27、縄張り争いと発散
※R15描写あり、ご注意下さい※
作者はR15相当だと思っていますが、過度な表現と判断された場合は予告なしにこの章はカットします、よろしくお願い致します。
「発情すれば直ぐにわかるから!」と言っていた母。
風邪だと思い込んで全然気付かなかったと伝えたら、腹を抱えて笑いそうだ……!!
と、少し現実逃避しまして。
「ヴァーリア様、大丈夫ですか?」
「う、ん……どうだろう……」
初めての事だから、正直良くわからない。
ひたすらエーベル頼みになって申し訳ないけど、何やら色々知っているらしいエーベルに任せるしかない。
「エーベルぅ……っ、お願い、も、辛……」
狼型の時より、息があがる。ベッドに寝かされた時シーツの感触だけで、ゾワゾワした感覚が全身を包む。けれども一番ゾクリとするのは、エーベルに見られる事と、触られる事だった。
「……先程、間違えてお薬を飲まずに済んで、良かったです……」
エーベルは目を細めながら、人型になった私の上に覆い被さる。ちょっと……ほんのちょっとだけ、怖い。
でも、鼻の下に残るさっきの鼻血の跡が、私を和ませた。
うん、真剣な顔をされると私の知らないイケメンに見えるけど……間違いない、この人はイケメンではなく私の良く知る変態だ。
「ヴァーリア様……始めさせて、頂きますね」
「ぅ、ん……」
ごくり、とお互いに唾を飲み込んだ気がした。
私も緊張しているけれども、エーベルもしているみたいで、私の顔に伸ばした指先が微かに震えている。
エーベルの掌が私の頬にそっと当てられたので、私は目を閉じてその掌にスリ、と顔を擦りつけてペロッと舐めた。
「ヴァーリア様っ……」
ん?
エーベルの声を聞いて、「あ、人間だったら舐めるんじゃなくてキスするのが普通か」と思い至ったが、その時視界にエーベルの顔がうつり込んだかと思えば、キスをされていた。
「……ん、ふぅ……」
人型のキスは、狼型より密着度が強い。
口を大きく開けて息を吸い込もうとしたら、エーベルの口に覆われてしまって困惑し、仕方なく鼻でふごふごと息をした。
「……!?」
すると直ぐにエーベルの舌が私の縄張りである口内に滑り込んできたので、私は舌で押し返そうとする。
ちょっと、エーベル入ってきすぎ。
しかし、私のそんな思いも伝わらなかった様で、一生懸命エーベルの舌を自分の口から排除しようとした私の舌に、エーベルの舌は絡み付いてきた。
……この、不届き者めぇ!指導!指導!!
私とエーベルの舌による、縄張り争いが勃発した。
「ん、んぅ……っっ!」
激しく舌を絡ませ、わざと引っ張って反作用を狙う。思った通りにエーベルの舌はするりと抜けて引っ込んだが、今度は左右から私の舌に絡み付こうとする。
……そうはさせるかぁ!!
唇から滴る唾液も気にせず、狙いをエーベルの舌ではなく歯列に定めて縄張りを拡大させた。エーベルが、ビクッとして一度口を私から離す。
ふっふっふっ……勝った。
「……ヴァーリア様が積極的過ぎて、嬉しいです」
ん?負けたのに嬉しいのか?
エーベルは口元の唾液を手の甲で拭いつつ、こちらを妖艶な眼差しで見ながら上半身裸になった。
目の前に現れた美しい筋肉に、思わず掌を当てる。エーベルってば、本当に成長したねぇ。
「……失礼致しますね」
エーベルはそう言って、私の身体に巻いたタオルを引き剥がした。
「ん……っ」
肌が冷たい空気に触れて、粟立つ。
それから一体、どれ程の時間エーベルに触れて貰っていたのだろうか。熱の発散の仕方がわからない私はなかなか終わりが見えない事に焦って、つい謝罪してしまう。
「……ごめ、エーベル……っっ、まだ、無理っぽ、い……」
私が眦から快楽による涙を流しながらそう伝えると、エーベルは喜んだ。
「謝らないで下さい。……ヴァーリア様にずっと触っていられるなんて、私にとってご褒美でしかありません」
仕事で疲れているだろうに、そんな素振りを全く見せる事なく奉仕してくれる姿に感謝しかない。
「なんなら、ずっと発情して頂ければと思ってしまいます」
……手ぇ抜いてないよね?
「しかしそろそろ、ヴァーリア様がお辛そうなので発散させなければなりませんね」
仕方ない、とでも言いたげなエーベル。……いやマジで手ぇ抜いてたとか!?
はぁ、はぁ、はぁ、と荒い息を整えるのに必死で、私は頷く事も文句を言う事もお礼を言う事も出来ない。
ただ、身体を動かそうとしたら、手だけ少し動いた。動いた手の甲が、熱い何かに当たる。「??」ビクンと動いたそれがエーベルの性器だと気付かず、何か生き物がいると思った私は、思わずむぎゅ、とそれを掴む。
「!!ヴァーリア様っ……!!」
……え?
エーベルの焦った声と、鼻をつく匂い。エーベルの放ったものは私の顔に命中した。
上半身を脱いだところは見たけど、エーベルが下を脱いだのには気付かなかった。いつの間にか私と同じく全裸になっている。早業だ。
「も、申し訳ありませんヴァーリア様っ……!!」
エーベルが慌てて、私の顔にべったりと貼り付いたそれを拭おうとタオルを手にする……が、その顔はニヤケきっていた。
愛する相手はマーキングしたいよね、わかる。
「ヴァーリア様は何故っ!!何故私の欲望をこうも容易く叶えてしまうのでしょうかっ!?私の自制心を試されているのですか!?」
おお、エーベルが壊れかけている。一刻も早く元の単なる変態に戻って貰わねば、私の貞操の危機だ。
発情初日から致してしまっては両親に合わせる顔がない。
一応私王女だから、エーベルの首がリアルに飛ぶかもしれないし。
「後三年待っててね」
「三年後にきっちり今の発言に責任取って頂きますからね!!」
「うん」
とりあえず落ち着け。
私が圧をかけてエーベルを見れば、エーベルはやっと大人しく私の顔を拭ってくれた。
「ありがと」
「ヴァーリア様?」
私は、エーベルの首に両手を回して、エーベルの膝の上に足を開いて座る。
エーベルの心臓が、ドクドクドクと、さっきよりも速くその鼓動を刻んでいて、笑みが漏れる。
「そっそんな……ヴァーリア様自ら私の上に跨って下さるなんて……!!都合が良すぎて恐ろしいっ!!」
「エーベル、やだ?やめる?」
「続けて下さい」
「ん」
素直になったエーベルに口付ける。
私もマーキングせねば。
「ヴァーリア様、ヴァーリア様……っっ、お慕い、しております……!!」
その後、私が一回発散するまでに、エーベルは三回発散したのだった。
うん、元気があってよろしい。