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令和の明治  作者: にゃ
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第三章 就職

 この得体の知れない世の中で生きていくには、職に就くことは必須だ。非協力的な屈強な外国人はさておき、他の日本人は皆金を稼いでいる。この2日間飯を買ってきて貰っていたが、他の人の金に付け込むほど私は下衆ではない。しかし、私の致命的な欠陥により就職は不可能に近いものであることを忘れてはならない。なので対策をすることにした。松岡に手伝ってもらおう…。


「どうした!急に俺を呼んだりして」

「お、折り入って頼みがあるのだ」

「なんだ!言ってみろ!」

「面接練習を手伝ってほしい」

松岡はなぜかきょとんとした顔をしている。彼もまた面接など存在しない異国の人なのだろうかと考えたが、使っている言語は日本語だし、名前が日本語だ。

「この明治の世に面接は存在しない!

ここでは紹介に頼って職を見つけることが主流だ!」

「そうなのか…」

私は無知は罪だと感じた。しかしそうなれば話は簡単だ。適当に百貨店勤務の彼女らに紹介してもらうか。松岡は医師だから、彼に就職で世話になることはもう無いだろう。私が医師になったなら、恐らくこの東京の町は破滅するだろう。

とりあえずそうと決まれば桜田さんと竹橋さんの退勤時間を待つだけだ。松岡からずっと期待の視線を感じるのは気のせいだろうか。

外に出たとしても通貨がないから何もできない。拠点である和洋折衷の洋館のリビングで横になった。この時代にはテレビなどなく、もちろんスマホはインターネットに繋がらない。実に不便な時代だ。外で和気藹々とする人々に混ざりたいと久々に思ったが、このコミュ力では愛想笑いされて距離を取られるのがオチだ。松岡はどこかに行ってしまったし、今この洋館にいる話し相手とすれば、18歳の栗木くんだけだ。

チームのメンバーとして親睦を深めることは実に良いことだ。そんなことを考えながら私は昼間のぽかぽか陽気の中で眠りについた。

「あの、あなたはどこから来たんですか?」

夢の中から急激に現実に引き戻される。実に気分が悪い。しかし栗木くんから話しかけてもらえたのは嬉しかった。

「私は東京都渋谷区から来た。しかし気付いたら路地裏にいたので、正確な居た場所はよくわからん」

「そうですか」

「君はどこから来た」

「山形県鶴岡市です。同じく気付いたら路地裏にいたので正確な居た場所はわかりません」

「どこを最後に歩いていたんだ?」

「高校から下校途中で、田んぼ道を歩いていました」

「なるほど」

田んぼ道ということは、恐らく近くに路地裏なんてものは存在しないのだろう。松岡も元いた場所の近くにあんな路地裏はないはずだと言っていた。ここで私はニート生活で推理小説に読みふけっていたため身につけた、自慢の推理力を発揮した。

このチームの全ての人が同じ経緯でここにたどり着いたと松岡は言っていた。つまり皆、意識朦朧とした状態で気付いたら路地裏にいたということだ。私は都心部をふらついていたから気付かない間に路地裏に行く可能性は十分にある。しかし、栗木くんや松岡のように近くにあんな路地裏がない人まで同じ経緯でここに来たということは、意識が朦朧としていたもしくは意識がない状態で、何者かによってあの路地裏に連れてこられた可能性が高い。

自分でも、この説までたどり着いたのはすごいと思った。しかしそうなってしまうと、タイムマシンが既に発明されているか、この世界は作られた明治の街であるかのどちらかになる。しかしこの街の人々は明らかに使う言葉も文字も違い、明治に順応しきってるし、作られたにしては広すぎる。よって、作られた街である可能性は低いだろう。だが、タイムマシンが発明されたなんてことは一切報道されていなかった。でももし国家機密レベルで私たちをタイムマシンの実験に巻き込んでいるとしたら…。


そんなことを考えているうちに憶測の限界を感じ、考えるのをやめた。

気がついたらもう彼女らの退勤時間ではないか。紹介をしてもらうために話をつけるとしよう。竹橋さんの姿がないが、とりあえず桜田さんに交渉しよう。

「あの桜田さん」

「あらどうしたの?」

「私を百貨店に紹介してほしいんですが」

「あなた就職したいの?」

「え、えぇ…。お金を稼ぎたいので」

「いいわよ!」

「いいんですか!ありがとうございます」

桜田さんの話し方は少し癖があるが、とてもいい人だ。竹橋さんにも話をつけてくれるらしい。

しかし午後10時になっても相変わらず松岡の姿がない。医者の仕事はそんなに時間がかかるものなのだろうか。みんなで楽しくカードゲームをするなかで、相変わらず外国人は難しい顔をして部屋の隅にいる。私は、直感的に悟った。

外国人と日本人では体質が違う。意識を朦朧とさせてここに運ばれたのであれば、使われたのは麻酔だ。しかし体質が違うとなれば、日本人に効く麻酔が外国人には効かない可能性は十分にある。難しい顔をして何かを考えているとなると、話を聞く価値はありそうだ。


第四章に続く

読んでくださりありがとうございます!

今回の話はどうでしたか。少しづつ謎を解く回でした。ぜひ感想を教えてください!

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