412 Memory of Eldorado part4
ゴッドゴールド、スライムのようでスライムではない不思議な存在。自称『黄金の神』、誕生に至った経緯は全く不明。独自の進化を遂げこの姿となった変なやつ。一応このゴッドゴールドは全てのゴッドゴールドの母的存在であり、他の個体からはマザーと呼ばれているらしい。
『他にもミーは沢山の可能性をメェニーメニー試す為ェにーッ! 様々な分体が居るのデスよォー!!』
マザー以外の個体もいるらしいけど、これらはマザーから完全に独立してしまったらしく、今もどこかで独自の進化を進める為に研究を重ねているか、あるいはどこかで朽ちて死んでしまったかも知れないという。どのような個体が居るのか尋ねたところ、定期的に連絡を取るのは【グレートギガンティックゴッドゴールド――あの4G――】・職人思考な【ゴールドスミスゴッドゴールド――金細工師――】・古代の技術や言語を学んだ術師【エンシェントゴッドゴールド――通称EGG――】などが居るらしい。この三体に関しては仲は良好だけど、グレて不仲なゴッドゴールドも居るらしい……。
「汲み終わったよ。行くよ」
「いつも飲水の確保をして貰って悪いな」
『なァーんのこれしきッ!!』
「それはそうと、帽子とマントを返してくれ」
『ノォーウ! これは気に入りました、ミーが貰いまァす!!』
「はぁ……。なら、そいつはくれてやる」
『おやァー? 随分素直にくれるのデスねっ! テンキューッ!』
マザーゴールドはなんというか、悪いやつではないらしい。黄金の女王が城から離れた隙を突いて金貨を強奪して力の源を削いだり、清浄な飲水の確保の為に雪をろ過してくれたり、敵地の状況を教えてくれたりもしてくれる。ただ、うるさい。きぬさんを3倍ぐらい騒がしくして、子供っぽくしたような感じ。きぬさんは愛らしい騒がしさだけど、マザーゴールドはちょっと憎たらしいうるささを感じる。ただ憎みきれない愛嬌もあるのは事実……。
「マザーゴールド、外の世界に連絡をすることは可能なのですか?」
『ンッンーー。極わずかの穴、極短い間、それェーも元の雪原の近くだけでェす。難しいと思いマスよぉー?』
「どのぐらいの大きさの穴を開けるのです?」
『最大でェー……。拳が入るぐらァーいデスか、ねっ!!』
ただしマザーゴールドはこの空間でかなりの重要な人物。拳が入るぐらいの穴を開けて外へ連絡をすることが出来て、情報を伝達することが可能な唯一の存在。ちょっとウザくてイラッと来ることがあったとしても、気分を損ねたりするわけにはいかない。慎重に立ち回らないと……。
「その穴に魔術を通すことって出来ますか?」
『そうじゃないとミーが金貨を外に出せェーませェン、ねっ!!』
「20秒は開ける?」
『10秒、それ以上は危険デェス!』
「10秒……」
「リンネさん、何か考えが?」
「はい、一応……。ギリギリ、間に合うと思います」
『2時間はもう一度、ノンノンッ! 連絡も雪原より先、届ォきませェん!』
10秒、本当に極短い時間だけど、操作が間に合えば出来るかもしれない……。失敗したら次に連絡が出来るのは2時間後、一発で成功させるために用意をしよう……。
「外の世界に救援を出します。恐らく、きっと、この雪原の周辺に居るはずなんです」
「試してみる価値は十分あるだろう」
「なるほどねえ、リンネの知り合いが近くにいる可能性がある。連絡を取れるか試したいってわけだね。アリじゃないかい?」
『ンッンー。何かご褒美、ボォーーナスッ!! 見返りが欲しいデス、ねっ!!』
「やっただろ、帽子とマント」
『オーノーッ!! このための素直なプレゼンッツ!! 仕方あァりません、ねっ!!』
「あ、す、すみません……」
「いやいい。不要になった」
不要になった……? ヨハンさんがそれでいいなら、いいんだろうけど……。元の部隊の軍服だったろうに、惜しくないのかな。まあ、とりあえず考えている内容を試してみよう。まずは、フレンドリストをオープン……!
「ほう、面白いな。名前に触れると連絡を取ることが出来るのか。それで情報伝達が可能なんだな?」
「え、見える……?」
「何を見て喋ってる? また私に見えないものの話か?」
「なるほど、私の名前もありますね。こうやって連絡をしてくるのですねぇ……」
『ミーの使っているゴールデンネッツワァーク、そっくりデス、ねっ!!』
「ほうほう、今度そのゴールデンネットワークとやら、改変して使えそうな術ならば教えて頂きたいもの」
『気が向いたら教えまァす。ミーは黄金細工が好きデェス』
「ふむ……」
『開く時は言ってくださァい??』
「あ、はいっ」
アイギスさん以外の全員にフレンドリストが見えてた……。やっぱり眼に関するスキル持ちの人は見えるんだ……? あれ? アイギスさん、私達が隠れてたのを察知出来たのに眼系のスキルないの??
「あれ、アイギスさんって私達を見つけた時どうやって……」
「あ? ああ、熱だよ」
「アイギスは熱感知能力がある。この雪原で熱を発する者が入ればすぐに見つけられるってわけだ。俺とはまた違う方法で見つけるのさ」
「はあ~……!!」
『ミーは吹雪も夜もなぁーんでもお見通しデスよォ?』
「伊達に眼に星が入ってないですね……」
『かわいいでショ?』
「ま、まあ、可愛いかな……」
『ンッンーー♡』
う、うざったい、我慢我慢……。引っ叩きたいドヤ顔……! とりあえずペルちゃんに送るメッセージを先にメッセージボックスに記入して、回線がオンラインになったと同時にこれを送信する……。保険としてレーナちゃん宛てのも記入しておいて、これも送信する。更に送りながらどん太、ティアちゃん、ゼオちゃん、デロナちゃんにも念話を送って、ダメ元だけど私が有利になる全ての操作を試してみようと思う。従者リスト、オープン……全員の情報が不明。どん太達だけをピックアップして、セット。よしっ!
「……いいよ、開けて」
『イッキマァース! ゴールデンネッツワァーク! オン、ライーンッ!!』
マザーゴールドの腕がドリルみたいな形状になって、それが空間に刺さって――――穴が、空いた! 勝負ッ!!
『システム:ペルセウスにメッセージを送信中……』
『システム:レーナにメッセージを送信中……』
『システム:従者全員にメッセージを送信中……』
繋がってはいる、この雪原に居るはず! でも送られるのが遅い、やっぱりダメなのかな……! なら、せめてこれだけでも!!
「――――おいで!!」
◆ ◆ ◆
「どんちゃっちゃ、消えました! どうなっていますか!?」
「やっぱりリンネ様、何かに巻き込まれてると思います! 戻りましょう~っ!!」
「デロナも心配!!」
『約束を破ったのはリンネの方、私はリーリと一緒に二人だけで行く! 行くなら行って!』
「どうしましょう……。でもこれを失敗したら……あら?」
『システム:破損したメッセージが届きました』
どんちゃんが消えてしまいましたわ……。でもここでお二人をこのまま行かせたら、リンネさんが言っていた通りのことが起きてしまいますし……。破損したメッセージなんて初めて届きましたわね、本当はそれどころじゃないのですけれど、見てみましょうか……?
『差出人:◆◆◆ 呪い――――口に―――への―――』
「なんでしょう、気持ち悪いメッセージですわ……」
「ん、私も届いた。コインを、リード……意味不明~」
「ティアもお手紙が届きました~!」
「私も、来た。ツギハギの文字!」
「デロナも来たよ!」
「ラーラさん、ちょっとお待ちになられて? これはとても重要なことが起きていますわ」
『また時間稼ぎ? もういい! リーリ、早く行こう』
『ラーラさん、ちょっとぐらい話を聞いたほうが……』
『ユーリに早く会いたい!! 何百年も会ってない、我慢してた!! もう我慢できない!!』
「皆さんのメッセージも見せて欲しいですわ。繋ぎ合わせれば、何かわかるかも」
「んっ!」
ラーラさんが我慢の限界ですわね……。ですが、これを解いてからでないと絶対にマズい予感がしますわ。一人、また一人と姿を消して、最後には誰も居なくなってしまうかも……。
「呪いが恐らく最初の文字ですわね」
「呪い、口に? リード……?」
「呪いのコイン、だと思います~!」
「私が解読します、得意思います!」
「呪いのコインを口に~……、エルドリードへの~……かれるであろう。だよ!」
「あっ! デロナ、私が解読したかった!」
「早い方がいいのっ!」
「ありがとうデロナさん、呪いのコインを口に……?」
『……待て、エルドリードと言ったか!』
「え? は、はい、言いましたけれど」
『ラーラさん、話を聞く気になったんですねっ!』
『聞き捨てならない、聞かなければならない言葉だ!』
やっぱり、解読して良かったですわ! 重要な部分は確実に残っていますわね。呪いのコインを口に当てるか入れるかすれば、エルドリードへの……恐らく道ですわね! それが開かれる、そんな文章のはずですわ! どんちゃんが居ない部分のメッセージが抜けてしまいましたのね、それなら繋がりますわ!
「呪いのコインを口に入れよ、エルドリードへの道が開かれるであろう。恐らくそう書かれた内容が届きましたわ!」
「多分、リンネはそこに居る? 巻き込まれてる」
『里の者が、消える怪事件が時々あった。どこかで魔物に殺されたと皆言ってた、でも消える前に全員が同じことを言っていたんだ! エルドリードへ行かなければって!!』
「どういうことかしら……」
「呪いのコイン、持ってる?」
「どこでも倉庫で取り寄せますわ。テレポートは出来なくても、これは使えるはずですもの!」
「ぐっど」
「エル、ド、リード……」
「ティア、大丈夫ですか? 顔色が悪いです」
「大丈夫~?」
「は、はい、大丈夫です」
何やら、気難しい頑固な狼娘を護衛するだけの任務ではなくなって来ましたわね……。これは、お出かけどころではありませんわ。リンネさんには申し訳ないですけれど、とても大きなクエストだったら絶対にやりたいですわ!! リンネさん、お出かけもしないでこっちで遊ぼうって言ったら怒るかしら……。そうですわ! リンネさん、水着を選びたいって言ってた気がしますわ! わたくしがリンネさんに合いそうな水着を選んで先に買っておけば問題ありませんわね!! わたくしが買っちゃおう~♡
「呪いのコインを口に入れるで合っていると思いますわ。それで道が開くと」
「…………あ、わわわ。溶けた」
「ドロっとした~!」
『私にも! 消えた同族が、そこにいるはず! リーリ、少しだけ寄り道をしよう……。どうしても、そこに行きたい……』
『リーリのお母さん達が、そこにいるかもしれないんでしょ? 行かないと!』
『システム:追加緊急クエスト【真相究明・ラーラとリーリの同族を探せ】が発生しました』
「待ってレーナさん、わたくし……先にお昼寝さんにメッセージを残しておきますわ!」
「きこえ、な、い。なに? おかしい、ペルペル、ラルダ、ニーヒェル、シェゲステイア」
「……やはり。おかしくなりますのね、コインを口に入れると。正常なうちに、わたくしがメッセージを残しておかない、と……!?」
レーナさんが、何かに引きずり込まれていますわ!? マズい、最低限のメッセージになってしまうけれど、このまま行かせては……!
『システム:【呪いのコイン】を使用、【◆◆◆】状態になりました……。4時間は解除不能です』
「なんですの、これ……!?」
これは、この破損したギルドポータルのような、空間の亀裂は……!! 吸い込まれ、ますわ……!!
『システム:お昼寝大好きにメッセージを送信中……』
『――我が黄金郷を、再び、我らの時間に、近づける為に――』
『システム:お昼寝大好きにメッセージを途中送信しました』
全員が吸い込まれる前に、離れ離れにならないように、皆さんをしっかり掴まなければ! ラーラさんも、リーリさんも、レーナさんも、ティアちゃんもゼオさんも、デロナさんも……大丈夫ですわね! 全員手を繋ぎましたわ! でももうダメ、吸い込まれますわ~!!





