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女子大生の視点 1

小説タイトルを若干変更しました。わかりやすさ重視です。もしかしたらまた変えるかもしれませんが、できるだけこのまま行きたいです。

 マズイことになった。としか言いようがない。


 確か私はフランスの片田舎で”アイツ”を追っていたはずなのに……

 気づいた時には空に投げ出されていた。


 まさか「親方! 空から女の子が!」を自分がやることになるとは思ってもいなかった。

 しかも女の子の方。

 もちろん、飛行石なんて都合のいい代物は持っていない。

 何これただの絶対絶命じゃん。


 悲鳴をあげながら真っ逆さまに落ちていく私の視界に入ったのは、断崖絶壁に立つ一人の少年。

(まるで火サスのラストシーンみたいだな……)

 なんて暢気なことが一瞬頭をよぎった瞬間、ボケーっと突っ立ってるその少年に激突した。


 当然、そのまま二人とも錐揉み状に崖から落ちていった。

 少年の命の危険を感じた私は、着水前に崖を蹴って彼に体当たりを敢行し、着水時の衝撃を逃した。

 そこまでは良かった。

 ただ、問題が一つ。

 私は全く泳げなかった。


(しくじったーーー! やばいやばい泳げないし私どうしよう私しんじゃうしんじゃうこのままだとしんじゃう! 助けて誰かやばいやばいやば……)


 全脳細胞が魂の叫びを上げているのを感じながら、私は意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 目を覚ましたのは、木造りの家の簡素なベッドの上。

 火サス少年がこちらを見て何か言っている。

 彼に助けられた、のかな?

 私は部屋を見回し、そして見つけた。


(むねちかっ!!!)


 思わず飛び起きて抱きしめた。ベッドに立て掛けてあった愛刀。

 三日月宗近。

 白鞘に施された鮮やかな装飾。

 天下五剣の中でも最も美しいと言われる国宝級の一品。

 父から譲り受けた、命と同じくらい大切な大切な私の宝もの。


(よかった! よかったぁあああ!!! …………あれ?)


 宗近を抱きしめていた私は気付いた。


(あれ? 傷が……それに服も直ってる……

 えっ、

 もしかして火サス少年が? 

 でも傷はともかく服も直ってるということは、

 一度脱がせて針と糸でちくちくしないとね。

 ってことは…………ぁぁああああああああ! 

 見られた!!! 私の胸!!!)


「えっち! へんたい! むねみたなーーーー!!!!!」


 思い返すと、完全に取り乱していた。

 しかし次の瞬間、驚いたことに、彼は目の前でいきなり自分の服をビリビリと破り捨てたのだ。


(なんなのコイツ! 私を襲う気!? もしかしてやばい奴だった!?)


「びーくーる、すていくーる、おーけーおーけー」


 しかも英語!? 何こいつ英語が通じるの!?

 現状に全く理解が追いついてない私に追い討ちをかけるかのように、さらに驚愕の事態が起こった。

 彼が呪文のようなものを唱えた瞬間、左手の先から謎の空間が出現し、そこから真っ白な本を取り出したのだ。


 そして、本から出てきた光の筋が、一瞬で彼の服を修復した。


「うそ…………ありえない…………」

 

 開いた口が塞がらなかったが、我を取り戻した私はまくしたてた。


「What was it? ……さっきのは何? ……Qu’est-ce? ……它以前如何?」


 彼はさっき一瞬英語を話したが、母語ではなさそうだった。

 だからこそ私は知る限りの言語で彼に状況説明を求めたのだが、どれも通じていないようだった。


 しかし、彼は一部とはいえ英語を話したのだ。

 それに、彼の話す言葉はフランス語やイタリア語などのラテン系の響きに近かった。


 なら、フランス語が話せる私には理解できるかもしれない。


 そう考えた私は、言語学習の本を彼から引き出すべく、必死でジェスチャーをした。

 しかし、何故か彼からヨコシマな考えを察知したのでボディに一発入れておいた。

 これだから男ってやつは……


 何はともあれ、言語学習用の本を出してもらうことには成功した。

 それにしても先ほどの亜空間、観察すればするほど不思議だ。

 とても現代科学では説明がつかない。

 それに、彼の服を修復した光。

 あれも理解できない。

 3Dプリンター技術の応用だろうか。

 いや、今考えても仕方がない。

 それよりもまずは言葉だ。


 私はもらった本を次から次に読み進めた。

 このアルファベットの並び、それに文法は……スペイン語だ! 間違いない! 

 私は絵本や歴史書を読みながら、フランス語をベースに各言葉の意味を対応させていった。


 ちなみに、国連軍に入る際にフランス語と英語はネイティブレベルに引き上げている。

 国連内での公用語がその2カ国だったからだ。


 そして、所属がアジア人部隊だったため、日常会話と戦闘中に困らない程度の中国語も身につけた。

 従って、今の私は日米仏中の4カ国語を話せる。


 とはいえ国連内でこの語学力は平均レベル。

 国連には10代で20カ国語以上を身につけた若者や50ヶ国語以上を解するベテランも複数いるのだ。


 それでも、複数ヶ国語の基礎があれば、フランス語や英語の兄弟であるスペイン語を理解するのに時間はかからない。


(なるほど、この単語がこの意味だとすると、彼の名前は先ほど唱えていた呪文の中の……)


 最後の一冊をぱたんと閉じ、私は聞いた。


「……で、アキト・リブロ。あなたは一体何者なの?」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


 彼の出した料理は美味しかった。

 特にあのステーキ。

 他のものは普通に美味しいというレベルだったが、あのステーキだけは残念なことに私が今まで食べてきたどんな料理も凌駕していた。


 空に飛び出して以降、魔術だなんだと理解が追いつかない事態が続いていたが、食事をすることで少し冷静になれた気がする。


 今自分がどこにいるかは定かでないものの、スペイン語が通じるのだ。

 いくらファンタジーな設定があろうと、地球のどこかにいるのは間違いないだろう。

 そう軽い気持ちで聞いたのが間違いだった。


「グリセリア……?」

 

 そして、疑問だらけの私をノックアウトするには十分すぎる30個もの月。

 何よこれ別の惑星ってこと? 

 それじゃあ目の前にいるこの少年は地球外知的生命体? 

 宇宙人? 

 私もしかして未知との遭遇まっただ中?


 はぁ……とにかく早く地球に帰る術を探さないと…………なんといっても単位が危ない。


 いくら国連軍出向者は特待生扱いとはいえ、交換留学中のあのフランスの大学は意外と単位に厳しいのだ。

 万が一留年でもしようものなら母に殺される。


 それはともかく。

 根本的に。

 私は”アイツ”を追ってここまで来たのだ。

 私が国連軍特殊作戦部門に所属する以上、いいえ、私が私である以上、別の惑星といえど”アイツ”を見逃すわけにはいかない。


 十中八九、”アイツ”は、この少年-アキト・リブロ-の中にいるのだから。

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