第30話 記憶の真価――夢境整序機関・第五位との対峙
――風が、静かに語りかけていた。
激闘の余韻が漂う星都セレファイス。その空は、まるで新たな息吹を迎えたかのように澄みきっていた。
ユイは空を見上げながら、そっと胸に手を当てる。
「記憶は……希望か、それとも災いか――」
彼女の手の中には、淡く光る“記憶の鍵”があった。
そしてその隣で、ノエルもまた瞳を閉じ、自分の中の記憶と静かに向き合っていた。
「記憶を抱いて生きること……それは、痛みでもあり、強さでもあるのね」
その時、セレファイスの中心に響いた重低音――
空間がねじれ、闇を纏う大きな影がゆらりと姿を現した。
「来た……!」
その男は、黒衣に包まれ、仮面すら必要としない異様な存在感を放っていた。
「我は“メモリア=グレイヴ”。夢境整序機関の第五位にして、記憶の審判者。」
彼の周囲には、消えかけた記憶の残滓が幾重にも漂っていた。
触れた者の思考に干渉し、過去と未来を曖昧にする異能の気配が漂う。
「君たちは、記憶を尊ぶ……だが記憶は、時に呪いとなり、存在を腐食させる」
ユイは前に出た。
「記憶があるから、私たちは進める。忘れたくないから、守りたいから――私は戦う!」
風煌翔陣・真形〈記憶連環陣〉が再び展開され、仲間たちが背を並べる。
白鳥秀樹(水瓶座)が叫ぶ。
「ならば俺たちは、“記憶を力に変える”戦士ってことだな!」
如月龍一(蠍座)が槍を構える。
「過去の痛みも、未来の不安も、斬り払って前に進むだけだ!」
稲森晴佳(蟹座)が盾を掲げる。
「記憶は守るものよ、誰にも壊させない!」
4人の連携が再び風と交差し、戦いの火蓋が切られる。
だが――
「……“あの方”は、すでに動き出している。」
メモリア=グレイヴの声が、どこか怯えるように震えていた。
「“獄獣王バルザ=クライムス”が……次なる舞台へ降臨なされる」
ユイの背筋に、凍るような気配が走る。
“バルザ=クライムス”――
あの蛇ノ目悪人兄弟を従える、宇宙最凶の存在。
伝説にすら記録されない災厄の王。
その名が現実味を帯びた瞬間、セレファイスの空に、黒き流星が一閃した――
「これは……ただ事じゃない……!」
「ユイ……私、何か……見えてきた。次の九聖龍……“風”の次は、“夢”かもしれない」
ノエルが目を見開いた瞬間、遠く星の地平から、まばゆい夢の光がゆっくりと立ち昇る。
「行こう、みんな。次の地へ……夢の九聖龍を探しに!」
ユイたちは決意と共に、風の渦を再び呼び起こし、旅立った。
物語は次の章へ――
(つづく)




