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プロローグ

異世界召喚物を書きたかったんで書きました。

ある意味王道なお話になると思います。


 今、僕は、僕たち学級三十九人+先生は全く見た事のない場所に居た。正確に言うのなら、西洋風の鎧を付けた男達とローブを付けた老齢の男、そして王冠を付けた髭を生やした中年の男が居た。中年と言ってもビール腹じゃない、むしろ貧弱と言うイメージが付きそうな程弱弱しい身体だった。ただ、その目は何かを企んでいるようにも見えた。

 雰囲気としては中世の城の中のような感じだ、あまりにも絢爛豪華すぎて目がチカチカとする。金色の壁や宝石が付いた壷があったりなど見た目からして高価な物だと理解した。あれを売ったら一体何百万円するんだろうか?

「おお!! 勇者と異世界の者達よ、よくぞ我が召喚に応じてくれました!!」

 王冠を付けた男はそう言って両手を高々と振り上げた。そして周りに居る騎士達が静かに動いて持っている木の棒で簡易的な檻を作った。と言っても後退できないようにしたと言った方が正しいけど。

 それは幸いにも俺以外気付かなかったらしく逃げられないようになっているって事に誰もが気付いていなかった。いや、気付かないようにしていたと言った方が良いだろう。

 異世界から来て右も左も分からない、そんな状況に大声で自身に注目を集めさせて気付かない内に逃げられないようにする。かなりの策士だ。

 本当、爺ちゃんと婆ちゃんの話を聞いていて良かったよ。爺ちゃんが異世界を救った英雄で婆ちゃんが異世界人(?)なんだから。

 少なくともこんな話を信じるのは子供の頃だけだろう、でも僕にはそれを信じるだけの確信がある。って言うかこの身体が異世界があると言う証明だ。

 でも、この世界は爺ちゃんが行った世界じゃ無さそうだ。

 何て言うか、聞いていた話と違う。いや、爺ちゃんが救った時代から何百年も経っているんだからしょうがないけど何かが違う。ここには懐かしさが無い。

 それに、何かの事故で異世界に行くとかじゃなく呼び出されるなんておかしすぎる。

「……用心していた方が良さそうだな……」

 ポツリと、小さく呟いた僕の呟きは周りの騒ぎにかき消された。

「お、おい! ここは何処なんだ!?」

 一人、誰かがそう叫んだ。すると周りの皆も騒ぎ始めた。それは当然だろう、それが普通の人間の反応だ。

 だけど向こうは僕達の言っている言葉をまるで聞こえていない様子で近くに居る男に話しかけている。

「おい、例の物を持ってこい!」

 王冠を被った男がそう言うと鎧を着けた騎士といった感じがする男が一本の剣を男に差し出した。

 そしてその剣を持ち上げると勝手にその剣が浮いて僕らの方に飛んできた。そしてそれは髪の毛を金髪に染めているこのクラスの不良、『霞 正吾』の手に収まった。

「な、何なんだよ……」

 正吾はそれを持って呆然としている、周りの人間たちは正吾を見て――

「貴方が勇者だったんですね!」

 ――そう言った。

 周りの皆が驚いている。それも当然だ、あの不良が勇者だなんてありえなさすぎる。むしろ魔王の方が相応しいだろう。

 それだけ性格が酷い奴なんだ、アイツは。

「では勇者の方は私の後に、それ以外の方はオルソラ、そこの白いローブを付けた魔法使いの後に付いて行ってください!」

 王冠を被った男はそう言って正吾の腕を掴み、側近の騎士と思われる男二人と一緒に奥の部屋へ進んでいく。正吾は必死になって抵抗しているようだけど側近の騎士達のせいで全くと言っても言いほど身動きが取れていなかった。

 そして白いローブを付けた老齢の男が他の騎士達に何かを耳打ちし、ある物を持ってくる。それは黒色の首輪だった、ただ良く見ると内側の方に血で書かれたかのような文字でなんて書いてあるか分からない文字が刻まれていた。その数は三十九個、今この場に居る召喚された人数にちょうどだ。

 騎士達はそれを持って僕たちの首に着けて行く、抵抗した人も居たけど明らかに鍛え方が違う。だからあっと言う間に首輪を付けられて大人しくなっていく。

 正直言って爺ちゃんに鍛えられている僕でもこの数を相手取るのは無理だ。いや、無理じゃないんだけど、少なくとも三回は死ぬだろう。まぁ、今は何も行動しないけど。って言うか出来ない。

 今ここで僕のことがばれたら間違いなく厄介な事になる、だって僕は――

「よし、全員ついて来い!」

 騎士の一人が僕達に向かってそう言った。後ろに居る男達は槍の先端で僕らを軽く突っついて前に行かせる。

 ……うん、これはちょっとヤバイな。そもそもさっきあいつ等魔法って言ってたし、僕そんなに魔法詳しくないから多分何も出来ないなぁ。

「はぁ……」

 僕は軽く溜息を付いて、黙り込んだ。



 あの後、僕らは奴隷のように馬車馬の如く働かされた。休もうとしたら鞭で叩かれて、少しでも泣き言を言ったら問答無用で殴られる。ようするに恐怖政治のような感じだ。でもそれは男子だからだろう。

 女子は別の部屋に移された。多分、いや、間違いなくアレな事になっている筈だ。さっき別の聞こえてきた女子の絶叫やら喘ぎ声やらが聞こえてきたから間違いないはず。

 多分この世界は男尊女卑なんだろう。もしくは、女性は子供を生む為だけに存在するとしか考えていないとか……。

 うん、十分ありえる。

 でも、確かな証拠が無い。

「と、言う訳で……この世界の事を教えてくれないかな?」

「何が、と、言う訳だ。全く分からねぇけど……お前が聞きたい事は十分に分かったぜ」

 そう言ったのは金髪の中年だった。でもビール腹じゃない、むしろ良い男だ。

「まぁ良いだろう。この世界はな、人間以外にも色々と居るんだよ、種族がな」

「それってエルフとか?」

「ああ、居るぜ。エルフにドワーフ、オークやゴブリンとかな。エルフやドワーフは兎も角オークやゴブリンは討伐対象だけどな」

 僕は男の言葉を聞いて胸の内から何かが湧き出てきた。エルフかぁ、エルフ耳に触りたいなぁ。

「もしかして吸血鬼とか不死鳥のような不死の存在も――」

「居るわけねぇだろ、そんなのはこの世に存在しない『幻獣』だぜ。お前の世界にも居なかったんだろう?」

 どうやらこの世界には存在しないらしい、まぁ僕が生まれた世界でも存在はしなかったけど。

 でも吸血鬼は兎も角不死鳥は存在する事を知っている。

「まぁね」

「で、後残っているのが……魔人だな」

「魔人?」

「ああ、人間と敵対している種族だ。人間と大差ない癖に魔力何か馬鹿でかくて非常に凶暴なんだぜ。外見は白髪、って言うか銀色の髪の毛で紅い目をしていて……こめかみより上の辺りに下向きに捻じ曲がった角を生やしているんだ」

 男はそう言った。なるほど、危険なようだ。

「へぇ、そうなんだ。後魔法って言うのは?」

「魔法は魔法さ。単純な生活魔法から特殊な時にだけ発動できる制約魔法、そして主な五大属性魔法だな。五大属性魔法って言うのは火、水、土、金、木の魔法だ。中にはこれらに含まれない奴も存在するんだけどな。勇者だけが持つ退魔が良い例だな」

 なるほど、この世界の魔法はよく分かった。僕はきっと火だろう。

 体質的に。

「それでさ、僕ら異世界人がここから逃げ出したらどうなるの?」

 僕は男にそう言った。最も聞きたかった事だ、もしここから逃げ出す時が来たらどうやったら逃げ出せるかを。

 すると男は笑い出した、何がおかしいのだろうか?

「止めておけ、首に付いている奴隷の証がある限り逃げられないんだからな」

「奴隷の証?」

 てかこの首輪やっぱりそういう物だったのかよ。

 僕のそんな思いを知らない男は淡々とした感じで話し出す。

「それがある限り自分は奴隷だって事になるんだよ。だから誰も助けてくれない、むしろ捕まって売られるだけだ。いや、それ以前にその首輪には今何処に居るかを探知できるようになっているからな。壊そうとしても無駄だぜ、それ自体爆弾なんだからな。しかも一度着けたら二度とは外れない代物だしな」

「ふぅん……成る程ね」

「それじゃぁな、明日は早いから速く寝ろよ」

 そう言って男は僕の牢屋の前から立ち上がり出て行った。男が持っていたランプと言う名前の明かりが消えた事により僕以外の人が一斉に騒ぎ始めた。

 男子は何でこうなってしまったんだろうか? って言い合い女子は静かに泣いていた。よほど最悪な事をさせられたらしい。

 先生はそんな生徒達を慰める、けど声だけしか聞こえない以上どうしようもなかった。

「……さてと、逃げるか」

 僕はそう言って自分の首もとに両手を当ててゴキッ! と音を鳴らす。

 すると僕の見ている物が回転し、首の無い自分の体を写していた。ただ血が飛び散る事はなく頭部が無くなった事による傷口ともとれる場所からは綺麗な炎が出ていた。

 身体は静かに首輪を掴んで抜き、音を立てずに床に置いて立ち上がった。僕の頭部を持って。

 第三者から見たらこれってホラーなんだよな。まぁ、誰も見ていないけど。

「……しょっと」

 そう言って身体を動かし、頭部を首に乗せる。すると炎が身体を接合して何事も無かったかのように消え去った。

 僕は自分の体に手を突っ込んである物を引きずり出し、抜いた。

「はぁ……!!」

 僕は壁を炎が纏った日本刀で切り刻んで蹴り飛ばす、数秒してから軽くドンッ! と落下音がした。

 どうやらここはかなり高い場所らしい。

「まぁ、それでも僕には関係ないけど」

 そう言って僕は飛び降りる。普通の人間なら間違いなく死ぬだろう。でも僕は違う。

 僕の身体が炎に包まれる、そして形状を変え炎の鳥になった。


「本当、爺ちゃんが行った異世界が良かったよ」


 僕はそう呟き、空を飛んだ。皆も助けたかったけど、助ける方法が無かったから諦めるしかなかった。

 皆が僕のように首が落ちても生きていられたら良かったのに。

 まぁどうしようもない事は諦めるか、今はそれよりもエルフだ、エルフ耳を触りたい。


 そう思いながら、僕は夜の異世界を飛び去った。



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