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第11話 三国統一、英雄たちの通信簿、そして完結

最終話です。

魏でも蜀でも呉でもなく、最後に天下を取ったのは晋でした。

桃園の誓いから五丈原の秋風を越え、三国志演義はここで幕を閉じます。勝者が地味なの、歴史の嫌なリアルです。


第十一章 ~ 英雄たちの通信簿 ~


三国志が終わった。ここで主要人物の「結局どうなったか」を振り返ろう。


【劉備】 ゴザ売り → 皇帝 → 復讐に失敗して病死。享年六十三歳。

評価:人望と涙で天下の三分の一を取った男。だが最後は感情に負けた。

三国志演義での扱い:主人公。でも一番活躍したのは部下。


【曹操】 宦官の孫 → 魏王 → 病死。享年六十六歳。

評価:政治・軍事・文学すべてに一流。だが三国志演義では悪役にされた。史実では最も有能な君主の一人。

名言:「俺が天下の人に背くとも」(これのせいで千八百年間悪役)


【孫権】 父と兄の遺産を継いだ → 呉の皇帝 → 晩年は猜疑心で暴走。享年七十一歳。

評価:「守成の名君」と言えば聞こえはいいが、要するに「攻めるのは下手だけど守るのは上手い」。晩年の後継者問題での暴走が痛い。

曹操の評価:「子を生むなら孫仲謀(孫権の字)のようでありたい」(褒めてる)


【諸葛亮】 ニート → 蜀の丞相 → 過労死。享年五十四歳。

評価:三国志最高の天才。だが天才一人では国の運命は変えられなかった。

死因(演義):働きすぎ。食事は少なく仕事は多い。現代なら労基が来る。


【関羽】 殺人逃亡犯 → 神。享年五十八歳。

評価:武勇と義に生き、プライドに死んだ。死後に神格化され、千八百年間拝まれ続ける。

コスパ:生前より死後のほうが圧倒的に出世。


【張飛】 肉屋 → 猛将 → 部下に殺された。享年五十五歳。

評価:一騎当千の豪傑。だがパワハラで死亡。現代社会への教訓。


【趙雲】 護衛隊長 → 伝説の武将 → 病死。享年推定七十代。

評価:長坂の単騎救出は三国志最高のアクションシーン。欠点が見当たらない完璧超人。だからこそ演義では出番が地味に減る。完璧すぎると物語が盛り上がらない問題。


【呂布】 最強 → 最弱の死に方。享年推定四十代。

評価:武力カンスト、信用ゼロ。馬一頭で親を売る男。三国志最強にして最も信用できない男。

教訓:転職しすぎると誰も雇ってくれなくなる。


【司馬懿】 諸葛亮のライバル → 魏の実質的支配者 → 孫が天下統一。享年七十三歳。

評価:三国志の真の勝者。「戦わない」「我慢する」「弱いフリをする」で最後に全部取った。諸葛亮ほど愛されないが、結果だけ見れば最も成功した人物。

戦略:何もしないことが最強の戦略。


【劉禅】 赤ん坊 → 皇帝 → 降伏 → 「蜀を思わず」。享年六十五歳。

評価:史上最も議論される「バカか天才か」問題。バカで通すことで生き延びた。ある意味サバイバルの天才。

父・劉備の評価(推定):「投げなければよかった」


【姜維】 魏の青年将校 → 諸葛亮の弟子 → 九回北伐して蜀と共に死亡。享年六十三歳。

評価:報われなかった忠義の男。師匠の遺志を最後まで背負い続けた。胆嚢が卵サイズ。


エピローグ ~ 三国志とは何だったのか ~


西暦280年、天下統一。


だが、この統一は長く続かなかった。


晋はわずか数十年で八王の乱という凄惨な内戦に突入し、その後は五胡十六国時代という大混乱に陥る。


三国の英雄たちが百年かけて争った天下は、統一された途端にまた壊れた。


何だったんだ。


だが、それでも三国志の物語は語り継がれる。


なぜか。


桃園で誓った三人の男の友情。


赤壁で燃え上がった天下分け目の炎。


五丈原で星を見上げた天才軍師の孤独。


最後まで夢を諦めなかった姜維の執念。


そして「蜀を思わず」と笑った劉禅の、バカなのか賢いのかわからない微笑み。


三国志は「天下統一の物語」ではない。


「天下統一を夢見て、果たせなかった者たちの物語」だ。


劉備は漢の復興を夢見て死んだ。諸葛亮はその夢を引き継いで死んだ。姜維はさらにその夢を引き継いで死んだ。


誰一人、夢を叶えられなかった。


だが――その「叶わなかった夢」にこそ、人は心を動かされる。


成功した者の物語は忘れられる。失敗した者の、それでも折れなかった心は忘れられない。


三国志が千八百年を経てなお読み継がれる理由は、きっとそこにある。


天下は分かれて久しければ必ず合し、合して久しければ必ず分かる。


「分久必合、合久必分」。


三国志演義の冒頭に記されたこの一文は、物語の結末にも、人の世の真理にも通じている。


すべては巡る。すべては繰り返す。


だからこそ、物語は終わらない。


――下巻・完――


――三国志演義・完――


あとがき的な何か


ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。


三国志演義は明代の羅貫中による歴史小説であり、史実(正史「三国志」陳寿著)とは異なる部分が多々あります。本作は演義をベースにしており、史実との相違は「そういう物語なのだ」とご了承ください。


特に、諸葛亮の超人的な描写(風を呼ぶ、空城の計など)は演義のフィクションであり、史実の諸葛亮は政治家・行政官としての才能がより強調されています。


また、曹操は演義では悪役ですが、史実では中国史屈指の名君主の一人です。演義の「劉備=善、曹操=悪」という構図は、あくまで物語上の演出です。


三国志に興味を持った方は、ぜひ吉川英治「三国志」、横山光輝「三国志」(漫画)、陳舜臣「秘本三国志」、宮城谷昌光「三国志」などもお試しください。それぞれ違った味わいがあります。


――桃園の誓いから始まり、五丈原の秋風を越え、三国の滅亡に至る。

千八百年の物語に、乾杯。


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