437 ジャアクナルモノ・5
『ジャアクナルモノが【凝視】を発動、オルヴィスが対象に選ばれました』
『所詮付け焼き刃、憑依したからなんだと言うのです!!』
『オルヴィスが【ホーリーブレイド】を発動』
『ジャアクナルモノが999,999Kダメージを受け、全て吸収しました』
リンネちゃんに聖属性攻撃は効かないらしい。それどころか吸収されてる、どうやら今まで聖属性攻撃を吸収してくる不死属性相手とは戦ったことがないらしい。この気持ち悪い目玉だらけの天使の姿から表情を読み取ることは出来ないが、動作から驚きや戸惑いというものを感じる。それと今のホーリーブレイド、光の粒子を大剣に変えて放つ薙ぎ払いの一撃、わっちにも見えた。わっちに見えるということは、つまりリンネちゃんには余裕で見えている。そして後ろのメンバーにも、当然見えているということ。
「バラバラになって、援護しましょうっ!」
「邪魔にだけはなったらアカンで!!」
「割りと素早いですね。気をつけましょう~」
「この期に及んで未だ本気ではないようですね」
『有象無象が、調子に乗らないでください』
『オルヴィスが【セイクリッドフェザー】を発射』
翼を羽ばたかせて羽根を飛ばして来た。どうやら強力なホーミング性能つき、当たれば当然のように即死級ダメージを受けること間違いなし。燃やすか弾くか振り切るか、とにかく動くしかない!
『ぎゅぁ~~! (下からも来る、注意してっ!)』
『ジャアクナルモノが【魔王乱舞】を発動』
『大鎌を適当に振り回せば当たるなどと、思わないことですね!!』
『オルヴィスが【ホーリーブレイド】を発動、相殺!』
『ユキノが【奥義:細雪】を発動、相殺! セイクリッドフェザーを打ち払いました』
化け物か、あの食欲の化身!? 四方八方から押し寄せる羽根の殆どを打ち払っちゃったぞ、視覚っていう重大な情報を失ってるのに、なんであんなに正確な剣捌きが出来るんだ!? いや、それは今は問題じゃない。攻撃のチャンスだ、まずは一撃…………!!
「すぅ~……」
『ブレスチャージを開始します』
『がぁああ~~!! (駄目よ、攻撃しては駄目!)』
何、攻撃してはいけない!? つみれが何か、察知した!!
『逢魔のレイジが真覚醒スキル【閃刃一刀】を発動』
『オルヴィスが【ペインミラー】を発動』
ペインミラー、まさかダメージを反射するカウンター攻撃!? これはまずい、もうあの距離じゃ止まれない……!
『ジャアクナルモノが【プチヒヨコッコボム】を発動』
『特効! カウンター! オルヴィスが50Kダメージを受けました』
『ジャアクナルモノが50Kダメージを受けました』
『このような子供騙しの……しまっ――!』
「らっしゃぁあああ!!」
『Weak! クリティカル! オルヴィスが2,205,550Kダメージを受けました』
『ぴゃう~!! (子供騙しでも、使い手次第ということね!)』
相手がまったく脅威と思っていない、対策済みだと油断していた一撃を逆に利用した! 最も攻撃力が高い脅威として警戒していたリンネちゃんが、まさかのサポートに回ってきた……。予想外の一撃、ただ効いているとは言い難い様子。強いて言えば目が一つ潰れて脇腹から少しの出血が発生した程度。決定打には程遠い、やっぱり格が違う。HP量も並外れている。
「む~っ! えいっ!!」
『ティアラが【金色魔槍驟雨】を発動』
『小賢しいっ!!』
『オルヴィスが【神聖障壁盾】【セイクリッドフェザーショット】を発動』
『Weak! 逢魔のレイジが995Kダメージを受けました。【羅刹化】発動!』
『モウ一撃クレタルワ!!』
流石に至近距離では、セイクリッドフェザーの狙い撃ちは避けきれなかったか……。でも死亡時に自動発動するらしい羅刹化……。額から鬼の角が生えて肌が赤黒くなって、恐らく一時的にしかこの状態になれないんだろうけど、それを覚悟で捨て身の攻撃に行ってる! ティアちゃんの金色魔槍驟雨も避けるつもりが全くない、このまま押し切るつもりだ……。援護しよう、レイジさんの覚悟を無駄にしないように!
『羅刹逢魔のレイジが絶命神技【刹那一閃】を発動!』
『ジャアクナルモノが【魔王乱舞】を発動』
「っがぁあああーー!!」
『【フルチャージ・超龍砲】を発動します』
右前方からは魔王乱舞、左前方からは命を懸けた一撃、後方からはわっちの超龍砲、頭上からは金色魔槍驟雨、残り二人も攻撃のタイミングを見計らって常に刀に手がかかっているはず。さあ、選択を迫られた腐れ天使野郎は! どう出てくる!!
『――――小賢しいと言ったはずです』
『オルヴィスが【セイクリッドバースト】を発動、周囲に神聖なる衝撃波が広がります』
『相殺! 【超龍砲】【金色魔槍驟雨】が打ち消されました』
これだけの攻撃を凌ぎきる強力な手札は、しっかり持ってたか。レイジさんのこの一撃、無駄にしたくなかったけれど……。
『ティアラが【黄金回廊】を開きました』
『ジャアクナルモノが攻撃をキャンセル、【グレーターテレポーテーション】を羅刹逢魔のレイジに発動』
『羅刹逢魔のレイジが強制的に転移、黄金回廊で移動します』
『Weak! ジャアクナルモノが999,999Kダメージを受け、全て吸収しました』
転移で黄金回廊の目の前に飛ばして、衝撃波を超えさせた!? それも黄金回廊の出口は、オルヴィスの頭上……!! 神聖障壁盾はリンネちゃんの方向、正面のみを守っている盾!!
『――遠慮センデエエ、受ケ取レヤ!!』
『上――』
『Weak!! クリティカル! オルヴィスが4,199,590Mダメージを受けました。【重篤な出血】状態になりました』
『羅刹逢魔のレイジが灰となって散りました……。復活不能です』
完全に戦闘不能、復活スキルとかアイテムすら使えない強制退場か……。しかし、かなりのダメージは入った! まさか有象無象と思っていた相手から、これほどまでのダメージを受けるとは向こうも思ってなかっただろう! 悔しさと怒りがこっちにまで伝わってくる、あれだけの大口を叩いておいてこのザマ、敵を甘く見すぎなんだよ!
『オルヴィスが真覚醒スキル【聖女の奇跡】を発動、オルヴィスのHPが完全に回復しました。状態異常を全て回復しました』
『ぎゅぇ~~ (あれはズルい!)』
『今のは、なかなか痛かった。これほどまでの剣士とは思いませんでした、正直見くびっていましたよ』
『ぎゃう~~ (効いてない~!!)』
『赦さない……。絶対に赦さない……。楽に死ねると思うなよ、虫けら共がぁああああああああ!!』
ああ、こういうタイプか……。レイドボスに全回復とか持たせちゃ駄目だろ、普通……。レイジさんの攻撃が全部無駄になった……? いや、この回復を使わせたことは大きな一手に繋がっている、はず……。わっちには終わりが見えない、どうやって倒せば良いかすらわからない格上過ぎる相手だけど、きっとリンネちゃんなら何か見えているはず!
『領域【無】が解除されます』
『ジャアクナルモノが【魔界領域制圧】を発動、領域が【魔界】になりました』
「お……?」
「あら、地面さんが帰ってきました~」
『先に領域を奪った程度で!! より強い力が、支配する!!』
『オルヴィスが【聖域支配】を発動、領域が【聖域】になりました』
『ティアラがワールドスキル【銀に祝福された黄金郷】を発動、領域が【黄金郷】になりました』
「より強い力が、勝ちますっ!」
『な、あ……っ!?』
ぷっ……。ぐっ……! ティアラちゃんには全くそんなつもりはないんだろうけど、純粋無垢な笑顔から繰り出される強烈な煽りが、オルヴィスにガッチリとぶっ刺さってやがる……!! 今、あいつはどんなアホ面晒してるんだ? 『な、あ……っ!?』だとさ!!
「(さて、ここでわっちが一番活躍するには、何をどうすれば良いと思う?)」
『ぎゅぃ~~…… (強力な技は使っちゃった、正直ブレス吐くだけしかない~……)』
「(じゃあ、やることは一つだ)」
『ぎゅああ!! (うんっ! つくねの考えてる通りにしたら良い~!!)』
究極スキルは使った、神技もちゃっかり使った、残ってるのは定期的に出せる超龍砲ぐらいしか、わっちには残ってない。ならこの超龍砲、最大限に活かすしかないだろう。職ポイントはピッタリ残ってる、後はタイミングだけだ。
「――ったぁああ!!」
『姫千代が【神雷脚】を発動、クリティカル! オルヴィスに55,988Mダメージを与えました』
『ジャアクナルモノが【万物滅殺】の構えを取りました』
『姫千代が神技【無双国守】の構えを取りました』
これはこれは、アホ面晒して呆けてたところに姫千代さんの奇襲の蹴りが顔面に! 意外とチャンスが早く回ってきた、これは当然乗る。乗るしかない、このビッグチャンスに!
「かああああ~~……!!」
『ブレスチャージを開始、更に【巨大化】を発動します』
『――ッ!? ッ!!』
馬鹿め、わっちを気にしてる余裕なんてあるか! 目前の死への対処が遅れれば、死ぬぞ? 次また回復する時間なんて、そんな生易しいものをリンネちゃんが与えてくれると思ったら、大間違いだぞ!!
『オルヴィスが【神聖障壁盾】【セイクリッドバースト】を発動』
「その技、既に見切ったッ!!」
『姫千代が【天変地異】を発動、神技【無双国守】を発動!!』
単純な衝撃波、困ったらこれを出してくるとわかっていれば、一定の速度で迫ってくる衝撃波は瞬間移動を妨害されない限り回避は容易い! 止まらない、姫千代さんの前にあるのは強力な神聖障壁盾のみ。神技で、割れるか!!
『Destroy! オルヴィスの【神聖障壁盾】が破壊されました』
「くっ……!」
『馬鹿な……!?』
盾を割るのが精一杯、ダメージまでは行かない! 腐っても超格上、神技を防ぐほどの防御力……そこは流石と言わざるを得ない。しかし、無防備ッ!!
「があああああああっ!!」
『つくねが【★ふれ~ふれ~!】を発動、次に発動するスキルが極大に強化されます』
『【巨大極龍砲】を発動します』
『ジャアクナルモノが大鎌を振り下ろし、万物滅殺の一撃を放つ!』
『――――セイクリッドフィアフルバースト!!』
『オルヴィスが神技【セイクリッドフィアフルバースト】を発動、恐ろしき聖なる力が全てを飲み込む!』
この衝突はどうなるか、もう誰にもわからない!! 純粋な力と力の衝突、より強い方が……勝つ!!
◆ ◆ ◆
――――だから、言ったではありませんか。私と貴方達には、絶望的なまでの差があるのだ、と。
「ふ、くはっ……! かはっ……! 熾天使の力、を、失うことには、なりましたが……。ふ……。ふふ……。あはっ……! あはははははは!!」
力と力が衝突し、より強い私の力が全てを飲み込み消し去った。神狐も、龍王も、心眼の剣士も、黄金の女王も、そしてあの生意気な娘! 輪廻も!! 残っているのは瓦礫だけ、私に刃向かった愚かな屑共は、皆消し炭になった。生命の反応は一つもない、ああ……なんと静かなことでしょう。
「あっはは、はは……はぁ……。全く、無駄な抵抗ばかり……。体が傷ついたなど、いつ以来のことでしょうか。久しぶりに痛みというのも、悪くないものですね」
後は時の暴走を少し早めるだけ。支配者不在のこの世界ならば、少しずつ世界に穴を空ければ脱出など容易なこと。まずは脱出に必要な穴を…………。
「あ……? あ、な……を……」
「ああ、空いたね。大きな穴が、そのドス黒い腹の真ん中に」
何、この、これは……? 私のお腹に、お腹から、何が、出て……?
「どうだった? これまで私の幻影を相手にしてた気分は」
「げ、ん……え、い……?」
これ、これは、まさ、か、大鎌の……? 幻、影……!?
「最初の言葉以降、一言も喋らなかったことに何の違和感も抱かなかった。周りにばっかり気を取られて、私の変化に全く気がついて、いないっ……」
「が、あ……っ……あぐ……っ」
「それが、お前の敗因。私達の、勝因……! 自分の影に潜り込まれたことにすら、気が付かない……。節穴ッ……!!」
「か、はっ……」
引き、抜かれた……。死、ぬ……? 傷が、熱い、血が、魔力が……流れ、て……? 何を、何をされた、何をした、何、これは、止まらない、流れ……っ……。
「死、ぬ、わけ、には……!! あの、お方の、とこ、ろ……へ……!!」
「ッ!? まだ力が……! ぐっ……!」
「セイクリッド、ゲート……!! サンク、チュアリ……!!」
死に、たく……ない……!! 死にたくない、死ねない、あのお方のところへ……! 戻らなければ、帰らなければ、ああ……。メギド様、メギド様……!!
「か、げに、居ても、ダメージ、は、避けられ、なかった……ようね、え……!! あは、はっ……! あと、少しで、トドメを刺せた、のに……! ははっ……! 私の、勝ちよ……!!」
「待、て……!!」
死にかけは、どちらも、おなじだったよう、ね……!! でも、少し……ほんの少し!! 私のほうが、上だった!! これだけの手傷を、負わせたこと、それは素直に称賛し、ましょう……。
「いず、れ……。また、会うことに、なる……でしょう……! 覚えて、おきなさい……!!」
輪廻……。この娘は、確実に計画の妨げに、なる。必ず、次は必ず……この世から、抹消して、差し上げます……。
「――――ふふっ……」





