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第28話 取り調べ

「エスパニア陸軍中央調査部 シヴァ・ライヤー少尉です! アプレンデ崩壊事件の重要参考人、アキト・リブロを連行して参りました! 受け渡し願います!」


 鋼鉄の囚人護送用馬車から降りたシヴァ兄のはきはきとした声。

 僕は手首に縄をつけられたまま、シヴァ兄の後ろで黙っている。


「護送任務ご苦労。これより、アキト・リブロの身柄は検察庁が預かる。シヴァ・ライヤー少尉、後は任せたまえ」


 目の前にはきっちりと制服を纏った検察官が数名。

 その奥には、ゴツゴツとした巨大な建物。

 裁判前の容疑者や重要参考人を一時収容するための留置所だろう。


 エスパニアでは、罪を犯した者は軍が逮捕し、その後検察に引き渡され、取り調べを受けた上で法廷で裁かれる。

 軍人であるシヴァ兄に逮捕された僕は、検察に引き渡されたというわけだ。


 そして、あっという間に、灰色の石壁に囲まれた、薄暗い地下牢へと放り込まれた。

 手首にかけられた縄は解かれたが、代わりに両手両足に鉄枷をかけられた。

 鉄枷には人の顔3つ分はあるだろう大きな鉄球が鎖で結ばれ、簡単に身動きは取れないようになっている。


 目の前には3人の男。

 中央に立つのは、シヴァ兄と引き継ぎを行った検察官。

 あとの二人は彼の部下のようだ。


「アプレンデ崩壊事件、重要参考人アキト・リブロ。これより貴様の取り調べを行う」


 厳かにそう告げた検察官は、唐突にニヤリと歪な笑みを浮かべる。

 彼は、さもそれが当然であるかのように、金属製の極太棒を取り出した。

 同時に、部下の二人が僕の背後に回り、両腕ずつ水平に持ち上げる。

 あれ? 取り調べって、こんな感じだっけ?


「ふぐぁっ!」


 疑問を差し挟む暇も与えられず、検察官は僕の腹目掛けて金棒をフルスイングした。

 一瞬呼吸が止まる。

 間違いなく肋骨を何本か持っていかれた……


「どうした? 王国最高の魔術師殿がまさか一発で限界か? そんなはずないだろう?」


 検察官は続けざまに僕を打ち据える。

 二発、三発、四発……


「な…ん……で………」


 わけがわからない。

 検察庁は歴とした法の番人のはず。

 それがなぜ裁判で刑も確定していない人間に対して拷問じみた真似をしてくるんだ?

 いや、これはもはや拷問ですらない。

 拷問とは特定の情報を引き出すという目的のために、肉体的・精神的苦痛を与える行為のこと。

 奴は、僕に何一つ質問さえせぬまま、ただただ僕を打ち続ける。

 これは、ただの一方的な暴力だ……


「貴様が発言する必要などない。貴様が有罪であることは、貴様自身の証言によって既に確定しているのだからな」


 なんだって……?

 有罪が確定している…?

 しかも僕の証言で…?

 一体どういうこ


「ぐぅぅっ!」


 再びの衝撃に、思考が強制停止させられる。

 内臓にダメージを受けたのか、喉元から鉄臭いものがこみ上げてくる。

 堪えきれずに吐き出すと、真っ赤な液体が地下牢に散らばった。


「今更考える必要などないのだよ、アキト・リブロ。貴様は学術都市を崩壊させ15万以上の人間を殺した、王国始まって以来の大犯罪者だ。これはいわば正義の鉄槌。私は民衆の意志を代行しているに過ぎないのだよ」


 ……何がどうなってる?

 確かに僕は恨まれて然りの人間かもしれない。

 けれど、事件の真相究明のために発言する権利はあるはずだろう。

 絶対に何かがおかしい……


 検察官は何度も打ち据える。

 何度も、何度も、何度も。

 やがて、僕の意識は途切れた。

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