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エチュード・イズ・ディープ(11)
「成松くん、とっても上手だったよ」
「ありがとうございます、すいません。劇とは言え、撃ち殺しちゃって」
「気にしないでそんなの。楽しくできたならそれでね」
楽しかったかは分からないけど、先輩がそう言ってくれるならいいか。
「綾音に誉められるなんて、成松くんやるじゃない」
「はい?」
「綾音は演劇に関してはかなり辛口評価なのよ。だから文句一つ付けられる人は演劇部でもあまりいないの」
「人格者……」
それは俺が初めてだからじゃないのだろうか? いきなり文句を付けられても素人には理解が難しいだろうし……。でも、誉められたことは素直に嬉しいな。
「その調子で、次の練習も頑張ってね」
「あっ、はい」
そうだった。ここで終わりじゃないんだった。これからが始まりなのだということをすっかり失念していた。気合を入れなおさないとな。




