第五十五話 お世話になります。的なお話
翌日となり目を覚ます。
目を覚ましたはいいが、なにか違和感を感じる。
身体の不調とかではなく環境の違いという感じ。
まあ、筋肉痛はしっかりあるが。
意識がはっきりしてきてからようやく違和感の正体に気づく。
今、昼前だ。
時計を見ても外を見ても今が朝ではなく昼であると証明しているんだ。
朝なら聞こえない喧騒も、昼となった今なら聞くことができる。
そしてどうやら寝坊したのは俺だけではなく、セフィア達もしているようで俺の両隣で時折寝言を呟きながら、気持ち良さそうに寝ている。
とはいえ、今日も稽古をするとは聞いていないもののこのまま寝て過ごすわけにもいかないので、二人を起こす。
「…んっ。」
「うぅん。レン…ト、ゆら…さないでよぉ。」
やばい。
なんか、すっげーエロい。
このままでは俺の欲望がやばいことになりそうなので、可及的速やかに起こさねば。
◇
どうにか俺の欲望が起きる前に二人を起こすことに成功する。
流石に昨日の稽古がキツかったようで二人とも筋肉痛だそうだ。
しかし、既にお昼時になってしまっており、朝食…というより、昼食をどうすべきか、と考えた時部屋のドアがノックされた。
「お兄さん、セフィアさん、リリンさん。起きてますか?お昼ご飯を持ってきたんですけど。」
「へ?」
どういうことだ?
俺は昨日も今朝も昼食を頼んだりしていないぞ。
もしかしてと思いセフィア達を見るも二人とも心当たりがないようで、首を横に振っている。
とりあえずそのことをルリエちゃんに伝える。
「えっと、頼んだ覚えないんだけど。」
「これはリィナさんから、恐らく三人は疲れで昼頃まで寝ているだろうから、頃合いを見計らって三人に昼食を持っていってくれ。ついでに今日の稽古は休みで明日から再開するとつたえてくれ…って言われて。」
なんかルリエちゃんが無駄に上手い声真似を披露してくれた。
「そういうことなら。今ドアを開けるからちょっと待ってて…
ビタン!
「いったー!」
「ちょっ、大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫。ちょっと足引っ掛けただけだから。」
筋肉痛で上手く動けず足を引っ掛けて転んでしまった。
それでもなんとかドアまで行きドアを開ける。
「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫。気にしないで。」
安心させる為に声を掛けつつ、昼食を受け取ろうとして…受け取れなかった。
というか、渡してくれなかった。
「三人とも筋肉痛が辛いでしょうから、部屋の中まで運びますよ。」
「え、あぁ、ありがとう。」
とりあえず礼を言ってルリエちゃんを部屋に迎え入れる。
そうして昼食を運び終えたのだが、ルリエちゃんは部屋を出る気配が全くない。
「えっと、仕事はいいの?」
「大丈夫です。お兄さん達の身の回りの世話もお仕事の内ですから。なので、して欲しいことがあれば遠慮なく言ってください。あ、食べ辛いでしょうから食べさせてあげましょうか?」
「け、結構です。」
(遠慮しなくていいのに。)
◇
結局、この日はルリエちゃんにお世話になりっぱなしだった。
ずっと側にというわけにはいかなかったが、防具を脱がしてくれたり、服を洗ってくれたり、身体を拭こうとしてくれたり。
流石に大事な所は死守したが。
そんな感じで一日を過ごした。




