そして、また知らない天井
AIの結果を基に、穂乃果先生には信さんを呼び出してもらうのであった。
『久しぶりだの。お主には、助ける案があるようだが、どういった事なのじゃ。すでに、穂乃果にダブルは使用したが、それでも駄目であったぞ。他にも、干渉・徐呪なども試したのじゃ。診断の模倣で、解決策は、本人次第なのは判明したがの。』
信さんはそういうと、この件に対して、頭を抱えていたのであった。
そして、俺はAIで導き出した案を伝えるのであった。
潺 水貴を救う方法。
現在、夢魔の能力に捕らわれており、本人のみにしか解除が不可能。
そのため、本人の霊力や精神力を高めるのが望ましい。しかし、ちょっとやそっとじゃ、不可能である。水貴の心が折れたままであり、霊力も低下しているためである。
解決方法は、火輪が生存している事を伝え、水貴の心を復活をさせなければならない。
これは、絶対条件である。
その後に、治癒に対して、二人掛けでダブルの使用が望ましい。
成功確率50パーセント。
『なるほどの。お主も見ないうちに、能力を使いこなしているようじゃの。しかし、火輪の声を寝ている者に届けるには、どうするのじゃ。』
『思い出してください。あの脱獄の事件を。1番の大河原 武士の能力です。あの爺さんの能力は、波動です。あの能力であれば、届くはずです。音は、一種の波動ですから。だから、信さんには、波動とダブルの両方をお願いする事となります。』
『なるほどの。分かったのじゃ。そしたら、火輪が目を覚ましたら行うのじゃ。』
『クズさん。本当にすごいです。私、感動しちゃいました。』
心情:信様でも、分からなかったのに。凄いなー。カッコいいな。クズさんって。
俺は、穂乃果先生に手を握られつつ、心情を見ていたので、少し照れてしまった。
その隙を、見逃さないのが真冬であった。すぐに、俺のお尻をきつくつねるのであった。
(くそぉーー。しょうがないじゃないか。なんで、こうなるんだよ)
その後、火輪が目覚めるまで、各自時間を費やすのであった。俺と真冬は、換金が終えていたので、ヤバタの口座へ振込をしたり、食堂でご飯を済ませて時間を潰すのであった。
その後、館内放送で診療室へ呼び出されるのであった。
火輪は、寝て体力が戻ったのか、だいぶ顔色が良くなっているのであった。
『先輩、ありがとう。信様から聞いたよ。先輩が水貴を助ける案を思いついてくれたって。』
『まぁー、それでも、100%でないからな。まずは、皆で助けてからだよ。』
『ヒョッヒョッヒョ。良い男になったの。火輪も大変じゃの。』
『信様!!!!』
『それだけ、元気が戻れば大丈夫そうじゃの。それでは、火輪。用意せい。』
そう言われ、顔を真っ赤にしつつ、火輪は用意するのであった。
その頃、水貴は永遠と、悪夢と戦っているのであった。
『火輪。危ない。避けてぇーーー。』
水貴の前で、火輪は、全身から出血し倒れるのであった。
そして、また目が覚め繰り返す悪夢。
水貴の心は、もうボロボロであった。何度も何度も悪夢を繰り返し、その度に、精神力・体力もすり減っているのであった。そして、霊力も、徐々に底が付くのは自分自身で分かっているのであった。
『はぁはぁ、夢と分かっていても辛いなぁー。でも、本当に夢なのかな。あの時、火輪は...どうなったんだろ。もしもの事があったら....。それなら、この悪夢もまだマシなのかも。覚めて現実を知りたくない。知ったら、私は...。どうか、火輪。助かっていて。
いつから、火輪を子供扱いしたのは。もう、十分強くなっている事は知っているのに。
大切だから、距離を保とうとしたのに。駄目だった。私とした事が私情を挟んでしまった。
これが、私の罪なのかもしれない。』
水貴は、自分が長くない事を考え、色々と考えが回っているのであった。
『水貴......。水貴。』
『ウフフ、こんな時に、幻聴が聞こえるなんて、私って、本当に馬鹿だ。』
水貴は、自然と涙が出て止まらないのであった。
『水貴。起きて。水貴。私は大丈夫だから。起きて。』
『あはは、本当に、火輪が言いそうだ。これで、死ねるなら、いいのかもね。』
『こら!!水貴。起きろ。馬鹿水貴!!!合宿の時に、イタズラを私のせいにしたのも。私が食べようとしたデザートを勝手に食べちゃった事も。貸したお金ももういいから。もう、色々許すから。死なないで。戻ってきて。っ水貴ぃーーーー。』
『えっ。火輪!?火輪が生きてる!?それに、さっきより霊力が回復してる!』
水貴は、正気を取り戻し悪夢と対峙するのであった。
目の前で、火輪が散る。また、繰り返しの悪夢。
だが、もう水貴には、効かなかった。火輪は生きている。今も声が、聞こえてくるからだ。
水貴の心は、一度は折れたが、その分強くなり復活するのであった。
そして、徐々に回復してくる霊力で自信を取り戻し、夢の中の火輪を救うのであった。
『玄武よ。鉄壁をみせてやりなさい。』
もう、夢の中の火輪は散る事もなく、守られていた。そして悪夢は、消し去るのであった。
水貴が目を覚ますと、そこは見知らぬ天井であった。だが、すぐ横に顔を涙で、濡らした火輪の姿があった。
『水貴ぃーーー。起きて良かった。』
『ウフフ、火輪。あなた。顔が涙と鼻水だらけよ。』
ズピーーーっと、鼻水を吸い込む火輪がいた。
『それと、火輪。昔の事は許してくれるのね。』
『えっ....。』
『ありがと。お金は、今回返そうとしてたの。でも、お言葉に甘えるわ。
それと、昔の通り、火輪って呼ぶわ。子供扱いも、もうやめる。
私は、あなたをどうしても妹のように見てしまって、距離を置かないと駄目だったの。』
『子供扱いとか呼び名は、どうでもいいよ。お金は....。返してくれてもいいよ。』
『でもぉー、全部許すから戻ってきてって言ってくれたじゃない。』
この後、二人はワイワイと話すのだった。
そんな姿をみて、俺達は、微笑ましく思うのであった