403 苦労する
どん太達全員に『全員バビロニクスのロビーに集合~近くにヴァルフリートさんが居たら連れてきてね~』ってお願いをしてからえきどにゃ様のところに行ったんだけど、えきどにゃ様の周囲は大混乱大混雑大騒動! 地下に入りたいプレイヤーと、重要施設――金庫室やメガリス――があるから今は入場規制中、信用のある者しか入れないよと塞いでるえきどにゃ様の押し問答になってた。
なんでも、えきどにゃ様の許可を得ている人しか地下に入れない結界が作られてるんだって。そういえばえきどにゃ様ってレッドドラゴン襲来イベントの時も結界張ってたし、こういう隔離系の結界を作るの得意なのかも。な~んて殆ど何も考えずに地下から私がのほほ~んと出てきたもんだから、不公平だ~だの、俺にも入る権利が~だの、大騒動になっちゃったみたい。
――――ピピピピピピピーーッ!!
これだけの大騒動、どう解決したものかなって思って悩んでたら、思いもよらぬ人達がカジノに駆けつけてくれてくれた。正直あまりにも優秀過ぎて、ちょっと前にやらかしたことが全部帳消しになるレベルの素晴らしい活躍だった。心の底から見直しちゃった……。
『大変な騒動になっていると聞いて駆けつけてみれば、何事でありますかっ!!』
「一部のプレイヤーだけ良い思いが出来るコンテンツがあって不公平だって言ってんだよ!」
「金払ってプレイしてんのに、俺たちにもプレイする権利があるだろ!!」
「ルール、ルール、そっちが何でも決めて一部のプレイヤーばっかり得するのはおかしい!!」
『カジノで一部の利用者が得するのは当たり前のことであります!! 全員が勝てたらカジノに来る意味がわからないのであります!! 事情を聞きますから、全員大人しくその場で待機しなさいっ! 職務を妨害する方には容赦しないのであります!』
「はあ!? なんだよそれ、ふざけ」
「カジノ内って武器使えないんじゃ……。ショットガン持ってる……」
「お、横暴だろ!」
「いや、警察に歯向かうってヤバいんじゃ……大人しくしよう……?」
『どっちが横暴じゃ! 妾はまだ準備が進んでいないから、一般利用者は利用を規制すると言ってるだけじゃ! 後日誰でも入れるように取り計らうと言っておるのじゃ!!』
「先行してプレイできる人がいるのがおかしいって言ってんだよ!!」
『むー。双方の言い分はなんとなく理解したのであります。詳しく事情を聞く必要がありますね! セーチャ、トーニャ、さっきから叫んでいる異界人を拘束して事情聴取! 自分はえきどにゃ様から話を聞くのであります。繰り返しますが、職務の執行を妨害する方は逮捕か退去ですよっ! ワウガーくん、異常行動を起こす人が居ないか見張っていてくださいねっ!』
『ワウッ!!!』
『こら~♡ 待ちなさ~い♡』
『つ~かま~えた~♡』
そう、ニュックスニーニャちゃんが駆けつけてくれたんですね。これ以上の大変な騒動に発展する直前に現れて、あっという間にこの場を鎮圧。えきどにゃ様とプレイヤー双方の意見を聞いて、事情を理解したニーニャちゃんがすぐに双方が納得する結論を出した。
『よく聞くのであります! 静かに!! よ~~く聞くのですよっ! カジノ地下には経営に関係する重大な施設があって、ちょっとしたトラブルを抱えていたようであります。これを修理したのが軍……とある異界人達で、その功績を称えて関係者は先に通して良いと支配人は判断した結果、先行してラッシュなる施設を利用できていたようであります。このラッシュは経営施設とは反対方向にあるものの、経営施設が一般人の目に触れる現状のまま通すわけにも行かず、名声の高い異界人と関係者のみを通している状態であります』
「それが――」
『むっ!』
「……っ」
『よって! 大至急、経営施設側に目隠しの措置を行い、警備員の配置が完了次第、一般人にも開放するとのことであります。現在はその作業を進行している最中でありますから、もう暫く待って欲しいということであります。これでも尚、強行突破を試みる方がいらっしゃるのであれば、カジノの経営を脅かす脅威として職務を執行せねばならないのであります!』
警察にしてはちょっと喧嘩っ早い感じはあるけど、ちゃんと問題解決に乗り出してくれてて感動しちゃった。まあ正直私が入れないプレイヤー側だったら『先にプレイ出来る人がいるの、いいなあ~』ぐらいには思うけど、横暴だ! 権利だ! 通せ! ってゴネたりまではしないかなあ~……。
『…………地下の隔離作業には6時間程かかる見込みだそうであります。明日の夜明け頃には通行可能になるのですから、ご協力をお願い致しますっ!』
「さ、最初っからそう言えば、まあ……」
『最初っから言ってたのじゃ~! べぇ~~!!』
『えきどにゃ様も子供っぽい言い合いは控えて欲しいのであります! そこは反省して欲しいところであります!!』
『の、のじゃ……。ごめんにゃさい、なのじゃ……』
『では、解散してください! もし正当な理論を持って反論したい方がいれば、このニュックスニーニャが受け付けるのであります!』
「…………明日の朝には、出来るなら、良いか」
「んじゃもう寝るわ! 時間無駄にしたわ~~」
「ったく、くそっ……」
そんなこんなで、ニーニャちゃん達が見事活躍してくれてこの場は収まった。初狩り狩り以外でもちゃんと警察として機能してるのを目の当たりにして、ああ~生活がだらしない戦闘狂ってわけじゃなくてよかった~って心底安心したね。小柄なニーニャちゃんの眩しいドヤ顔を撫でに行きたかったけど、こっちには気がついてなかったみたいだからそのまま見送っておいた。今度休憩中のニーニャちゃんのところにお菓子でも持って行ってあげようかな。
「大変でしたね、えきどにゃ様」
『む? おお、リンネ~! そうなのじゃ、大変だったのじゃ~! でも明日から入場出来るという話がやっと通じたからの、これで問題ないのじゃ~!』
「地下に入場出来ても、ダンジョンに入れるかは別問題ですけどね」
『むむっ??』
「古代語理解してないと、装置起動出来ないんで目当ての施設は利用できないんですよ」
『…………明日もトラブルの予感がするのじゃ!! 先にニーニャに相談しておくのじゃ!! リンネ、ナイスな助言じゃったぞ~~!! ニーニャ、ニーニャァーー!!』
えきどにゃ様に挨拶しようと思ったら、更なるトラブルの予感を察知してニーニャちゃんのところに行っちゃった……。挨拶、まだだったんだけど……。帰ってくるのを待っててもいつになるかわからないし、どん太達をバビロニクスにどうやってか帰ってこられないか~って言って集めてるところだったし……。うん、帰ろう……。
◆ ◆ ◆
ギルドホテルのロビーに戻ってみたら、うんうん! 皆揃ってたね! おすわりして待ってるどん太、ちょっと眠そうなリアちゃん、テンション高いおにーちゃん、少し遠いところに意識が行ってる千代ちゃん、クール装ってるけど興奮してるマリちゃん、仲良く三人でじゃれ合ってるティアゼオデロナのトリオ、ずーーっとソワソワしてるヴァルフリートさん。
――――そして、何故かユキノさんが一緒なんだよね……!
「ユキノ、さん……!?」
「はいっ! 来ちゃいましたっ! 見てください、装備いっぱい買ったんです~っ! 神剣・無垢もししょ……あっ! 零姫様から受け取りました~!!」
「おお、じゃあ獄クリアぐらい行った~?!」
「はいっ! 若き日の零姫様に勝利して、剣術無双の称号を頂きましたっ!」
「ん……?」
「はえ……?」
私の勘が正しければ、ユキノさんは恐らく獄クリアとかそれ以上にもう、もしかして昇華転生前ぐらいまで行ってるんじゃないかなって……。
「あのあのっ! 転生って、どうすればいいんですか? どこに行けばいいかわからなくって……」
「あ~~」
凄い、私の思ってたより上だった。獄クリアも当然のように終えて、その後のお題もぽんぽんっとクリアして転生相当まで一気に行っちゃったのね……。センスの塊だわ、それだけの能力がある人なら数日で転生相当に行けちゃうのか、修行の剣士……! でもこれ、センスがないっていうか飲み込み悪いと最悪詰む可能性もあるんだよね。難しいところだわ……。
「後で一緒に行こう? それより、なんで一緒にここに?」
「お願いします~っ! あっ! ヴァルフリートさんと一緒に来ました~っ! 鱗がすべすべで、格好良かったんですっ!」
『助けてくれ』
「助からないから安心してすべすべされてて。じゃあもうちょっとすべすべしててね」
『ぐぅ……』
「はいっ!」
そっか、ヴァルフリートさんのすべすべが気に入っちゃったんだ……。涎垂らしてすべすべされるの、なんか怖いよね。でも慣れて? この先も多分こうだと思うから……。
『リンネ殿、ヴァハール王がだな……』
「あっ! その話聞きたかったの! なんで私の従者なんかになりたいの?」
『もうどこからか聞いていたのか! うぅむ、私の希望というのが一番大きいのだが、昔から外の世界に興味があったのだ。しかし大昔は魔族、我々のような龍人族など人にあらずとして扱われていただろう? だから外を知ることは出来なかった。それにヴァハールのこともある、守らねばならぬ国であったからな……』
「うんうん」
『わうわう』
「どんどん、今ふわふわで気持ちいいので動かないでください」
『わうっ……』
どん太もリアちゃんに暫くもふもふされてておくれ。それでそれで? 外の世界に興味があって、どうして私の従者が良いってなるの?
『今のヴァハールは魔神様の陣営の傘下に入った。地下の国には転移遮断や隠蔽工作が施され、強力な守護獣もお借りしている状態だ。うむ、必要ないのだ……。私が……』
「それで、こっちに鞍替えしたいってこと?」
『いやいや、そうではない。悪く捉えないでくれ! そこで私はヴァハールに相談したのだ、昔の力を取り戻したい、いやそれ以上の力を手に入れて、今度は魔界を守る龍将となりたいと。そこで私が最終的に行き着いたのが、リンネ殿の元で修行をしたいというところに至ったのだ……』
「ん~~。なるほど、なるほど……」
なるほどね、シャウタの戦いで何か思うところがあったのかな。それまでは仮従者表示とかされてなかった気がするし、その後そう思うようになったってことかな……。
『(*´ω`*)』
「あ……。よいと、思いまする……。だいえっと……だいえっと……」
『わうっ! (物知りだし、一緒に居て楽しいよっ!)』
「お勉強も飲み込みが速いですし、教えてて楽しいです。昔のことを教わるのも楽しいですし……にゃぁ~……」
「リアちゃんはもう眠そうだな。我も居てくれると嬉しい、アルテナの作成の際にも一部助言を貰ったんだ」
「ヴァルフリートさんもこれからずっと一緒なんですか~! お花の名前もっと教えて欲しいです~!」
「一緒にいる、楽しいです! 訓練はとても強い、つくねさん、対抗できる思います!」
「デロナとはちょっと違うけど、ドラゴンのお友達が増えると嬉しい~!!」
なんと、私以外の全員を既に味方にしていたとは! やるね、さすが龍将。知略もなかなかのものだよこれは。まあそれは冗談にしても、最近割とヴァルフリートさんと一緒に行動してるのを目撃してたから、仲良くやってるんだろうな~とは思ってた。意外と皆と馴染んでるし、うん……。お迎えしちゃおうっか! これまで出会ってきたドラゴン達特有の横暴で強情なところがあったりしたら嫌だなーと思ったけど、こっちのほうが恐縮しちゃうぐらい腰の低い紳士的なドラゴンだし……いいよねっ!
「んっ! じゃあ、ヴァルフリートさんはこれから正式に私の従者ってことで! よろしくお願いしますね、ヴァルフリートさん!」
『おお……! このヴァルフリート、魔神バビロン様に誓ってリンネ殿に誠心誠意仕えさせて頂く!』
『システム:ヴァルフリートが従者として正式加入しました』
「まあ従者って言ってもそう固くならないで、家族みたいなものだと思って接してくれたら嬉しいな。いきなりは無理だと思うから、ちょっとずつね!」
『ああ、承知……わか、わかった! それではまず、一つ頼みがあるのだが……』
お、正式加入して一発目になにか爆弾投下かな~? こっちはリアちゃんの王族カミングアウト爆弾あたりから耐性があるんだよ? 今更何を言われても驚いたり困ったりせずに頼みぐらい聞けますとも~。
『ユキノ嬢を、どうにかしてください……!』
「いやです~っ!」
「ん~~……」
すみません、従者になって再度それを言われましても、ユキノさんを引き離すのは難しい問題です……。とても困りましたね……。
「あ! ユキノはリンネさんの一番弟子ですっ!」
「え? あ、そういえばなんかそんな呼ばれ方してた気がする」
「ヴァルくんは、ユキノより後に入った弟子です! 弟弟子です! ユキノが姉弟子ですっ!」
『…………いや、そんな、まさか』
「姉弟子命令ですっ! 弟弟子くんは、姉弟子の命令を聞いてくださ~いっ!」
『リンネ殿……! リンネ殿……!!』
ユキノさん、墓穴を掘ったね……! その姉弟子権限は落とし穴があるのよ!!
「じゃあ師匠命令です。姉弟子は弟弟子に迷惑を掛けすぎないように、節度を持って接するように~!!」
「あ! そんな~……! うぅぅ~~……」
『は、離れた……!』
『わうっ!』
「すべすべよりふわふわのほうがいいです」
「ふわふわ……。綿あめ、食べとうございます……。あ、いけない……」
『(;´∀`)』
これで抱きつきモンスターゆきのんから無事解放されたね、良かったねヴァルフリートさん……。それと千代ちゃん、ふわふわって言われただけで綿あめ連想するのはやばいよ……。少なくとも食事したの3時間前だよ? もうちょっと、もうちょっと我慢しよう……!?
「今度はティアが抱きつきます~っ! わ、すべすべです~!」
「ゼオも気になります!」
「デロナも~!」
『うお、うお、おぉ……!?』
あ、この人常に誰かには抱きつかれる運命かもしれない。なんか苦労人の気配を感じる、これから頑張ってね……!





