エチュード・イズ・ディープ(9)
「ならば試してみるがいい、己の力の無さを痛感するがいい」
先輩は目をつむり、まるでハープを鳴らすような指使いをしてみせる。すると、役を終えた人が、それっぽい曲を流したらしく、とても綺麗なメロディーがステージに聞こえてきた。ああ、いい曲だな。なんていう曲なんだろうな。でも倒さないといけないから、まるでダメージを受けてない……ってことでいいんだよな?
「ふっ、無駄だ」
俺がそう叫ぶと、あたかも俺が掻き消したかのように曲が鳴り止んだ。
「効かぬ、効かぬわ。その程度では私にかすり傷一つ付けることはできんぞ」
「くっ、ならば」
先輩がそう叫ぶと、今度は先ほどと違う曲が流れた。テンポが真逆で、とても激しい曲調。いかにも攻撃しているようなイメージが湧いてくる。だが、効いてない……ってことでいいんだよな? また自分に自問する。
「ふっ、何ともぬるい」
「き、効いていない、どうして?」
「言ったであろう。私の前ではどのような力も無力と化すと」
「く」
「さあ、遊びは終わりだ、私の前にひれ伏すがいい」
おもちゃの銃を、失礼であるが先輩に向け、
「死ぬがいい、ダークネスグレネード」
撃った(BGM付き)。