魔物の軍勢
甘かった。私の目算よりはるかに私の力の残量は僅かだったらしい…カレラ君とロイ君、たった二人に加護を与えただけでこんな状態になるなんて…。このままだと存在が保てなくなる…ヤバい…。
ニーヴェルン『はぁはぁ…二人ともよく聞いて、神としての力があまり残ってなくて私は消えかけてる…力の流出を防ぐ為に休眠状態に入ります。はぁ…はぁ…全てを二人に負わせてしまう私の力不足を許して…』
カレラ「まさか…!その様なお姿になるまで我らの為に…」
精霊カレラは涙を流しながら言葉を続けた
カレラ「必ずや!必ず我らがニーヴェルン様をお救い致します!」
ロイ「で具体的にどうすりゃいいんだ!?」
カレラ「愚か者め!そんな事も知らんのか!神のお力の根源は『信仰』!貴様ら愚民のニーヴェルン様を敬い尊ぶ心こそニーヴェルン様の血肉となるのだ。貴様らの信仰が少ないせいでこのようなお姿に…」
ニーヴェルン『カレラ君…その辺で…元はといえば自業自得だし…』
ロイ「じゃあ、あんたを神として祈ったりとか…なんかそんな感じの人が増えれば復活できるのか?」
ニーヴェルン『そゆこと!…ハァハァ…悪いけどお願いできるかな?』
ロイ「あぁ!任せてくれ!俺が王に話し、国民を動かしてもらう!」
カレラ「我もこの者に力を貸します!しばしの辛抱でございます!」
二人の言葉が心強い。力を与えたのが二人で良かった。
ニーヴェルン『ありがとう…じゃあ宜しくね…。ロイ君、私をあそこに連れてって…あの木陰…』
ロイ君は私を抱え、カレラ君が育てた木の梺で私を降ろした。
ニーヴェルン『ありがとう、カレラ君最後にお願いがあります…ここにもう少し木を生やして影を作って…』
カレラ「はっ!何者の目にも入らぬ様、此処に樹海を作りましょう!」
ニーヴェルン『いや…そこまでしなくていいから…寝てる間に日焼けしたくないだけだから…』
今心の中でロイ君が「ぶれないなこの人は…」と言った気がする。どうゆう意味だろう。たぶん褒め言葉だと思う。
ニーヴェルン『二人とも…それじゃあ後は頼みます…』
ロイ「あ!まってくれ!最後に!"ウサミミ"ってどーゆー意味なんだ?!」
ニーヴェルン『それは…シ〇バニア…………"強くて勇敢な"と言う意味です(ニコッ)それでは皆さんお休みなさい!』
ロイ「オイ!何言いかけた!絶対嘘だろそれ!本当のぃ………」
ロイ君が言い終わる前に私の体はクリスタルに覆われ、眠りにつく…二人とも、信じてるよ…。
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クリスタルに覆われ眠る女神を眺める。最後の言葉が気になるがこうなっては言葉の真意は解らない。何だか釈然としないがこの人が危機的状況なのは明らかだ。
カレラ「貴様そこでいつまでもぼーっとしているつもりだ?そんな事ではニーヴェルン様をお救いする事は出来んぞ!」
そう言いながら精霊さんはせっせと言いつけ通りに木を生やしている。
ロイ「わかってます。まずは王に合い、今日の事を話します。」
戦いの最中突然現れた銀髪の女神、その女神が起こした奇跡の数々、精霊、勇者、そして眠りにつく女神。上手く話せる自信は無いが、この状況を見れば賢明な王ならば信じるだろう。彼女が目覚める為に民からの信仰が必要なら国中で祈りを捧げよう。あの時あなたに救われた命、ならば今度は俺があなたを救う番だ。そう固く決意し歩みを進める。
ロイ「それに"ウサミミ"の意味も問い詰めなきゃならないしな!」
王都は大混乱の最中だった。石畳の道は植物の芽吹きでせり上がり、民家の軒並みは緑に覆われている。それまで泥水が流れていた川には清流がせせらぎ、食べれる実を実らせた木がそこら中で生えている。反面木々のせいで倒壊した建物もチラホラ、これは再建が大変そうだ。しかしこれからの生活が豊かになるのは間違いない。
グロウ「ロイ!生きてたのか!」
ロイ「グロウ!」
グロウ「良かった!あの時、銀髪のアメストリア人が何かの魔法を使って…気付いたら家にいたんだ。お前はいないし、そして1日たったらこんな状況だ。ワケが解らななぁ、何が起こってんだ?」
そう言えば最初に俺の家で女神と話した時は夜だったのに精霊カレラを呼んだ場所に瞬間移動した時は日が昇っていた。あまりの事に全然気付かなかったがあの人はさらっと時間をも操作したらしい。全く何から何まで規格外な人だ…
ロイ「話すと長い!今この現状もあの人の事も…全ては王の前で話すつもりだ!お前も来てくれるか?グロウ」
グロウ「あ…あぁ。わかった。だがその前にマーロンに会ってやってくれ。お前の事が心配で夜通し泣いてたんだ。」
ロイ「心配をかけたな…じゃあマーロンも呼んで来てくれ、3人で王の下へ行こう」
こうして俺たちはマーロンと合流し、3人でクローゼル王に謁見する事となった。
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クローゼル王「よくぞ戻ったロイよ!して、この状況を説明できると聞いたがどうゆう事なのだ?」
ロイ「はい王よ、事の始まりは昨日、スカラル軍に奇襲をかけようと…」
俺は昨日から見聞きした全てを話した。まぁ女神の人物像の事は伏せたが…話すとまたこじれそうだからな。
………
クローゼル王「ふーむ…にわかに信じがたい話だ。しかしこの神の御技を目の当たりにしては信じざるを得まい。して、そのお眠りになられている女神様は今はどこに?」
ロイ「王都郊外の田園地帯です。後でご案内しましょう。今頃森になっていそうですが…」
クローゼル王「是非ともお目にかかりたい、この国の代表として直接感謝の意を示したいものじゃ。しかし、女神様が目覚めるには祈りが必要とな?」
ロイ「はい、女神ニーヴェルンは我らを救うため大いなる力を使い果たし今危険な状態です。我らクローゼル国民は彼女に救われた、しかし逆に彼女を救えるのもクローゼル国民なのです!」
クローゼル王「うむ!一刻も早くこの事を国中に伝え祈りを捧げるよう令を出そう!神殿の建設も視野に入れねばな。しかし、問題はまだ解決しておらん。」
ロイ「スカラルの事ですね。」
クローゼル王「左様。依然かの国との問題は解決しておらん。それどころかわが国の国土を狙い今まで以上に血眼になって押し寄せてくるだろう。」
ロイ「俺が直接スカラル王と話をしようと思っています。多少強引な形になってしまうでしょうが女神より授かった力がある今の俺なら警備を何とか突破できる、と思います。。。それに精霊カレラにも協力して貰ってスカラルの国土を潤せば問題は解決するはずです。」
クローゼル王「ならん!そんな大罪を犯してはわが国としてそなたを擁護できん!仮に軍を除隊した身とは言えそなたはクローゼル国民。同盟国であるスカラル国内でクローゼル国民が罪を犯したとなれば同盟が危うくなり、全面戦争にもなりかねん!」
ロイ「しかし!すでに今スカラルと実質戦争状態です!スカラルの侵略を受け入れ無いために我ら反乱軍は今日まで戦ってきた!死んでいった同士の為に、一刻も早くこの戦争を終わらせる義務が俺にはある。全てがうまくいけば!上手く説得できれば戦争にはならないはずです!それに…最後、俺はスカラルで処罰を受ける覚悟があります。」
グロウ「ロイ…」
マーロン「そんな…」
クローゼル王「ならん!余が方策を考える!それまで決して…」
「王よ!謁見中失礼します!至急お耳に入れたい事が!」
突然、側近が青ざめた表情で玉座の間の扉を開けた。そしてバタバタと慌てた様子で王に駆け寄り耳打ちをする。
クローゼル王「何という事じゃ!ロイよ…問題はスカラルだけでは無くなった。今このクローゼルに向け魔物の大群が大挙して向かっているようじゃ!」
突然の報告に耳を疑う。魔物の大群?なぜこのタイミングで?くそっ!なんでこんなに悪いタイミングが重なるんだ!
(気付かれたな)
突然背負った聖晶剣モラプリムスが俺に語りかけた。
ロイ「うぉ!ビックリした!その声…精霊さんか?」
カレラ(精霊カレラ様だ!様をつけろ!この剣は我の一部だぞ!これくらいの事でいちいち驚くな!)
ロイ「はいはい、で気付かれたって何をです?」
カレラ(む…やはり貴様気に入らん…これで女神様がお選びになられた勇者でなければ…ブツブツ…。まぁいい。魔物の事だ。)
ロイ「王の話を聞いていたんですね。で、その口振りだと何かご存知って事ですね?」
カレラ(当然だ。忌々しい魔物どもはこの地を目指して来るだろう事はわかっていた。この地が突然命で溢れたのだからな。奴らは輪廻から外れた汚れた魂の集合体。意志無くただただ命を憎み、妬み、欲している哀れな者どもよ。奴らに食われたら最後、その魂は輪廻の理に還れず魔物の腹の中で永遠に苦しむ事となる。)
ロイ「輪廻の理とは?」
カレラ(死した魂はマナとなり大地へ還る。マナは新たな命を育み、そして生まれた命はまた次の命の為に死ぬ。これこそ輪廻の理よ。生まれ変わる事と勘違いする者も多いが、この巡る営みこそ命の繋がり、世界の真理だ。)
ロイ「なるほど…それが盟約の一つ"輪廻の理を世界に取り戻す"って事なのか…」
カレラ(左様だ。…それと貴様に言い忘れていたが我の声は貴様にしか聞こえておらん。)
ロイ「?どうしたんです急に?…何故そのような事を?」
カレラ(端から見れば、貴様は突然剣に向かってブツブツ喋りはじめた危ない奴に見えるって事だ。)
その言葉で気付いた。王やグロウ、家臣の人達が俺の事を不振な眼差しで俺を見ている。マーロンに至っては今にも泣き出しそうだ。
グロウ「ロイ、お前ちょっと疲れてんだよ…少し休め…」
クローゼル王「そ…そのようだな…ひとまず御主は休息を取るが良い。魔物の事は我らで軍を編成するとしよう。必ず御主の力も必要となるからの。」
ロイ「いや…ちが…精霊カレラがこの剣を通して話しかけたから…」
カレラ(カッカッカッw滑稽だな矮小な者よw)
ロイ「ちょっと!フォローして下さいよ!」
カレラ(すまんが無理だなw何せ我の声はお前にしか聞こえんから弁明出来んわ!いい気味よwカッカッカッw)
グロウ「ロイ…わかったから向こうで休もう…な?」
ロイ「いや…だからこの剣がな…」
有無を言わさずグロウが俺の腕を掴み引きずって行く…。カレラの野郎…覚えてろよ…。




