亀裂
追われる。
追うのか。
逃げる事もなく、消えゆく事を選ぶ人達。
僕らは、非力で、黙って、その背中を見つめる事しかできないのか。
僕らは、侵略者達の行く手を阻みながら、何が、正解なのか、
わからなくなってきた。
彼らは、首都、東京を占領しながら、日本に残っている軍事力を抑えにきていた。
黙って見ている訳ではない。
まだ、北側で、残っている基地が、動き出し、
首都をだかん、すべく動いていた。
同盟国。
そんなの動いていない。
感染が怖いのか。
当初の感染に、何らか、関わっていたのか。
他国が動く気配はない。
このまま、東京は、あいつらの手に落ちていくのか。
そう考えると、
僕の中で、燃える物があった。
この国を守りたいとか、
そんな安っぽい正義感でない。
何気ない。
僕の日常を壊したから。
目の前の、兵士達の怯える顔があった。
晴の姿も。
僕も。
吐夢も。
異常な正義感に駆られていた。
「九尾狐?」
兵士が叫んだ。
「どうして、ここに?」
そう言った気がした。
「やめろ!」
晴が叫んだ。
吐夢だった。
兵士の喉元が裂けた。
「ダメだ!」
止めに入ったが、遅かった。
「やり過ぎだろう?」
晴がなじった。
「どうして?」
トムの舌先が、頬についた血を舐めていた。
「甘いよ。そんなんで、この状況を覆す事ができるの?」
指先からも、血が滴り落ちる。
「残酷な事はするな」
「どうして、彼らは、もっと、残酷」
吐夢に罪悪感はない。
「違うよ。教えてもらわなかったのか」
「僕らは、阻害されてきた」
吐夢の目が光った。
「守る為には、手を下してもいい。そう教えられたよ。僕らは、自分で、身を守らなきゃならなかったから」
「誰に、そう習った?」
「あなたのよく知っている人」
晴が言葉を、見つけられずいる。
「吐夢。それって、どういう意味?」
吐夢と晴の会話の意味が、わからなかった。
「よく知っているって」
言葉を濁す晴。
「閉じこもっていたのは、何が原因だったの」
姿は、幼いが吐夢は、やっぱり、妖だ。
晴を追い詰めていく。
「あなたが、暗くて狭い蔵や砂の世界に閉じこもってしまった原因は、何かって聞いているの」
「吐夢。止めないか?君を拾ったのも、晴のお陰だし。僕だけだったら、拾わなかった」
「いいんです。あなたは」
吐夢が、笑った。
「半端だから・・・あなたは」
「半端って?」
「僕と兄さんは、半分しか同じ血が流れていないって事」
「吐夢!」
晴が怒った。
僕にさえ、怒ったことは無かったのに。
「それ以上、言うな」
殺気に、薄笑いしていた吐夢が真顔になった。




