突然のオファー(10)
「そのアンケートで、見事成松くんが一位に輝いたのです~」
周りから一斉に拍手が沸き起こった。
え? え? え?
「冗談、ですよね?」
俺は尋ねた。普通はこんなこと信じられるはずないだろう。考えてもみろ、学校全体の男子って……この状況、誰が落ち着いていられようか、いやいられない。確かに嬉しいことなのかもしれないが、状況が状況故、喜んでいる暇がない。
「そう言うと思って、はい集計用紙」
俺は里野先輩から紙を受け取り、それを食い入るように見た。
……嘘だろう。二位に100票以上差をつけて212票(300人中)の堂々の一位だった。今の俺の表情を一言で表すと、呆けがよく似合うだろう。三分の二が俺に投票って……みんな美的センスが変なんじゃないのか?
「まあ、そんな気はしてたけどね、私たちは」
高宮先輩がそう言うと、部員の大半がうんうんとうなずいた。
「かっこいいし性格もいいし、それに気配りもできる。もう言うことなしね」
「その人を選んだ理由が記入できる欄にも、ほぼ全てが今言ったことを書いてたしね」
「完全無欠……」
俺は自分ではそんな風には思ってないんですが……世間の目っておかしくできているものなんですね。
俺はつくづく感心した。




