別れの現場
「すまない。別れてく春香」
「え?な、なんで?」
僕、佐藤葵は絶賛かくれんぼ中。
まあ、正しくは屋上で一人ご飯を食べようとしていたら二人が勝手に入ってきた。
そして、僕に気づかず別れ話スタート。
今はここ。
仕方なく、僕は必死に息を殺して隠れている。
それにしてもあの二人は最近付き合った。
同じクラスの三枝春香と西村大我じゃないか。
うちのクラスでは有名人らしい。
僕はボッチなのでよく知らないがそういう話がよく聞こえてきていた。
「俺、本当に好きな人が分かったんだ……」
ぴし
何かが強くひび割れる音がした。
「へえーそうなんだ…」
お怒りだあれ!
額に青筋浮かんでるもの!
そりゃ怒るだろ。
ちゃんと確認しないで付き合うなんて。
「ああ、だから別れてくれ」
「……分かった。いいよ」
「ああ、ありがとう!」
「……だからね?」
「うん?」
彼女はその小さな体で思いっきり腕を振り上げて殴る。
「死ねー!!」
「ぐは!!」
西村は壁に激突する。
「これで許してあげる…」
「あ、あり…がとう」
そうして西村は去っていく。
「ふう……」
「いやー良かったね?変な男と別れられてよかったね?」
「え!?」
僕は何もなかったように出ていく。
「いつからいたの!?」
「初めからかな」
僕は何もなかったように昼ご飯を食べ始めようと準備する。
「ちょ、ちょっと!?待って!?」
「おわ!?」
彼女は小さな体とは思えぬ力で俺の胸ぐらをつかんでくる。
彼女の力が異常なだけであって決して僕が非力なわけじゃない。
おそらく……
「な、なに?」
僕はいたって冷静に聞く。
「だれにも言わないでよ」
「い、言わないよ?」
「本当?」
彼女はすごい圧ですごんでくる。
「ほ、本当」
そこでやっと手を放してくれる。
ぐう。
彼女のおなかが鳴る。
「緊張溶けておなか減ったかも……」
「今からでも食べてくればいいんじゃない?」
「それだと授業間に合わないでしょ?だから…」
彼女は僕が大枚はたいて買ってきたカツサンドを見ている。
「え?」
「ほ、欲しいの?」
勢いよく頷かれる。
「じゃ、じゃあどう……」
言い終わるまでにトンビのように奪われる。
「いただきまーす!!」
彼女は恐るべきことに二個入っていたサンドを二つ一気に一口食べる。
「一つだけのつまりだったのに……」
「うん?じゃあ、はい」
食べかけを渡してくる。
「いいよ。人が食べたのはちょっと」
「そう、じゃあもらうね!」
この女、速攻で食べた。
絶対計画的だ。
まあ、いいもう一つBLTサンドがあるんだ。
そうして袋を開けていると彼女がじっと見てくる。
「はあ、どうぞ」
「わーい!」
完全に餌付けだった。
小さくてでも大ぐらいな彼女との出会いは最悪だった。
「ごめん。カラスに全部もっていかれちゃった…」
彼女は上を見てはにかむ。
「……今度奢って」
いやなんでだよ……
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