもシャルちゃんを守る感じになっていた。
それでもやはり、経験者などは、その守備を突破していく。しかし中々ゴールは決まらない。だれもシャルちゃんを前にして、思いっきりシュートなんてできるはずがないのだ、怖がらせないよに慎重に、ボールをあててしまうなんて、もってのほかだ。だからみんな、かなり勢いがなくなったシュートになってしまう。それに、シュートを止められて喜んでいるシャルちゃんをみて、
「Oh~やったです!」
みんな頬が緩んでしまている。これぞまさに、鉄壁の可愛さガードとでもいうべきか。そんな中、勢いを落としながらもうまくゴールを決められたのは、唯一里香だけだった。
「シャルちゃん、わるいけど決めさせてもらうよ!」
「Oh~そうはさせないです」
「よっ、それ、いまだ!」
ドリブルで左右に動き、そしてオープンスペースが出来たところにすかさずシュート。
「Oh~きめられちゃいました、さすがはリカです」
ちなみに私の方はというと……。ひっそりと、ただ時間がすぎるのを待っていた。結果は最下位。
キーンコーンカーンコーン♪
……やっと終わった。最下位のチームは、その日使った道具の後片付けをすることになっている。ホームルームに間に合うように、着替えも終わらせないといけないから、授業内容によっては、めちゃくちゃ大変なのだ。そういう日は、私も含めてみんなが願う、どうか里香と同じチームに。ちなみに里香は、片付けが大変な日は勝敗に関係なく片付けに参加してくれる。
「里香~、なんで?」
「んっ、なにが?」
「いや、里香のチーム一位だったのに……」
「だって今日の片付け大変じゃん、それに一位が手伝っちゃいけないとは先生言ってないし」
里香がクラスメイトだけでなく、先生たちにも信頼されてるのがよくわかる。
「ふぅ~、終わった終わった、行こう柚、早く着替えないとね」
「うん」
私だったら、強制じゃなければやらないのに……。
───そして放課後。
「今日のサッカーとても楽しかったです、シャル初めてキーパーやりました!」
「うん、うん、大活躍だったね~」
「びっくりしたよ、シャルちゃんのチーム、守りが鉄壁なんだもん」
「最初は、あぶないからやめたほうが、って言われたです。でも、どうしてもやってみたいって言ったら、やらせてくれたです。なんか私たちが全力でがんばれば、って言ってました~」
「……あの団結力と守備の強固さはそういうことか、なんだか納得」
まぁ、なんにせよシャルちゃんが楽しかったみたいで良かった。
「明日だけど、何時集合にしようか?」
「あんまり早いのはちょっと~」
「柚まさか、今夜もゲームとかアニメが~、なんていうんじゃ……」
「ち、ちがうよ、ほら明日のために気合いれて準備しようかなと」
「旅行ってわけじゃないんだよ」
「わかってるって。ただ、ふたりにぜひ見てもらいたいアニメとか、一緒にやりたいゲームの選別に時間がかかるかな~と思って」
「Oh~ユズキのおすすめですか、なんだか楽しみです」
「期待しててね、シャルちゃん!」
「じゃあ、二時くらいにシャルちゃんの家に集合でいい?」
「うん、それなら大丈夫だと思う」
「決まりだね、じゃ解散しよっか、準備に時間かかりそうなら、早めに取り掛かりなよ」
「そうする、じゃあまた明日ね」
「また明日です、シャル待ってますね」
ふたりと別れた後、私は駆け足ぎみに家に帰った。
「くぅ~すっごい楽しみ。早く明日にならないかな~」




