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 「ふぃ~。何とか人心地つけたわ。で、とりあえず一段落ついたみたいだし、アスマはそろそろ帰るの?」

 「は? いや、まだレイエルの無事を確認してないだろ」


 何を言ってるんだこのちみっこは。


 「はぃ? エルならそこに居るじゃない」

 「え?」


 セシリィが指を指した方、背後を振り返ってみると確かに向こうからレイエルがゆっくりとした歩調でこちらに歩いて来ているところだった。

 まだ遠目に見えるだけだが、歩き方に不自然な点はないし、目に見える限りでは怪我をしているようにも見えない。よかった。

 レイエルの姿を確認していると目が合ったので何となく手を振ってみる。すると、レイエルは小走りでこちらに近づいてきた。


 「……お待、たせ」

 「レイエル。よかった、無事だったみたいだな」

 「エルちゃん。怪我とかしなかった?」

 「……うん。大丈、夫」


 そう言ったレイエルだが、その直後に顔をしかめ苦しげな表情を見せ、両目を覆うように額に手を当て深呼吸をしている。


 「なぁ、本当に大丈夫か? 辛そうにしか見えないんだけど」

 「怪我してんだったらちゃんと言いなさいよ? 放っといたらもっと悪くなるんだから」

 「…怪我、は、して、ない、よ。でも」


 額から手を放したレイエルは、じとっとした目でセシリィとミーティアを見る。


 「……急に、風霊、との、繋がり、が、切れて、少し、の、間、目が、おかしく、なった」

 「……あー、あれね、うん。その、ごめん」

 「……あ、あはは。ごめんね、エルちゃん。うっかりしてたよ」

 「え、何? 二人が何かしたのか?」


 レイエルの視線を受けて気まずそうな顔で二人が謝っているが、状況が理解できていない俺には正直ピンとこない。


 「……あれよ、アタシたちの使った精霊宿し。あれって周辺にいる微精霊を根こそぎかき集めて発動する術だから、アタシとティアが術を発動させた時にエルが視界確保のために力を借りてた風霊まで強制的にこっちで取り込んじゃって、無理やり風霊との繋がりが途切れたせいで、まぁ、頭痛とか目眩とか視界混濁とか、色々大変だったのかなーとか。ね」

 「うわぁ……」


 それは酷い。あの力がなければオークに致命傷を与えられなかったとはいえ、さすがに確認も無しに使うのは駄目だろ。

 というか、レイエルからの支援がなかったのってそれが原因だったのか。火を消し止め終わっていたから良かったけど、タイミングを間違えていたら割と危険だったんじゃ…。

まぁでも、誰も大事に至らずに済んでよかったんじゃないかと思う。今こうして謝りながらもおどけた空気を醸し出しているのも、誰の犠牲も出なかったからこそだ。その部分に関しては素直に喜んでもいいだろう。


 「あっ。ところでなんだけど、あれどうする?」

 「あれ? ってああ、あれか」


 セシリィの視線を辿った先にあったもの、それはオークの死体だ。あれというのはたぶん、その腹に突き刺さった魔剣のことを指しているのだと思う。確かにどうしようね?


 「あぁいう、いかにもって感じの禍禍しいのはアタシたちの趣味じゃないわね。アスマ、欲しいならアンタ持って帰りなさいよ」

 「え? 俺が貰っちゃっていいの?」

 「アタシたちはいらないし、ここに放置しておくにはちょっと物騒でしょ」

 「まぁ、誰もいらないっていうんならありがたく貰っていこうかな」


 オーク相手にあの武器を使った時のことを考えると、スキルと魔術で強化してようやくまともに扱えるかどうか、という程の重量はあったが、魔力を少し消費するだけで火球と爆炎が使えるようになる魔剣だ。欲しくないわけはない。特に俺は火属性の魔術適性がないからある意味うってつけだ。

 魔剣を回収するためにオークの死体の傍までやってきたが、これどうやって抜こうかな。柄だけを引っ張ったら死体ごとこっちに倒れてきそうで嫌だな。片手で死体を押さえながら抜くか。

 そう思い、魔剣の柄を握り、オークの肌に手を触れた瞬間、その手を通して何かが俺の中に流れ込んできた。


 『憤怒の感情を収集しました。転送――変換。スキル《赤殻せきかく》を取得しました』


 ……は? 何がなんだって? なんで今スキルを取得したんだ?

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