32、定期的にやってくるアレ
※R15描写あり、ご注意下さい※
作者はR15相当だと思っていますが、過度な表現と判断された場合は予告なしにこの章はカットします、よろしくお願い致します。
王城までの帰りの道程。
私達は、例の連日テント泊が続く辺りにいた。行きにエーベルの生首を見た場所である。懐かしい。
「そろそろじゃないですか?ヴァーリア様」
「うーん?そうかなぁ、まだそんな気はしないんだけど……」
しかし定期的とは言え、不意にあれはやってくる。
そう、発情期だ。
「おかしいですね、そろそろの筈なのですが……」
エーベルは今か今かと指をワキワキ動かしながら待機している。
一言で言うとキモい。
「テントなんて鍵も掛けられないし会話も漏れるから、タイミング的には最悪だよ」
「ええ、本当に最悪ですよね!!」
エーベルは鼻の穴を広げて咳払いした。
……本当に最悪だと思っているのか?
「けれども、ちょっと青姦みたいで興奮しませんか?」
「そっちが本音か」
エーベルをジト目で見る。
「ともかく、何かあったらそっちに行くから。おやすみエーベル」
「ええええっ!?まさか、心を通わせあった恋人同士が別々のテントで過ごすのですかっ!?」
「父様から釘刺されたでしょ?結婚するまでは部屋も別々だって」
「これは部屋じゃなくてテントです!」
私は無言でテントのファスナーを閉めた。
まぁ、何だかんだ言って私達のテントを二つ並べたのはエーベルだし、きっと言ってみただけでわかっている筈だ。
「何かあったらこっちに……そうか、夜這い……夜這いってことですね、ヴァーリア様……!」
……わかってる、よね!?
そして夜中。
大抵一度寝たら朝狼型になるまで起きない私が、喉の渇きで目が覚めた。
身体が熱い。だるい。頭がボーッとする。
ゾクゾクとした寒気にも似た痺れが身体中を巡り、エーベルが言っていた通りになってしまったことをちょっと悔しく思う。
もそり、と起きて、怠い身体を動かしエーベルの買ってくれた寝間着に袖を通した。
だぼっとしたその寝間着は可愛らしさやセクシーらしさやお洒落といった感じは欠片もないのだけれど、肌触りがとても気持ち良くて軽くて着ている感覚が苦手な私のお気に入りで大変重宝している。
私はファスナーを下ろし、向かいではなく左側に並んであるエーベルのテントを見ると、エーベルの首が今度は断頭台に寝かされたようにこちらを向いていた。
こわ。
まだ目を瞑っているのが幸いと言えば幸いである。
因みに前回二メートルに渡って撒かれていたまきびしは、今回は十メートル程に渡って撒かれている。
私の逃げ道は何処に行ったんだ。
「……エーベル、そっち行っていい?」
私が思っていたより掠れた声で寝ているエーベルに声を掛けると、クワッとその目が見開かれた。
ホラーだ。
「……ヴァーリア様……!夜這い!夜這いですね、どうぞ!!」
エーベルはそれだけ言って、しゅばっと自分のテントの中へ首を引っ込めファスナーを勢い良くシャアッと全開にする。
私は夜這いの意味を考え首を捻りながら、「お邪魔しまーす」と言ってエーベルのテントの中に入った。
二人がギリギリ入れるとはいえかなり狭いテントの中、エーベルが素っ裸で待ち構えている。
変態か?あ、変態だったな。
「やっぱり発情期きちゃった」
「お待ちしておりました!いつもお待ちしています!」
エーベルは胯間を屹立させながら、興奮したのかよく分からないことを言う。
「ああ、前回から長かった……!指折り数えてこの日をずっと心待ちにしておりました!」
私は無言で寝間着をばさっと脱ぐ。
場所が場所なだけに、誰にも何も察知されずにさっさと終わらせたい。
「ヴァーリア様……、ヴァーリア様……!」
私に訪れた発情を何度か発散させたエーベルは、もう私の気持ち良くなるところを熟知しているようだった。
だからエーベルは、やろうと思えば早々に私を発散させることが出来る筈なのだ。
なのに、毎回毎回毎回エーベルは私を喘がせるだけ喘がせて、極力発散させるのを少しでも遅らせようとする傾向にある。
一晩それをされてみよればわかるが、軽く地獄だ。まぁ、快楽地獄ではあるけれど。
「ああ、このまま突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたい突っ込みたいハプニングが起きて間違えて突っ込んでしまったとかいけるんじゃないだろうか……っっ!!」
いや無理あるだろ!!
結局、口を開く体力すら最終的に奪われた私は、そのまま気を失うように眠りについた。
***
次の日、発情は発散させて貰った筈なのに身体が怠くて動けない私を置いて、軍隊は先に出発した。
王女を置いて行くか!?普通!!
……とは思ったけれども、エーベルに笑顔で「私がついておりますから」と言われれば、今回の事件の功労者であり、かつ私を助けた張本人であり、かつ両親公認の恋人であり、かつ調教済みの猛獣達を見えないながらも侍らせていたらしいこの国随一の猛獣調教師に言われてしまえば、そこに異を唱える強者はいなかった訳で。
何人かの護衛的な人達を置いて、隊長は敬礼してから「じゃあごゆっくり~」とさっさと去って行った。
まぁ、隊長のことだから、ずっと私が軍隊に合わせて歩いていたものの、本当は自由に駆けたいことをわかっていたのだろう。
常歩で進む馬達であれば、多分一日遅れてもあっという間に追い付く。
ということで、お言葉に甘えて本日は午前中は惰眠を貪り、ベタつく身体を川でキレイキレイしてから軍隊を追いかけることにした。
そして、そんなこんなありながら、私達は無事に王城へと帰還したのだった。