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410 Memory of Eldorado part2

 雪原のど真ん中に放り出されてここからどうするのよって話だったんだけど、吹雪を避ける為に退避した廃墟の中で暫く様子を見ててわかったことがある。この雪原の、いや恐らくこの空間全体の天候は目まぐるしい速度で変化している。5分刻みで正確に【視界良好で快晴の昼間・徐々に暗くなり雪が大粒になる5分間・視界不良の猛吹雪の夜・徐々に明るくなり風と雪が止む5分間】これを繰り返していると思う。まだ2ループ目だから絶対じゃないかもしれないけど、天候にパターンがあるらしいことがわかった。


「使える魔術は一通りわかりました。リンネさんよりは、ほんの少し強いと思いますよ」

「その言葉が真実か試したいところですけど、そうも言ってられる状態じゃないですね」

「リンネさんは闘争心の塊、負けず嫌いですねえ……。そこがとても魅力的で、ゾクゾクします……」


 ロリっ子カーミラちゃんに艶めかしい表情を向けられると、興奮と困惑と恐怖と庇護欲で思考回路にバグが生じるね。実際ほんの少しとか言って相当上なんだろうけど、自分より小さい子を守りたくなるのが(さが)ってものよ。

 

「もう暫くすれば視界が良くなるはず、さっき遠くに見えた街らしき場所に移動しましょう」

「そうですねえ。あの狼が居る現状、人が居るかは怪しいところではありますが」

「居ないことを確認する意味もありますから。居れば御の字です」

「確かに、情報は多いほうが良いでしょう」


 とりあえずこの吹雪がもうすぐ収まる。太陽が昇っている方向と真逆を勝手に北と仮定して、この雪原から北・西・東の方角にそれぞれ建造物らしきものが見えたので、そのうち東の方角に見えた街らしき場所に向かって情報を集めようと思う。北に見えた城っぽいところは行かない、直感だけど北の城は敵の本拠地感が半端じゃない。西は狼が走り去っていった方角だからちょっと行きたくない。一匹一匹はどん太より弱い感じがしたけど、集団で来られたら絶対キツイから相手にしたくない。


『システム:三日月の姫君・カーミラが【マナジョイントリンク】を発動、【リンク・オンライン】状態になりました』

「ウィンドステップとブラッドアサシンを付与します。リンネさんなら何も説明しなくてもすぐに慣れるでしょう。素早く移動しましょう」

「え?」

『システム:三日月の姫君・カーミラが【ウィンドステップ】【ブラッドアサシン】を無詠唱で発動、【空中高速移動】【気配断絶】【無音】が付与されました』


 いや説明ぃ……!! 体が勝手に浮くっ! あ、浮遊とか飛翔状態の感じに近いわ。これはマリちゃんが使ってたエアステップに似てるのかな? MPをわずかに支払えば足場を欲しい場所に作り出せる機能と、音もなくそれらを行使出来る状態も付与して貰ったのね。それで、リンクオンラインの機能は? あ、気配断絶しちゃうとお互いの位置がわからなくなるから、情報共有の為にマナでリンクを繋いで来たのね。半透明なカーミラちゃんが見えるわ。


『大丈夫そうですか? 動けますか?』

『あ、念話も出来るんですか。大丈夫そうです、自前のスキルに似たのがあったので』

『それは何よりです。ちなみにフリオニールはこのウィンドステップが苦手でしたよ。何度も周囲の物に衝突して、顔が悲惨なことになったこともありましたねえ……』

『うわあ、それはちょっと見たかったかも……。というか、おにーちゃんに掃除以外に苦手なものあったんですね……』

『ええ、掃除とウィンドステップと、後は好きな女性に好きだと伝えることが苦手でしょうか』

『あっ……』

『さあ、雪と風が止みます。行きましょう』

『あ、はい』


 もうちょっとお喋りを続けたいところだけど、移動が出来る時間は少ないから行動を開始しよう。それにしても、これ真弓と出かける時間までに絶対間に合わないやつだわ。どうしよう、連絡も取れないしなあ……。ログアウトしたら途轍もない後悔に苛まれることになりそうだし、土下座でもなんでもして今回は誠心誠意謝罪をしよう……。


『行きます』

『はいっ!』

『システム:三日月の姫君・カーミラが【タイマー・コケコッコボム】を発動』


 よし、行こう……うわっ! 思ったよりも速い、どん太の全速力並に速い! あ、この魔術後で教えて貰おう……。これがあれば殺戮の神相手でも暫く時間を稼げるか、割といい勝負が出来る気がする。魔術師系職業の敏捷性のなさは、魔術の応用で解決すればいいんだ。これからの戦闘に活かそう~!


『狼は追ってきていませんね』

『戦闘音に反応して来たのが、やっぱり正しかったんですかね』

『そろそろ起爆します』

『え? あ、さっきそういえば何か』


 ――――コッケコッコォォォオオオオーー!!


『うわっ!』

『……集まってきましたね。マナに反応するのであれば設置時にバレていますし、それに隠蔽魔術を突破するはずですから、音で間違いなさそうです。それも、大きな音でなければバレないようですね』

『話し声程度なら大丈夫ってことですか?』

『恐らく。近くにいればそれもマズいとは思いますが』


 びっくりした~……。前にプチヒヨコッコボムは見たことがあったけど、コケコッコボムは威力が段違いじゃないですか~……。あれかな、音に弱い相手用に開発した爆発魔術だったりするのかな? カーミラちゃんの魔術は面白いのがいっぱいあって、次は何が飛び出してくるのかってワクワクしちゃうね。


『衝撃波が来ますよ。バランスを崩さないように』

『え? うわっ!?』

『あれだけの音ですから、衝撃波も凄まじいものになるのですよ』

『システム:【コケコッコボム】が残した卵から【ヒヨコッコボム】が発生しました』


 え? うわ、うわあ……。親爆弾に子爆弾作成機能まであるんだ、怖すぎでしょ……。爆発地点から周囲に子爆弾をばらまいて、広域殲滅も出来るんですかその爆発魔術。ネタ魔術なのかと思ったら、ガッツリ実用性のあるトンデモ魔術じゃないですか~! やだ~!


『避けられたようですね』

『え、当たってないんですか?』

『敏捷性はなかなかに優れているようです。思考は完全に動物のそれ(・・)ですが』

『特定の行動をした相手を狩るためだけに動いているんでしょうか』

『偽ティアがコソコソと動くのは、この狼が原因かもしれませんねえ……』

『ん~……』


 どん太よりちょっと弱いぐらいって思ってたけど、回避能力の高さからしてどうかわからなくなってきた。避けやすい部類の攻撃だったから避けられたのか、身体能力が高くて避けられたのか……。いずれにせよ、避けるだけの能力があるのは間違いないから攻撃するときは注意しよう。


『見えてきましたね。意外と大きな街のようです』

『本当ですね、リュースより大きいぐらい……?』

『動いている人影が見えますが……』

『闇人間ですね……』


 東に見えた街らしき場所の近くまで来たけど、意外と大きな街だった。ただ住人がここから確認出来るだけでも全員が闇人間。これはいきなり話しかけたりしないで、暫く様子を探ろうかなあ……。


『門の前。誰か居ます』

『あ、本当だ……。闇人間じゃない……あっ!』

『……残念ながら、見つかっていますね。相当な手練です、今の私では勝ち目がないでしょう。大人しく姿を見せるべきでしょうね』

『完全にこっち見てましたね……』


 うーん、門番が優秀だったー……。どうしようかって空中で考えてたら、完全にこっちを捕捉して視線で追い掛けてたもんね。すぐに攻撃する意思はないみたいだけど、このまま姿を見せずに近づいたら絶対に攻撃してくるだろうなあ、雰囲気がそんな感じだもん。


『近くまで行きましょう。戦闘態勢は取らないように』

『はい!』

『リンクは繋いだままにします』

『あ、はいっ!』

『システム:【ウィンドステップ】【ブラッドアサシン】の効果が解除されました』


 カーミラちゃんも同じ考えかな。それにしても、遠くから見ても目立つ格好だなあ~。赤くて金の装飾派手な鎧、盾に大槍、髪の毛も真っ赤だし――――いや、いやいやまさか……。


「――――止まりなさい。そこから一歩も近づかないように」


挿絵(By みてみん)


「ア、アイギス……!」

「おや、知っている顔でしたか?」


 いやー……。今朝から散々見た顔だから間違いないよ、ペルちゃんの変化してた姿と瓜二つ! 間違いない、ペルちゃんの使ってるアイギスの元になった存在、戦姫アイギスだよ!


「アイ、ギス……? アイギス、アイギス……」

「おやおや、随分と辛そうな顔に変わりましたよ」

「え、瓜二つなだけで違う人かも……。なんか微妙な反応なんですけど……」

「私を、知っているのか? お前達は誰だ? 動くな、動けば殺す。その場から動かず答えて欲しい」

「殺せば情報ごと闇の中ですが、それでも構わないなら殺していただいて結構。それに、それが人に何かを聞く者の態度ですか? 隠れて様子を窺ったことは謝りましょう、ですがあの狼がいる雪原を越えてきたのです。当たり前の行為でしょう?」


 お、カーミラちゃんが交渉してる……。ロリっ子になっても相変わらず高圧的な姿勢だあ……。


「…………信用できない。長い時間、自分が何者かもわからずここに居る。それが急に自分が何者かを知っているらしい存在が現れた、こちらを油断させて容易に排除しようとする、黄金の女王の刺客の可能性が高い。信用できる要素がない」

「それなのに即座に排除しないのは何故ですか? 聞きたい、知りたい、そうでしょう? このリンネさんはあなたの知りたい情報を持っている可能性が高い。あなたはいつでも我々を排除出来る力を持っている。何を恐れる必要があるのです?」

「…………しかし」

「おやおや、まさか……。アイギスともあろうお方が……。お話を聞くのが怖くて震えているのですかぁ~?」

「くっ……!! 生意気な、黙れ……!!」

「――――紅き戦士よ、話を聞こう」

「っ!」


 え、あ!? 全然感知出来なかった、もう一人居たんだ!! あ……。あっ!


「あっ、その銃……!」

「…………こうも立て続けに、か。俺は聞くべきだと思う。恐らく彼女は俺のことも知っている」

「釣り針に付いた餌に食いつくようなものではないか!」

「よせ、大声を出すな。狼が来る」

「…………来い、不審な動きをしたら即座に排除する」


 あの銃、レーナちゃんのザミエルに似てる! スラッとした長身で、軍服姿も向こうでみた姿そっくり! 多分この人が、魔弾の射手……!!


「行きましょう、リンネさん」

「あ、はいっ!」

「必要な時以外は口を開くな、周囲を見回すな、足を止めるな。ついてこい」

「温かいお茶が飲みたいですねえ……」

「お前っ……!!」

「大声を出すな、紅き戦士よ」

「くすくす……」


 カーミラちゃん、あんまりアイギスさんを怒らせないであげて……。顔まで、顔まで赤くなってるから……。あ、軍服のお兄さんニヤッとしてる。この状況を意外に面白がってる? でも一応はいつでも射撃出来るようにトリガーに指がかかりっぱなしだし、完全に信用してるわけではないのは間違いないね。


『姿持ちだ……』

『おお……。久しく見なかった……』

『姿持ち……』

『い、意識が……』

『心を強くもて、消えるな、耐えるんだ……』


 闇人間はみんな同じような声で、同じような見た目なのね……。キョロキョロするなって言われたけど、どうしても見ちゃうよね。


「入れ、中で話を聞く」

「すまないが、安い紅茶しかない」

「あら、本当に出るなんて。ありがとうございます、気の利くお兄さん」

「茶なんて出すな!!」

「俺が飲みたいんだ、たまにはいいだろう?」

「…………勝手にしろ」

「茶が入るまで待っててくれ。どうせお前じゃ冷静に話は出来んだろう」

「勝手にしろ!」


 え、本当にお茶が貰えるんだ。毒とか入ってないよね……?


『あのティーポットは暗殺道具、毒入りですね』

『あっ……』


 ばっちり毒入りだあ……。あの軍服のお兄さん怖いよぉ……!!


「こんなので悪いが、まあ茶でも飲みながら話をしよう」

『あ……? 毒入りは、アイギスさんに行きましたね……』

『ええ……?』


 ええ……えええ……? なんでぇ……?


「い、頂きます……あ、美味しい……」

「では遠慮なく。あら、なかなか美味しいですねえ……」

「それは良かった。いつもはお茶の味もわからない奴にしか出さないもんでね、味に自信がなかったんだ」

「ふんっ……私だって、お茶の味ぐらいわかる!」


 あ、飲んじゃった。え、良いの? 良いのこれ? 大丈夫なの……? アイギスさん、毒入り飲んじゃったよ……?


「なんか、いつもよりちょっと苦い気がする……」

「お? ついにお茶の味がわかるようになったか? それは驚きだ」

「バカにするなよ、これでも料理は、好き、で、色んな、料理で……舌が、あぇ……。舌……。ひり、ひり……しゅる……」

「疲れてるんだろ。少し寝てた方がいい」

「ん……ね、りゅ……」


 ね、寝ちゃった……。アイギスさん、寝ちゃったよ……?


「…………うるさいのが寝たな。改めてようこそ、呪われた地エルドリードへ。歓迎しよう」

「おやおや、さっきまでは警戒していたようですが?」

こいつ(・・・)に警戒しているフリをしなければならなかったからな。君たちの行動はずっと見ていた。黄金の女王と戦っていたのも、狼から逃げて隠れていたのも、こちらに来る流れまで」

「凄いですね、この距離から見られていたとは……」

『千里眼ですね。驚異的な視力と遠方に意識を飛ばす能力を持っていますよ』


 千里眼!! ここからずーっと見られてたんだ、経緯を知ってるからアイギスさんと信用度が段違いだったんだ。なるほどね……。それにしてもカーミラちゃん、喋りながら別の内容を念話で飛ばしてくるからちょっと情報が渋滞しそう。確かにまだ完璧に味方って決まったわけじゃないし、警戒した方が良いよね。


「こちらが知っている情報を提供しよう。エルドリードで何が起きているのか、黄金の女王とは何者なのか。その代わり、俺について知っている情報と、こいつの情報、そして……外の情報を教えて欲しい。君たちは、外から来たんだろう? 黄金の女王に連れられて。教えてくれないか?」

「他にも聞きたいことがあります。その情報も頂ければ」

「わかった、聞かれたことについて知っていることは答えよう」

『まだ話さなくて結構です』

 

 ああ、カーミラちゃんに助けを送って良かった~……! 私だけだったらこんな会話を上手く進められないよ、とりあえず情報交換が出来そうだね! よかった、これでこの空間を脱出する突破口が見つかるかも!


「ではまず、誠意を見せるために俺から話そうか。ここエルドリードは、時の神クロノスによって封印されている。正確に言うと、圧縮された時間の中に隔離されている状態だ。時の神クロノスと黄金の女王は敵対関係にあり、お互いに干渉出来ない拮抗状態が続いている」


 絶対これ、真弓と出かける時間までに間に合わないわ。うん、無理。ごめんね真弓、今度絶対お出かけしようね……。


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本作をご覧頂き誠にありがとうございます
 宜しくお願いします!
ガイド役の天使を殴り倒したら、死霊術師になりました ~裏イベントを最速で引き当てた結果、世界が終焉を迎えるそうです~Amazon版
アース・スターノベル様より出版させて頂いております!
― 新着の感想 ―
[良い点] アイギスとか出てきたけどアイギスたちは元の世界に戻れるのかな。アイギス毒盛られてて草。 時の神とか黄金の女王とか色々気になる単語が出てきた。 お出かけ残念
[良い点] 時間軸が違うならワンチャン間に合うかもって思ったけど そこまでご都合主義ではないよなぁ〜 運営さんしっかり目に焼き付けて(๑ •̀ω•́)۶ファイト!!
[一言] 時の神はメルティス陣営ってことか。
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