406 約束の地へ
カーミラさんから血を抜かれながら約束の時間を確認しつつ、最近の出来事を振り返ってみた。ここ暫く大きいイベントが立て続けに起こったから、何か見落としてないかな~と思ってね。
まず飛空艇が完成して即機神トロイに負けて、飛空艇を作りたいからバビロニクスとローレイの収益で大型船と中型船を作ってもいいですかって投票があったよね。これは翌日にはプレイヤーの大多数と住民NPCが賛成してくれて作るってことになった。それに伴って生産スキルを修得したいなら独自の支援もするよってことで、初心者でも気軽に手を出しやすい領域までハードルが下がる予定みたい。
新規発見としては生命研究所の発見、ベルルスさん達とコンタクトを取ってバビロン陣営の傘下に入るかどうかの話し合いに発展して、まずはバビロニクスを見てからってことで向かう道中でヴァハール龍神王国に拉致、そこでヴァハールさんと話をした結果、生命研究所もヴァハール龍神王国もバビロン様の下に入ったんだよね。現状ヴァハール龍神王国は地上にある死の都市カナンが邪魔で、その掃討作戦を準備中と。
カジノエリア地下の緊急クエストをクリアした隠し報酬みたいな感じで、新規レベリングダンジョン【ラッシュ!】が解放。古代語が出来れば装置を起動してNPCだけでも行けるみたいだし、ここは忙しいテイマーさんはもちろん、レベル200まで後少しってプレイヤーにも絶好のレベリングスポットだと思う。2回目以降は100円相当ずつかかるのがネックだけどね。
そして地獄は~どの攻略中に知れたラーラさんの最悪の結末の姿、殺戮の神に成り果てるのを防ぐ為に4時出航の待ち合わせに間に合うように起きてきて、早すぎた結果カーミラさんの高度な罠にかかって血を抜かれてるのが今だね。
「ふわぁぁ~~……」
『おや、あくびとは。まだ眠いのでは?』
「4時前ですからね~……」
『そもそも何故こんなに早くいらっしゃったのですか? 珍しすぎて驚いてしまって、ついつい様子を見に来てしまったではありませんか』
「りんねーさま、血がどぷどぷ~って出てるよ~? 痛くないの~?」
「わ~……! いっぱい血が出てます~! あ! リンネ様の手、ティアよりちょっと大きいんですね~!」
「血が減ったらいっぱいご飯食べるべきです。ね、リンネさんもどんちゃっちゃも思いますね、そうでしょう!」
『わうわうわうっ!! (いっぱい食べると元気になるよ!)』
あ~……。どれから答えようかな……。
「人狼族のラーラさんの里帰りに付き合わなければ、大変なことが起きて惨事になる予感がして、今日は朝早く来たんです」
『なるほど……? デロナさん、これは痛くない針なんですよ。仲の良い方用の特別なものです』
「特別じゃないと、痛いの~?」
『この槍で心臓から直搾りの方が早いですから』
「わ~……痛いなんてものじゃない~……」
「リンネ様のおてて~。おてて~♪」
「吸血姫二人に両手を握られてる、普通なら絶体絶命の光景思います!」
『わう~~? (ご主人もおてて、ぷにぷに?)』
「どん太さんの肉球より柔らかいです!」
『わふっ! (僕も柔らかいもん!)』
「はいはい、後で触ってあげるから。今は両手塞がってて無理なのよどん太~」
『きゅぅ~ん……』
元勇者と元聖女のほうは、絶対カーミラさんの槍で直搾りされてるんだろうなあ……。勇者と聖女っていう称号は失ってもその資質は失われてないから、完全に絞りカスになるまでは絞られるんだろうね……。
『解除不能な【神姫の乾血】状態になりました。解除まで残り2時間です』
『はい、これで採血は終わりです。サリーから貰った造血薬ですが、どうぞ。副作用で幻覚が見えるようになるそうですが、一時的なものでさほど酷いものでもないそうですから、飲んでおいてくださいね』
「あ、ありがとうございます……」
幻覚作用のある造血薬、なんか聞く限りは怖いお薬なんだけど……。こういう薬ってゲームの中とは言え大丈夫なのかな? いや、ダメだったら実装出来ないんだけどさ。微弱とは言え幻覚作用があるなら、多少ハマってしまう人が現れても不思議ではないような気がする!
『【♡サリースペシャルブラッド】を服用しますか? 解除不能な幻覚作用が暫く発生します!!』
『【♡サリースペシャルブラッド】を服用しました。【神姫の乾血】解除まで残り10分、【???】状態になりました。解除まで残り4時間です』
ん……。ん~……? 特に何も見えたりはしない、かな……? やっぱりゲーム用だからね、強烈なのは無理だろうから抑えられてるよね。これで本物さながらの幻覚作用があったら大変だよ~。
『それでは、お気をつけて。私は頂いたものを加工する作業がありますので。では、ありがとうございました』
「え、あっ……。行っちゃった」
「血は鮮度が大事だって、カーミラ様が良く言ってました~!」
「きっと前みたいに」
「あ、待って? それ聞いてもいい話?」
「ん~~……? どうだったか、デロナ。覚えていますか?」
「何も言われてないから大丈夫だと思う~!」
カーミラさんについての話を聞く時はね、先に聞いてもいい内容かどうかを確かめてから。これは大事なこと、とっても大事なこと……! うっかり聞いたとしても、乙女の秘密を知ってしまった者のところへ血をちゅうちゅう吸いに来る。干からびたくなければうっかり事故を防止しないといけないのよ。
「ブラッドキャンディに変えるんだと思います~! 飴みたいにして、お気に入りの血を長く楽しむ為に加工するって言ってました~!」
「はぇ……」
「リンネさんも、好きな食べ物は長く食べたい、味わいたいです。きっと思ったことあります。カーミラさんも、同じ気持ちです!」
「食べ物が違うだけ~」
『わう~ (いっぱいお肉食べたい~)』
「なるほどねえ……。確かに、長く楽しめるね……」
お気に入りの血を長く楽しむための加工……。そういうのもあるんだね~……。最後までクールな感じで居たけど、内心はウッキウキるんるんで加工しに行ったのかな。気に入られすぎて毎日何かしら理由をつけて血液要求されたらどうしましょ。
『システム:ペルセウスがログインしました』
「あ、ペルちゃん来た。ギリギリじゃん、もう出航時刻まで20分しかないよ。朝から冒険の旅になるけど、皆は行く?」
「はいっ! ティアも行きます~!」
「行く~!」
「行くますっ! あ、行くです!」
『わう~! (行く~!)』
ペルちゃんやっと来たわ。とりあえずどん太、ティアちゃん、ゼオちゃん、デロナちゃんが来てくれるのね。他の子達は……リアちゃん熟睡、朝弱いもんね。おにーちゃんが深い睡眠、珍しい~。千代ちゃんが睡眠、好感度欄に『燃やさねば、腹肉を、燃やさねば……』って書いてある。これは悪夢にうなされてそう。わあ、マリちゃんもちゃんと寝てる! マリちゃんが寝てるってだけでなんだろう、この安心感。もっとしっかり睡眠をとって欲しい。ヴァルフリートさんもちゃんと寝てるね。安心安心……。
「ご、御機嫌よう~……」
「おはよう~……? ん?」
あれ、ペルちゃん髪染めた? 髪を赤くしてる、これはこれで猛々しさがあって格好いいけど金髪のほうが好きかな~。顔にも赤い刃みたいなペイントしてる、これから戦場に行くぞって感じで格好いいね。
「おまたせし過ぎた、かしら……?」
「ううん、大丈夫だよ。じゃあ加賀利に行こう~。さくさくと里帰りのお手伝いしよう!」
「わかりましたわ! では、パーティを組んで早速参りましょう!」
「お~」
「うん、行こう行こう~……ッ!?」
「おは~」
「まあ!!」
わ~びっくりした、急にレーナちゃんの声が聞こえて物凄く驚いちゃった。カーミラさんといい、レーナちゃんといい、今日は年上のお姉さんに振り回される日になりそうだねえ!?
「レーナちゃんおはようございます~。ビックリしました~」
「じゃま? だめ? 一緒に遊びたい~」
「私は是非是非、ちょっと急ぎのクエスト未満の用事消化なんで早足なんですけど」
「わたくしも是非、きっと人が多いほうが有利ですわ!」
「おはようございます~!」
「おはようでございます!」
「おはようレーナさま~!」
「やった~。仲良しトリオも元気、おはよ~。どんちゃも、おはようタッチ」
『わうわうわふっ! (おはようたっち!)』
「ぐっど」
レーナちゃんも武器変えた……? 白銀と黄金の装飾がこんなに凝ってたかな、銃身も前より長い気がする。あれ、今日はゴスロリじゃなくって軍服っぽいアバターなんだ。これもこれで可愛い……!
「朝から混ぜてくれて、ありがとっ」
「いえいえ~。それじゃあ、向かいながら事情を説明しますね!」
「今日はパーティメンバーのバランスが随分いいですわね~」
「確かに。いつも結構偏る? あ、メガリス最高だった。ウニがメガリスアーマー作りたいって、他にも皆色々言ってた。大きいことになるかも?」
「ほえ~! メガリスアーマー作るには並大抵じゃ出来なさそうですけど、模倣品ぐらいなら行けそうですね! 性能は、あんなに豪勢なのは無理だと思いますけど……」
「無理。多分、古代文明の最強素材オールスター」
ラッシュに行った人たちがメガリスアーマーの凄まじさに触れて、作りたくなる気持ちわかる気がするなあ~。もしダンジョン外でもあの最強兵器が使えたら……! あのレベルの兵器は流石に即出来るってことはないだろうけど、まずは模倣してそれっぽいところから始めてみるのもいいかも。マリちゃんとか『我も作ってみたいな』とか言い始めそう~。いや、言うね。絶対言う。作ってみたいなじゃなくて、作ろうと思うんだがって言う!
「とりあえず、話は現地に向かいながらでも! まずは加賀利行きましょ~」
「残り15分、大丈夫ですわね!」
まあまずはラーラさんが待ってる加賀利へ向かおう。話はそれからでもゆっくり出来るもんね! はあ~どうにか上手く事が運ぶと良いけど、起き得る未来の回避……緊張するなあ~!





