それは、血の因縁
やばい。
誰もが、そう思った。
振り切れるか?
人のふりをした僕らが、
侵略してきた最新の軍隊を。
検問していたのは、陸軍の兵士だろう。
迷彩色の制服を着て。
いくら、僕らだって、彼らが、束になって、攻撃してきたら、
負けてしまうかもしれない。
吐夢や、桜咲里だって、逃げきれない。
僕や晴だけが、逃げれても意味はない。
活路を見出す事が、先決。
晴が言った。
「なんだかんだ言って・・・結局、この国が故郷なんだなって」
「え?すぐ、砂漠に逃げちゃうくせに?」
「俺を、子供部屋おじさんくらいに、思っている?」
「うん。そして、ナルシスト」
死ぬ機会失った存在。
もはや、何者か、わからない。
古い神々のなれの果て。
「ふるーい、蔵から飛びててきた、骨董品」
晴が、そう言って、笑った。
悲しく歪んだ、笑い。
「ここが、無くなったら、本当に、何者か、わからなくなるな。颯太」
それは、僕も同じだった。
僕を捨てた家族。
居場所もなく育った幼い日。
このまま、この国と一緒に消えてしまう。
僕は、その時、恐ろしい存在になるのだろう。
正気を失い、
存在するあらゆる者を食い尽くす。
そんな存在。
僕に愛を与えてくれなかったこの世界。
このまま、何も見つけられず、僕を野放しにした世界に、
復讐するかもしれない。
「晴。僕は、こんな生き方しかできない、この世界が嫌だった・・・けど」
景色の綺麗な故郷だった。
友人がいた。
僕を愛してくれる人も、愛する人もいなかったけど、
それなりに、穏やかで、人に感謝される日だった。
「僕の故郷って・・・ここだけなんだ」
「・・・だな」
やろう。
僕らで。
勝浦と桜咲里は、何か、知っている。
感染も。
侵略も。
とりあえず、この検問から、うまく、すり抜けなくては、ならない。
なのに。
「うぎゃー!!」
吐夢だった。
一台ずつ、車を覗き込む兵士の顔に驚いたのか、
突然、声を上げた。
「子供だから!」
そう言い、慌てて、口を押さえる桜咲里。
だが、
兵士達の目は、口を押さえる桜咲里を見ていなかった。
そして、
僕らも。
僕自身も、慌てて、目を見開いた晴の顔を見ていた。
そこには、
小さな吐夢の体から、
弾ける様に、飛び出た九つの尻尾があった。
「えええ?」
僕は、思わず、自分の背中を振り返った。
違う。
この尻尾は。
吐夢?
「怖い!怖いよ!」
鼻から、鮮血を流し、叫ぶ吐夢の背後には、キラキラと輝く尻尾が揺れていた。




