第35話 星の残響と影の襲来
第25話
星の残響と影の襲来
ユイの額に輝く記憶の冠冕が、淡く脈打っていた。
星都セレファイスの光が静かに収束し、周囲のクリスタル塔が穏やかな余韻を奏でる中、彼女はゆっくりと息を吐いた。
「これで……一つ、終わったの?」
だが、その言葉が空に溶ける前に、空間が軋んだ。
低く、重い振動。まるで宇宙そのものが息を潜め、息苦しくなるような気配。
「主殿……何か来ます!」
スイミーが肩から飛び上がり、くるくる回転しながら警戒を促す。
ネルが目を細め、手を差し出す。
「これは……『影の残響』。セレファイスの光が引き寄せた、闇の反動よ!」
空が裂けた。
黒い亀裂から、ゆっくりと姿を現したのは、黒紫の獣甲に覆われた巨躯。
爬虫類のような冷たい目が、ユイを射抜く。
6枚の呪翼が広がり、空間を歪める。
「ふむ……記憶の冠冕を戴いたか、小娘よ。」
敬語を交え、詩的な響きで言葉を紡ぐその声は、冷酷で理性的。
獄獣王バルザ=クライムス。
夢境整序機関の頂点に立つ、宇宙三大悪の筆頭。
その手には、終獄剣グラン=デスティアが握られ、剣先から災厄の気配が漏れ出す。
「バルザ……!」
3姉妹のまゆが息を飲み、みくとかなが身構える。
浮殿 今日子が、銀髪を揺らして前に出る。
「ここは……私の領域だ。退け、獄獣王。」
だが、バルザは静かに笑う。
「領域など、無意味。汝らの光は、既に我が影に呑まれる定め。」
剣を一閃。
「災厄領域、展開。」
瞬間、星都全体が黒く染まった。
光の結晶が砕け散り、ユイの視界が歪む。
「うわっ……これは……!」
ユイの足元が沈み、記憶の冠冕が熱く疼く。
周囲の仲間たちが、次々と影に飲み込まれていく幻覚が襲う。
ネルが叫ぶ声が遠く聞こえる。
「ユイ! これは精神攻撃……耐えて!」
スイミーが慌ててポケットを探る。
「今度こそ……雷煌落拳! ……え、待って、味噌スプーンじゃない!?」
バルザの目が細まる。
「愚かな……我が能力、虚無叫喚。」
低く響く叫びが、ユイの心を抉る。
過去の記憶が崩れ落ち、母の声、ルイの笑顔、すべてが虚無に溶けていくような絶望。
「くっ……耐えられない……!」
ユイが膝をつく瞬間、冠冕が光を放つ。
「まだ……終わらない!」
だが、バルザの剣が迫る。
「終わりだ、小娘。冠冕をよこせ。」
緊張が頂点に達し、ユイの叫びが響く。
「いや……私は、夢を諦めない!」
つづく




