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狼王女は変態猛獣調教師に盲愛される〜大嫌いな鞭を持ってにじり寄らないで頂きたい〜  作者: 関谷 れい


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45/45

44、狼王女の旦那様は、変態猛獣調教師

「姉様、本当に行っちゃうの?」

妹が涙目で上目遣いに見上げてくる。

「うん。子供が生まれたら、赤ちゃん見に遊びに来るからね!」

妹は懐妊したと聞いたが、まだお腹は目立ってはいない。


弟はエーベルにブツブツと文句を言い続け、それをエーベルは笑顔でスルーしていた。

エーベル曰く、「弟殿下が私に何かおっしゃる度に、ヴァーリア様の愛が私にあるのだと感じて安心致します」とのこと。エーベルらしく、何とも前向きな考え方だ。



私達は結婚を期に、北の森の近くへ居を移すことにした。

エーベルはこの国の筆頭猛獣調教師であるが、中央にはその師匠であるドゥランテもいる。


であれば、能力の高い人材が二人も中央に集中していては人材育成の観点からすると勿体無い、ということで、身動きの取りやすい私達が移動することに決めた。


南の森や、西の森にもエーベルの兄弟子達が向かうことになっている。



北の森は、およそ一年ぶりだと言うのにもっと長い時間が経過している気がする。


まぁ、その間に妹の結婚式やら、エーベルとの婚約からの結婚やら、ドラゴンとの決闘やら、東国への代表代行やら、なんか色々ありすぎたから北の森での出来事が遥か昔に感じてしまうのも仕方ないだろう。



最小限の護衛を連れて私は狼型、エーベルはペガスス、護衛は馬で駆ければ、大所帯だった調査隊のわずか半分という日数で北の森の街まで到着してしまった。


私が街の門の前に立つと、目敏く見つけた子供達がわらわらと近寄ってくる。


「……ヴァーリア様だ!!」

「本当だ!!ヴァーリア殿下!おかえりなさい!!」

「皆元気だった~?これからよろしくね~」

「ヴァーリア様、これからこっちに住むって本当?」

「うん、近くに住むよ~」


私達の新居は、あの元グデーラ伯爵家の屋敷だ。


エーベルは、私の過去を鑑みて「あそこはやめましょう」と言ってくれたが、財産一式没収した後、あの建物やその周りの猛獣用の施設の扱いに持て余していて放置気味になっているらしいのだから、これ以上エーベルにとって最適な場所はないということで私がゴリ押しした。


そもそも私が捕虜になっていたのは地下だから、建物自体を見ても嫌な思い出はない。

だから、構造は大きな手を入れなくても、全面的に改装することでエーベルが折れてくれた。



エーベルは貴族の称号を父より与えられ、新たに北の森周辺の領主と猛獣調教師の育成と、元グデーラ伯爵の代わりに猛獣を売買する仕事がメインに切り替わっていく。


私はエーベルを補佐しつつ、北の森の頂点に君臨すべく森の攻略に力を入れていく予定だ。


私が北の森に出入りすれば、はぐれものの猛獣や放置された猛獣の保護もずっとしやすくなるだろうし。


当初の人生設計とは大幅にずれたけれども、国民や家族の役に立てるのであれば、問題はない。



子供達にもみくちゃにされながら、一通り街のお偉いさんに挨拶をすませると私達は早速新居へ向かった。


「エーベル、この家凄いよ!」


前回来た時には真っ直ぐ部屋しか案内されなかったから、心おきなく中庭や周辺の林をひゃっほー!と駆け回る。


改修したとは聞いたが、狼型の私でも扱いやすいように何でも工夫して作られていた。

きちんと足の洗い場や、専用の出入口まである。

舗装された道の他は芝生で覆われており、足の踏み心地が最高だった。

思わず背中を擦り付けるようにして転げ回り、喜びを表現。


うむうむ、気持ち良い!!



「ヴァーリア様がお気に召されたのなら良かったです」

私のテンションの高さに、エーベルはホッとしたような笑顔を見せる。

エーベルの新居でもあるのに、その様子はまるで私の保護者のよう。


うーん、エーベルって私とさほど年が離れてないのに昔からこういうところは大人対応なんだよな。

新居だよ?ウキウキワクワク♪とか少しはしても良いと思うんだけど。



使用人達への挨拶を終えると私ははしゃぎまわって室内を物色し、満足したところで夕飯を頂く。


うんうん、美味しいご飯を作ってくれる料理人に感謝だ。


私はエーベルからキッチンに立ち入るべからずと宣告を受けてしまったので、これからもよろしく頼むよ。



私はこれから長く付き合うことになる人達や屋敷、そして(エーベル)……全てを大事にしていきたいと、改めて思った。



「エーベルエーベル!ほら見て、ベッドが凄く広くなったんだよ~」


使用人達が引き上げ、二人きりになると直ぐに日没を迎えた。人型なので、私は遠慮なくベッドにダイブする。


うーん、シーツも気持ち良いっ!



「ところでヴァーリア様……そろそろ、あの時期がきたのではございませんか?」

エーベルは先程までのそつのない態度はどこへやら、鼻の下を伸ばしてウキウキワクワク♪とばかりに手をワキワキと動かした。


うわー……デジャヴ。


てか、やっぱりエーベルにはわかっちゃうんだなぁ。


実は街に着いた頃から、馴染みのある風邪症状……にも似た発情が始まった。

ちょっとしんどかったけど、街の人や護衛に悟られたくなくていつも以上に元気なフリをしたのにな。



「ヴァーリア様、私達は名実共に夫婦となりましたね」

「うん、そーだねエーベル。これからもよろしくね」

「はい、こちらこそ未来永劫生まれ変わって来世でもよろしくお願い致します。……つまり、とうとうヴァーリア様に私の欲望を延々と突っ込み私の子種で種付けしても問題ないということですね」

「言い方はどうかと思うけど、問題はないね」


相変わらずの変態っぷりに和む。

「エーベル、大好き。じゃあ……しよ?」

「ヴァーリア様……っっ!!」


私達は新婚らしく、朝まで仲良く睦み合った。




***




妹の赤ちゃんを見に、エーベルと里帰りをしている最中に立ち寄った街にて。


まだ夕方だったので、懐かしく思いながら私は人型でエーベルと宿屋へ向かっていた。

そして、その芝居小屋の前を通った時、私はギョッとして足を止める。


そこは、かつて両親の出会いをラブロマンスとして大幅に修正し上演していた芝居小屋だった。


「……エーベル、エーベル」

「どういたしましたか、ヴァーリア様」

「あのさ、あの演目ってどう思う?」


そこには、《狼王女と猛獣調教師~身分差を超えた、一途な真実の愛~》とある。


いつぞやに声を掛けてくれた小屋の出入口にいたおじさんが、足を止めた私達に再び声を掛けてくれた。



「お、お二人さん、この演目が気になったのかい?これはね、今中央の芝居小屋で流行ってる、ヴァーリア殿下夫妻をモデルにした人気の脚本家が書いた新しい話なんだよ!良かったら見ていってよ!」


私達は顔を見合せた。


「では、折角なので見て行きましょうか」

「こ、これを……!?」

エーベルは笑顔でチケットを買い、私は顔をひきつらせながら、それでも好奇心に負けて芝居小屋に入った。


私達がモデルの話……き、気になる……!!



しばらくして、芝居小屋から出たエーベルは「ヴァーリア様のもふもふ度が圧倒的に足りませんでしたね!出会いの場面しか狼型ではなかったではありませんか!」と不服そうだ。


いや、もっと突っ込みどころはありそうだが……?


私達の出会いは、中央の森で怪我をした狼型の私を颯爽と現れたエーベルが助けるところからスタートしたし、調査で花を見つけたのもエーベルになっていた。


父である国王からは平民という理由で婚約も結婚も承諾されないことになっていたし、ドラゴンとの決闘に何故か勝利したことになっていた。


だいぶだいぶ事実とは違っていたけれども、両親の時と同様、自分達の話だと思わなければ、ストーリーとしてはまぁまぁ楽しめたと言える。



「ヴァーリア様は如何でしたか?」

エーベルにそう促されたので、私は自分の中で一番の突っ込みどころを口にした。


「エーベルは猛獣調教師じゃないよね。変態(・・)猛獣調教師だよね」

「……異論はございません」

「ないんかい」


私達は笑い合って、唇を合わせるだけのキスをした。







──その後の文献に、ヴァーリア王女は幼い猛獣の保護活動の、エーベルハルトは猛獣調教師の第一人者としてそれぞれ記載されることとなったが……エーベルハルトの、狼王女へのストーカー行為ならびにその変態性が記載されることはなかったという──






【完】










いつもブクマ、ご評価、大変励みになっております。

また、誤字脱字も助かっております。


数ある作品の中から発掘&お読み頂き、ありがとうございました。


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