戻る日常。始まるもの。
「佐藤君、私の前にカレーパンを出すなんてそれは危険だよ?」
「え、あげないよ?」
これはコンビニで買ったいいものなんだから。
シュ!
僕の手元にあったカレーパンは彼女の持ってきていたソーセージと入れ替わる。
「え?何今の早業?」
「ふふ、三枝家秘伝の業だよ?」
君の家庭は忍者とかが祖先なの?
「はあ、どうぞ…」
「わーい!」
カレーパンは持っていかれた。
「あなたもたいがい流されやすいわね?」
「そう見えるなら玉木さん助けてよ?」
「嫌よ、彼女食事の時は肉食動物並みに危険だもの」
そう言えば僕からは奪っていくがその逆はやったことなかったな…
試しに彼女の手元にあったおにぎりを強奪しようとするが……
「シャーーー!!」
「いた!?」
ひっかかれたんですけど!?
「完全に野生の動物ですね……」
ほんと三枝さんは未知の生物である。
「ねえ、なんで僕からは奪うのに僕にはくれないの?」
「え、だって佐藤君だし?」
全国の佐藤君に謝ってほしい……
「はあ、運命の出会いないかなー」
何故か僕のほうをチラチラ見てくる彼女。
「僕には紹介できる友達なんていないよ?」
「……はあ、本当に君は佐藤君だね…」
「そうね」
「はい、お兄ちゃんですね」
「えー」
なんか呆れられているんですが…
「まあ、いいや私は……なんか満足だし…」
「私もいいわね」
「そうですね」
「え、みんな出会いたい詐欺なの?」
みんなが僕を見て睨んでくる。
「デリカシーがないのが佐藤君だよね?」
「ええ、そうね」
「まったくです」
また呆れられている。
「なんでこんなに僕にみんな厳しいの……」
それはそうといい加減何とかしようか……
目の前の状況を……
「努!私は運命の人だよ!」
「俺の運命の人は俺が決める!」
既視感がある状況だった。
その為皆慣れたのか何も言わなかったが、ずっとこの調子で言い合っている。
「あのー」
「「なに!」」
「えっと、言い争いはここ以外でお願いできませんか?」
「無理です!ここはいい舞台だから!」
「ああ、ここが最適だ!」
うん。なんでここに執着みんなするの?
なんか呪いでもあるの?
「いや、僕たちお昼を過ごしててね?」
「「知るか!!」」
おお、強気ー
「あのね、まず落ち着かない?はい、これソーセージ」
「あ、ありがとう」
「あ、ああ」
なんとあの三枝さんがなだめていた。
「初めから止めてよ……」
「だって、佐藤君の頑張りをみんなで見てたから」
子供の参観日かよ……
「で、なんで言い争ってるの?」
「私はこの人の運命の人なの!」
「えっと、脳神経外科に行く?」
「失礼でしょ!?」
「ほら!一般人はこうなるんだよ!」
「そ、そんなことない!女の子ならわかるはずだよ!ね?」
女性陣は困惑すらしていなかった。
はっきり一言。
「運命は信じてないよ?」
「私も」
「私もですね」
うん。実にみんならしいね。
「えー夢がない!!」
「夢って君もうこの年齢で……」
「ああ、末期だろ?」
「ああ、手遅れかも……」
「ほんと、失礼!!」
ていわれてもな。
「とにかく理由は聞くよ。なんで運命の人なの?」
「目が合ったの」
「うーん。ギルティー」
「うん。ギルティーだね」
「そ、そんな……」
女の子は崩れ落ちる。
「じゃ、じゃあ俺は行くからそいつ頼んだ!」
男はぴゅーと去っていく。
「どうするの?」
「えーそこは僕に押し付けるの?」
「だっていい感じにできそうだし」
何いい感じって?
「えっと、とにかく夢見るのは卒業ってことで……」
「嫌!!」
うーん。強い意志だね。実にいいね。
「なら頑張って。さようなら」
「冷たいーー!!」
子供のごとく駄々をこねる。
「お兄ちゃんこの人やばいですよ?」
「逃げようか……」
「そのほうがいいかもです」
そうして去ろうとするが……
ガシ!
「待てーーーー」
ゾンビのごとく足にしがみつかれる。
「あ、あのね。僕たちには何もできないから自主的に頑張ってほしいなって…」
「助けろーー」
今度は体にしがみつく。
「ねえ、何とかしてあげる?」
「えー嫌だよーどうせ僕、主導とかいうんでしょ?」
みんなが頷く。
「はあ」
僕はとりあえず女の子を引き離す。
「あのね。何をしてほしいの?」
「よく聞いてくれた!実験してほしいの!」
「実験?……なんか嫌なワードだな…」
今までの経験上ろくなことがないからな。
「あなたには私と運命の人ごっこしてもらうわ!」
「やっぱり……」
なんなのその珍妙な遊びは……
「ちなみに何それ?」
「これは運命の人という設定でしばらく過ごしてもらって本当に運命の人でなくても恋に落ちるのか実験するものよ!」
な、なんておバカな計画だ。
「この子、正気なのかしら?」
「珍獣女子ですね」
「佐藤君ファイト」
こら、外野止めてくれ…
「さあ、これからあなたと私は運命の人よ!」
「はあ」
さあ、また始まる。不思議な関係が。
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