③俺TUEEEマン/愛識真実
俺の名前は、愛識真実。
20歳。男。日本人だ。
つっても、今はもう日本にゃいねーけど。
職業は、何でも屋。
料理洗濯家事オヤジ。表社会のありとあらゆるお手伝いから、人には言えない裏社会の仕事まで。
興が載れば何でも請け負う便利屋稼業。
自分で云うのもなんだが、けっこううまくやってきたと思う。
わからんけど、たぶん。
地元じゃ最強だった俺は高校生のとき、ひょんなことからヤクザとトラブルを起こして、気付けば組織ぐるみで追われる立場になっていた。
来る日も来る日も、けんか、ケンカ、喧嘩。
めんどくさくなった俺は敵の本丸に乗り込み、組織を事実上壊滅させることに成功。
そして警察に捕縛られ、そのまま少年院送り。
出所したあとは、ヤクザからの“返し”を心配した俺のじいちゃんが中国へと俺を密航させ、昔じいちゃんの世話になっていたっていう“チンさん”のもとへ………
おいそこ、チンチンとか言わない!
そんでチンチンとその娘/リンリンの世話にしばらくなっていたが、リンリンが中国マフィアに拐われちまって今度はそいつらと闘り合う羽目に。
なんやかんやでそいつらを壊滅させた俺は、なんだかんだとロシア、イギリス、インド、スペイン、イタリアと世界各地を転々と渡っていき、その都度厄介事に巻き込まれては暴れ廻り、また追われ……
そして最終的に現在、合衆国にいる。
◆◆◆
「朝だヨ、マコトっ!您好ッ!!謝謝ッッ!!!起きるよろシ♪」
チャイナドレスの中華娘/リンリンが枕元でフライパンをお玉でカンカンとけたましく叩きながら、俺の起床を激しく催促する。
二日酔いのせいで頭ん中がガンガンに膨張してて、今にも破裂しそうだ。
「か、勘弁してくれ…………」
俺は気だるい身体と今にも吐きそうな胃袋を抑えながら、しぶしぶ起き上がる。
アメリカといったら、でっかい家だ。
おれたちは大所帯なので、それなりの広さの物件を借りて生活を送っている。
「Goodmorning、マコト!昨日の夜はすごく激しかったね、HAHAHA!」
金髪巨乳カウガールのアメリカ女、ジュリアが陽気に声をかけてくる。
「Хорошо、マコト!昨日の夜はすごく優しかったですね、うふふ」
銀髪淑女サイキッカーのロシア女、アナスタシアが知的に声をかけてくる。
そんな調子で、一階のリビングに降りると世界各国の美女たちが次から次へと挨拶を交わしてくれる。
総勢27名。今まで行く先々でトラブった結果、なんやかんで俺に着いてくることになった多彩な美女たち。
昨日はこのメンバーで大宴会を催したあと、なんやかんでお楽しみに発展。
酒の呑みすぎで全然覚えてねーけど、おっぱい揉んでえっちして、大体いつもそんな感じ。
要は酒池肉林ってヤツだ。
羨ましいだろ?ぐふふ
◆◆◆
『そんなワケで仕事だ、“Mr.武士道”』
携帯端末の画面にサングラスをかけた黒服の男が映し出される。
“Mr.武士道”とは、業界で通っている俺の二つ名だ。
ヤツは米国防総省のエージェント。
今日の依頼も合衆国の秩序に関わる案件のようだ。
『かつてキミが対峙したネオハルマゲドン事件の首謀者・“戦争者”が率いた反米国組織ギャルホルンの残党がひとつ/デストロイヤーズが我が国の機密情報が入ったUSBメモリーを奪取した。このままでは大気圏に点在する衛星兵器のコントロールを奴等に奪われ、世界は戦火に包まれてしまうだろう。それを阻止するために今回、キミにはこの機密情報が入ったUSBメモリーの奪還を依頼したい』
相変わらず非常識のオンパレード。
俺の便利屋稼業も気付けば、こんな次元に達していた。
一般社会に秘匿された世界の危機。
国際社会の陰謀渦巻く社会の裏側。その深奥にして頂点。
つか毎度毎度人類の危機って、どゆこと?
『ちなみにいつものことだが、この情報を聞いた時点でキミに拒否権はない。任務を果たせなければキミたちは抹消される』
帰りたい。家にいるけど帰りたい。
相変わらず云ってることがメチャクチャだ!
いつぞやか中央情報局、米国陸軍特殊部隊、そして米国防総省を相手取ったときのことをよっぽど怒っているに違いない。fuck!
「ま、お仕事ですシ仕方ないアルね!マコトッ、張り切りますネっ!!」
リンリンはいつもこんな感じ。
かくして、おれたちはデストロイヤーズの本拠地へ向かうこととなった。
◆◆◆
デストロイヤーズの本拠地は、南米の某島国に設立された米軍の元核兵器廃棄所。
おれたちはそこに最新鋭のステルス機で連れていかれ、上空から降下作戦を展開。そのまま海上を泳いで渡り、敵地へと侵入する。
「そんじゃま、いっちょ派手に!」
そして、おれたちは無双する。
チャイナ娘・リンリンは御得意の中国武術でヌンチャクを振り回し、カウガール・ジュリアは暴れ牛のように銃を乱射。サイキッカー・アナスタシアは念動力で敵を吹き飛ばす。
その他、俺の酒池肉林軍団はそれぞれ固有の戦闘能力を駆使して次々とデストロイヤーズの雑兵たちを粉砕していく。
これまでの経験を経て、俺たちは並の軍隊では太刀打ちできないほどの戦闘能力を獲得していた。
「――クククっ、貴様が噂の“Mr.武士道”か」
そんな俺たちの前に姿を現すのは、デストロイヤー四天王。
元軍人のサイボーグ。高火力超連射多武装大好き“破壊のゴッドハデス”。
遺伝子技術により様々な動植物の細胞を組み込まれ、変異した合成獣人間“混沌のヘルダハーカ”。
東西南北ありとあらゆる魔術の使い手で、ついには外宇宙との更信をおっ始めた“暗黒のナイアトクトゥルフ”。
そして四天王の紅一点にして、天界より人間界に迷い込んだ天使・“熾天のネフィリム”。
「そこをどけぇぇぇぇエエーーーーーーーっ!!」
俺は構わず一撃必殺。
天上天下唯我独尊、絶対無敵。俺TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEっ!!
◆◆◆
「ひぃん、勘弁してッッ!?」
あっという間にデストロイヤーズの首領を捕縛。
テロ組織残党デストロイヤーズは壊滅した。
「愛識真実!貴方はとても素敵セクシー。好きっ!!」
ついでに熾天のネフィリムが仲間になった。
「そーいえば依頼って、USBメモリーの奪還じゃなかったかしら?」
サイキックロシア美女・アナスタシアは首をかしげる。
まぁ、大元をぶっ潰したんだから結果オーライってことでいいだろ。
◆◆◆
そして、今日もおれたちは祝杯をあげる。
大麻やマリファナをドシドシ決めて、ガンガン酒を呷り、バンバン美女たちを抱きまくる。
「ああんっ、もうグチャグチャにしてっ♡」
今日はネフィリムの花散らし。
俺も数多の女と交われど、天使と行為に及ぶのはさすがに初めて。
つっても、その容姿は人と変わりはしないからあんまし大差はないけども。
別に天使つっても、ベッドの上ではみんな女の子に違いねぇ。
◆◆◆
そんなこんなでパーティーも終わり。
みんなが寝静まり夜が明けようとする中、俺はひとり外に出る。
一服。銘柄はピース。日本万歳。
俺は煙草を嗜みながら、一緒に朝の新鮮で緑々しい空気を腹に入れる。
――思えば遠くに来たもんだ。
日本を離れて、あっちこっちの国を渡って、ビッグでデンジャラスなアメリカへ。
自由な国にも関わらず、俺らは合衆国政府に監視されてて正直縛りがキツいけど、そんでもなんやかんやで上手くやれている気がする。
人並みとか普通とか平凡とか、そーゆー感覚から離れてるのは自覚してるけど。
それでも人間。自分の住む世界で上手くやれていると思えることが出来るなら、どこに行ったって幸せを噛み締めることが出来るんじゃないだろうか?
自由とは、自分である由縁を定めること
――俺はきっと、誰よりも自由なんだ。
だから俺は、自分の死がいつ訪れたとしても後悔はしない。
何秒先だろうが、100年先だろうが、決して俺は後悔しない。
――自由には代償が伴う。
この世のすべてを思いのままに動かすことが自由だなんて宣まう奴等もいたりはするが、それは支配だ。そもそも、そんなの神様だって不可能だろう。
“ゲーム理論”って言葉がある。
社会や自然界における複数主体が関わる意思決定や行動の相互性を数学的なモデルを用いて研究する学問らしいが、要はこの世は群像劇だ。
個人個人ひとつひとつの思惑と行動が集束することで、総体としての結果に至る。
誰かの幸福は、誰かの不幸だ。
そして、人生ってのは天分によって必ずその配分に差異がある。
それを自分でどうにかコントロールしようなんて、土台無理な話だ。
だからこそ人間は与えられた“幸福と不幸”の中で、ただただ我武者羅に自分でやれるだけのことを精一杯果たすんだ。
――それがきっと、運命を受け入れるってことだから。
凄まじい勢いで、すべての記憶が駆け巡る。
生まれたときのこと。
小中高と上がっていき、悪友たちと馬鹿やって、ついにはヤクザと喧嘩しちまって。
日本に居られなくなって、
はじめての彼女泣かせちまって――。
中国に渡ってチンチンとリンリンに出逢って、中国マフィアと闘り合って。
ロシアに逃げたら超能力研究所でアナスタシアと出逢って、ロシア軍と闘って。
そっからあっちゃこっちゃと渡って、所帯がデカくなってって―――。
今までの狼藉が災いして、ついには合衆国政府に狙われることになっちまって。
そんならいっそアメリカにでも住むかって軽いノリで移住して、気付けばなんやかんやで合衆国政府にこき使われながら、波乱万丈な生活がいつのまにか板についてきて―――。
世界の危機とかたまに救いながら、
でも俺たちは別にスーパーマンみたいに誰かに称賛されるわけでもなく。
そんな生活もまぁいいかなとか思いながら、いっぱいおっぱい揉んだり、キンタマすかすかになるまでエッチして、やっぱ最高だなぁ~とか。こんなんでいいのかな俺。とか考えちゃったりして―――
――それが、いわゆる走馬灯だと気がついたとき。
運命は、俺の目の前に現れた。
「よォ、久しぶりだな。Mr.武士道―――」
現れたのは、【伝説の傭兵/ノーマッド】。
ヤツは相変わらず、キューバ産の高級葉巻を咥えていた。
◆◆◆
硝煙と銃声が渦巻く戦場。
いつだっておれたちが出くわすのは、そういう環境だった。
伝説の傭兵/ノーマッド。
戦場はヤツの独壇場だ。
おれは一度も喧嘩で負けたことが無ぇ。
それでも、今までの中で一番強くてヤバかったのは間違いなくこのクソジジィだ。
誰にも手がつけられなかった個性派揃いの精鋭たちを統率し、未来を予知したかのような戦術立案と指揮能力を発揮。忍者のような隠密性と機動力で敵を翻弄し、精密且つ確実に戦場における核心的利益を穿ち抜く。
そしてコイツ自身の戦闘能力もまた、それらに裏打ちされた実力を持ち合わせている。
ハッキリ言って危険な男だ。
「また派手に暴れたらしいじゃねェか。その危険なまでの若さ。俺ァ、好きだねェ」
「まさかアンタと戦場以外で、しかもこんな気持ちのいい朝っぱらからおれん家の近辺で会うことになるとはな。最悪の気分だぜ」
口を尖らせるおれだが、目の前の老兵は歯を見せて、嬉しそうに気色の悪い笑みを浮かべている。
「まァ、そう言うなよ。オマエさんが俺の事を嫌っているのは知ってるが、俺ァ、オマエさんのこと、けっこう気に入ってんだぜ?」
「悪りぃな。じじぃに好かれるのはいつものことだが、怖気がすんのもいつものことだ」
「ハハッ、年寄りの色眼鏡は大切にしろよ小僧。それァつまりオマエさんには見込みがあるってことだ」
ノーマッドは笑いながら、一呼吸。
「そう、見込みがある。いずれオマエさんとは共に仕事をしてみたいと思っていた。そして、そんな俺等にお誂え向きの依頼が今、俺の手元に舞い込んでいる」
言っておくが、
おれもノーマッドもその世界じゃ凄腕だ。
ぶっちぎりのプロフェッショナル。
しかも二人とも伝説級。
そんな二人にお誂え向きな仕事なんて、どんだけヤベー仕事なんだって話だ。
「んだよ、ジジイ。老人介護でアンタの下の世話でもしろってか?」
「その前には死んでいるさ。俺は生まれも育ちも戦場だ。故に帰るべき場所もまた戦場なのさ」
ブルってるおれの軽口を気にも止めず、そんことを宣いながら目の前の老兵は改めて葉巻を吹かす。
「依頼主は、世界貴族」
「………ローゼンクロイツかよ」
「そーいやオマエさん、前に一族のひとりと派手に闘り合ってたな」
「あぁ、奴隷集めて拷問すんのが趣味の生け簀かない野郎だった。最期は同じローゼンクロイツの連中に王国諸共、蜂の巣にされてたけどな」
連中はイカれてる。
家族同士で殺し合い、奪い合うことが通常運転なサイコパスの一族だ。
ひょんなことから一族のひとりと構えることになったおれは、世界中が敵になったような気分を抱えながら、当時はひたすら消耗戦を繰り広げていた。
だがその水面下では奴さんと敵対する様々な勢力がその状況に乗じておれが知らないところで工作活動を行っていたらしい。機が熟した瞬間そのまま一辺倒に一族のひとりは食い散らかされ、気付けばその命も組織すらも跡形も無く消えてしまった。
「なら話は早い。ルキウス=ネロ=ローゼンクロイツという名前に心当たりは?」
「………悪逆皇帝。一番ヤバい野郎の名じゃねえか」
ローゼンクロイツの中でも、ルキウスはヤバい。
この世の犯罪組織、テロ組織、反体制。そのすべてがヤツの支配下と形容しても可笑しくないほどに、ルキウスは抜きん出ている。
ルキウスこそがこの戦争経済の首謀者であり、ヤツは争いを加速させることでこの資本主義で塗り固められた地球文明の土台をまるで守護巨神のように支えている。
いわば悪の礎。現代における邪悪の根源そのもの。
「アンタも仕事は選んだ方がいいぞ。割とまじで」
「その悪逆皇帝様が新たなる事業を始めようとしている。その新事業には当然敵が想定されるが、今回ばかりは俺もまるで想像がつかん。まったくの未知数だ。だからこそ俺が知る最も強い男に同行を願いたい。頼めるか?」
「……なんだよ、その新事業って?」
その問いかけに、待ってましたと云わんばかりにヤツは無邪気なドヤ顔を浮かべる。
「異世界だ」
◆◆◆
そんなこんなで、おれは日本へと戻ってきた。
あのとき、ノーマッドの依頼は断ったのだが、それを断り返された。
ヤツは政治的措置を背景に、おれの酒池肉林軍団ひとりひとりを人質に取り、柔和な言葉遣いで脅しをかけてきやがった。
それどころかヤツは合衆国政府に根回しを行っており、どのみちおれは強制的に帰国される運命にあったのだ。Fuck!
「結局出来レースだったわけアルね!でもマコトの故郷、一緒に来れたのうれしいネ」
隣ではリンリンがそんな暢気なことを言う。
帰国先。おれの酒池肉林軍団の住居先として、おれたちの雇い主となったルキウスはタワマン46階の11LDKを提供してくれた。
かくして、おれは酒池肉林軍団を連れて、一旦埼玉の実家に帰ることに。
じいちゃんをはじめ、親父や母ちゃん婆ちゃんは突然訪れた美女の集団に驚愕していたが、あれよあれよと全員と打ち解け、気付けばおれそっちのけで“おれに纏わる思い出話”に華を咲かせていた。
出国のきっかけであり、危惧していたヤクザからの返しは、ルキウスの後ろ楯によりあるはずもなく。
と思っていたらそもそも俺の酒池肉林軍団の戦力が超越してるため、最早手を出せないでいるという。
考えてみりゃ、それもそうか。
ついでに、“最初の元カノ”にも会いに行った。
彼女は普通の大学生活を送り、平凡で幸福な生活を送っている。
今、付き合って半年になる彼氏さんがいるらしい。
ちょっぴりショックだった。
◆◆◆
「改めまして、お逢いできて光栄です。Mr.武士道!」
そんなワケで、俺は悪の親玉と御対面。
ルキウス=ネロ=ローゼンクロイツ。
なんとも胡散臭い絶世の美男子。カリスマを感じさせるも何処となく破滅的な雰囲気を纏う危険な男。
おれたちが会うことになったのは、東京都/新宿。
――の、サイゼリヤだった。
「なんでサイゼリヤ………」
世界貴族なんだからもっとあんだろ。
高いホテルの飯とか、会員制のレストランとか、老舗の料亭とか。
なんでよりにもよって庶民の味方・サイゼリヤなんだよ。
「好きなんです。美味しいじゃないですか、サイゼリヤ」
高級スーツに身を包んでおきながら、ルキウスはホクホク顔で訴えてくる。
「煙草が吸えないんじゃ、たかが知れてんだろう大将」
そんな悪逆皇帝に不平不満を垂れるのは、すべての元凶/ノーマッドだ。
どこでも誰に対しても慇懃無礼なこの男だがそれはあくまで無法者の世界だけのようで、周りがカタギだらけの平和な日本では比較的おとなしくしているように見える。
煙草を吸う場所は選ぶし、マナーも遵守する。意外過ぎて不気味だ。
日本に帰国できる機会を恵んでくれたことにはなんやかんや感謝しているが、しかしこれからのことを思うとやはり先が思いやられる。
「――んで、異世界だっけか?」
おれはパスタを啜りながら、二人に問い掛ける。
【対異世界機構/虹の彼方へ】。
ノーマッドが指揮を執り、おれが所属することになる特殊部隊/【叛逆王】。
その目的は、異世界との武力的外交。
そして当面は【小宇宙】を発生させる“【転生者】”の駆除。
「それについてですが、ひとつ訂正しなければならないことがあります」
ルキウスが白ワインのボトルを開けながら、説明する。
「訂正?」
ノーマッドは訝しそうにピザを齧る。
「【転生者】の駆除ではなく、捕獲に変更となりました」
「なんだそりゃ、聞いてないぞ?」
ノーマッドは驚きの感情を見せる。
「つーか可能なのか?転生者ってのは無茶苦茶に強いんじゃねぇのかよ」
「可能となりました。対異世界機構で開発していた転生者召喚儀仗機【O.S.S】。その1号機/【選定の剣】の【適合者】が見つかったのです」
「なんだよ、そのカリバーンってのは?」
質問するおれ同様、ノーマッドもまた疑問符を浮かべたまま、頭目であるルキウスに目を向ける。
さすがに専門的な内容には、どうしても悪逆皇帝に主導権を握られてしまう。
本来、こういう状況は命取りだが、だからこそかつて最強の敵であったノーマッドに対する信頼がモノを発揮する。
ルキウスは危険だ。だからこそ縁を切る指標はこのノーマッドがどこまで許容するかに掛かっている。
「異世界転生者。彼等を戦術的観点で物語るなら、最も情報示強性の濃度が高い最高の戦力です。
魂は肉体を凌駕する。
情報示強性の濃さは、物理の法則を超越する。
故に対異世界機構は、彼等を単に駆除するのではなく、鹵獲する方法を模索していました。
そして実現したのです。これらを管理する次世代兵器/転生者召喚儀仗機O.S.Sの開発が――」
ルキウスはサラダを頬張りながは、話を続ける。
「異世界との外交において、異世界転生者の存在は我々の優位性を担保する有用な切り札となります。転生者はこの蒼球世界にしか確認されていない存在であり、個体の強度は他の異世界生命体と比べても理論上、最も優れている。ただ処分するだけというのはたいへん惜しい。どうにか鹵獲できないかと模索した結果、我々は転生者召喚儀仗機/O.S.Sの開発にたどり着きました。
ただし、転生者召喚儀仗機の起動にはひとつ条件があるのです」
「条件だと?」
ノーマッドが問う。
「人造女神との魂の波長の同調」
ルキウスは何食わぬ顔で答える。
「転生者召喚儀仗機には、人造の女神が搭載されています。この女神を観測し、感応できる者を我々は【適合者】と呼んでいます。皆さんには叛逆王に配属されるこの【適合者】をサポートしてもらい、異世界転生者の鹵獲に専念していただきます」
「任務は別になんでも構わないが、その適合者ってのは一体どんなヤツなんだ?俺たちみたいな荒事屋なのか?」
ノーマッドの言葉に、しかしルキウスは首を横にふる。
「いえ、今回の適合者はまったくの堅気。名前を【但野世界】。ごく普通の平凡な高校生ですよ」




