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ep.4


■本編第22話の物語となります




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 小さな照明魔道具だけが照らす室内。

 東の国でおよそ百年ぶりに再会したオズとリオンは、向かい合ったソファに腰掛け、しかし何を語るでもなく黙り込んでいた。

 先程まではレイアの潜り込んだベッドの方からもぞもぞと寝返りを繰り返す音が聞こえていたが、それは程なくして寝息へと変わった。

 

「面白い体になったね。……お互いに」


 リオンが不意に笑う。オズが百年前の記憶を辿れば、もっと屈託なく笑う青年の面影が浮かび上がる。

 だが目の前の、記憶と同じ姿形をしたその人物の笑みは酷く歪だった。笑みの端に侮蔑にすら近い感情が含まれている。

 だがオズは短く返すだけだ。


「ああ」

「俺がこうなった理由は説明しただろ?お前も説明してよ、オズウェル。お前がこの時代に、まだ生きている理由を」


 ただ興味を満たすため、そんな口振りだった。

 レイアにはまだ伝えていない話を、教えておくべきか。オズは僅かに視線を迷わせる。


「覚えているかは知らないが――話したことがあっただろう。不老の魔法は在るかもしれないと」

「ああ、人間の寿命を食らい続ければ……ってやつか。やったんだ?」

「……そうだ」

「へえ、さすが大賢者様だ」


 心の籠もらない称賛。

 その言葉の裏で伝えたい他の話題があるとオズは気付いていた。が、自ら口を開くことはしない。

 リオンは喉の奥にくつくつと笑い声を籠もらせた。


「で?……お腹空いてるんだ?最後に食ったのはいつ?」

「………………」

「分かるよ。空腹は、酷くつらい。丁度、餌のニオイもすることだし……腹を満たしてきたら?」


 リオンの視線が窓の外へと向けられた。

 客室に帰る時から、自分達の背中を尾けていた影があったことには気付いていた。今もその影は客室の外をうろついている。隙を待っているのだろう。

 

 オズが照明の魔道具へと視線を向けると、それだけで動力である魔力を絶たれた照明は明かりを落とした。

 室内が真っ暗になる。

 斧を握った人影はそれを見て、室内を確認するべく客室へと近寄ってきているようだ。


 斧で扉を攻撃されたら、レイアも起きてしまうだろう。

 オズはゆっくりと立ち上がる。その背に向けてリオンは声を掛けた。


「行ってらっしゃい、ごゆっくり」


 その声にオズは一度足を止め、視線だけで振り返る。


「……聖女を見ていろ、傷は付けるな」

「え?」


 まるで庇護しようとする言葉に聞こえ、リオンは目を瞬かせる。が、もうそこにオズの姿は無かった。

 程なくして、室内に残された寝息が不規則なものとなり、身動ぎする音が聞こえてくる。

 

 寝ていてくれれば良いものを、とリオンは音もなく溜息を吐いた。

 面倒事が、まだ待っている気配がした。

 

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