袋田兄弟参上
時は遡り、ヤバタとクズが台湾へ行っている頃の話である。
ヤバタと俺が早朝に家をでると、家には薫子さんと真冬しかいなかった。
二人は、恋のライバルでもあり、お互いに認めあっている関係のため、非常に仲が良かったのであった。
彼女達は、二人の帰りを待つ間に、家の開拓を試みたのであった。以前は、薫子さんの1人暮らしだったが、今は4人も暮らしているので、少し改良が必要となっていた。
まず、お風呂場であった。広さは、申し分ないのだが、ガラスのスケルトンなので、どうしても入る時にカーテンを使用しなければいけなかった。このカーテンも現在は無理やりつけているからだ。
そのため、男連中がいない間に、そこに壁を設置するのであった。
そこは、皆が納得していたので、改装は問題なかったのだ。
本当は、薫子さんだけは、そのままの方が良かったようだが、押し切って納得させたのであった。
そのため、クズとヤバタの財布から改装費を出すのであった。真冬とクズの財布は、同じためクズが若干多く払う事になっていたが....。
ヤバタも、罪人時代に贖罪の他に、妹のための貯金をするために多くの仕事を行っていたので蓄えは、あるようだったのだ。
そうして、台湾の間に、改装業者が入っていたのだ。
改装は、そんなに難しくなく、1日目で完了していたのであった。
真冬と薫子は、その間、姿を消していたので、業者からしたら不在中の仕事であった。
『しかし、こんな豪邸で、いいよな。』
『そうだな。今は海外旅行だってよ。羨ましい限りだよ。』
そんな事を、作業を終え、片付けながら話しているのであった。
そこに、たまたまだが、豪邸ばかりを狙う空き巣の耳に入ったのであった。
それは、カイトとシズネという兄弟だった。
双子の俺たちは、空き巣の天才と呼ばれている。まだ、自称だが
鍵を開けるのも、難なくこなし。また、人が居ようが、静寂に仕事をこなす。それが、袋田兄弟だ。
まぁー、そう言っても、腕がいいとかでは、まるでなかった。ただ単に、気付いた時には、備わっていた能力を駆使していただけに過ぎないのだ。
兄のカイトは、動。弟のシズネは、静。二人は、反対の能力を持っていたのであった。
そして、今回も空き巣に入るのであった。
『カイトォー、ここも立派な家だねー。今日は、僕の出番はないかもね。海外旅行で留守らしいよ。』
『馬鹿野郎!その油断が、危ないんだろ。前も痛い目にあったろ。』
以前に、油断して警備会社に連絡がいってしまったのであった。
『あの時は、ごめんよぉー。捕まらなかったからいいじゃないか。今日は、最初から能力をかけておくよ。』
そう話しつつ、侵入を試みるのであった。
カイトが、まず自分の能力で、鍵を開けようとしたのだが、すでに開いている事に気付き、シズネに話しかけるのであった。
『シズネ、本当に人がいないんだよな!?鍵が開いてるぞ。とりあえず、家の中を確認し人が居たら、逃走経路だけは確保しろ。』
『おっけい。それじゃ、能力をかけるよ。お邪魔しまーす。』
2人は、ソロリ、ソロリと入っていくのであった。
しかし、そこには人の気配も何もなかったのだ。まっ、現在居たとしても、霊と霊獣なので、人ではないのではあるが...。
偶然にも、真冬と薫子さんは、庭でお茶をしつつ、寛いでいたのだ。
そして、気配にも静音の能力により、気付きにくいのであった。
袋田兄弟が、家に入ってから各部屋を物色し始めるが、今の所、特に何も出てこないのであった。
それは、そうであった、クズにしてもヤバタにしても、金目の物は持っていないのだった。
『ここの家、見た目だけで何もないよ。』
『シズネ、諦めるな。まだ、奥の部屋があるではないか。だいたい、こんな豪邸で何もない方がおかしいだろ。きっと、あるさ。』
そして、遂に禁断の部屋に手をかけてしまうのであった。
その時、お茶を楽しんでいた薫子さんのティーカップにヒビが入るのであった。
ピキッ。
『あらぁー、やだ。お気に入りだったのに。』
『にゃにゃ、それは、残念にゃの。代わりのカップを持ってきますにゃ。』
『真冬ちゃんは、ゆっくりしてなさい。昔から、こういう時は何か起こるのよ。胸騒ぎがするわ。』
そう言い、薫子さんは家の中へ入っていくのであった。
『にゃにゃー、にゃんだが良く聞くはにゃしにゃの。こんにゃに、天気が良い日に悪い事にゃんておきにゃいにゃ。』
真冬は、暢気に寝ているのであった。断末魔が聞こえるまでは...。
袋田兄弟が、薫子さんのドアのノブを回し中へ入ると、そこには、ラブリーなものが並んでいたのだ。
『カイト、何か女の子の部屋みたいだね。』
『いや、ここに貴金属があるはずだ。化粧台があるし、ここが婦人の部屋だろ。お前は、クローゼットを見てくれ。』
『分かった。えぇーと、クローゼット、クローゼットと。』
シズネが、手をかけたその時、シズネの肩にも手がかかるのであった。
『ちょっと、カイトさ、邪魔しないでよ。』
パシッと手を払い除けるのであった。
『はぁ?俺は、何もしてないぞ。』
『えっ!?』
シズネは、声を上げる前に気を失うのであった。
『ふー、危なかったわ。それにしても、無断で乙女の部屋に入るなんて、お仕置きが必要ね。あなたもね。』
そうして、こっちへ振り向いていたカイトは断末魔を上げ、気絶するのであった。
その後、真冬も異変に気が付き部屋に急ぐのであった。そして、薫子さんの指示通りに、縄で縛りあげ、外へつまみ出すのであった。
袋田兄弟は、夢の中で、とても苦しんでいるのであった。
今、二人は、薫子さんの能力である接触で、夢の中でさえもお仕置きをされているのであった。
普通のお仕置きかどうかは定かではなかったが...。
『この人たち、どうするのにゃ?』
『そうねぇー、まだ青い果実って所よねぇ。でも、私も鬼じゃないわ。反省をしているなら、許すのが淑女よ。』
そうこうしていると、袋田兄弟は目覚めるのであった。
『『すみませんでしたぁー。お姉さまぁーーー。』』
2人は、泣きながら開口一番に、薫子さんへ懺悔するのであった。
『あらあら、可愛いお顔がグシャグシャじゃない。反省しているのであれば、いいのよ。』
『お姉さま、ありがとうございます。もう、こんな事はしませんの。』
『私もです。だから、お姉さま。私達を見捨てないで。』
『もう、しょうがないわね。』
真冬は、この出来事をみていて呆気に取られているのであった。
『この男の子達、どうしたのかにゃ??』
『真冬ちゃん、この子達は、まだ見た目はそうかもしれない。でも、心は違うのよ。』
『そうにゃのか。見た目で判断して、ごめんにゃさい。』
『真冬ちゃんは、素直ね。』
『真冬姉さん、大丈夫ですから。ね、シズネ。』
『はい。私たちは心を入れ替えましたから。』
薫子さんにより、反省をし心を入れ替えたのだが、男性から女性へ心を入れ替えた事は、本人達と薫子さんだけしか知り得ない秘密であった。
かくして、クズたちの留守中に起きた事件は、幕を閉じたのであった。
そして、この二人は、昼はメイドとして住み込みで、働きはじめるのであった。2人の能力により、セキュリティは以前より向上するのであった。
夜は、バー薫子で働くのは、後の話である。