第11局 開催・純ママ杯~予告編~
「今日の『ツモってあそぼ!』はユエさんと純ママをゲストにお迎えして、雑談しながらコラボ麻雀だよ~!」
「このメンツでだいたい固まってきたよね」
いつものメンバーで集まり、ダラダラと雑談しながら四麻を打つ、そんなコラボ回。
ユエと純ママの立ち絵が画面に映る。
「本日もよろしくお願いいたします」
「とはいえ、アタシたち、毎晩のようにリスナーとしてこのチャンネル見てるし参加してるから、あんまり変わり映えしないわねえ」
純ママの言葉に『まあ、固定メンツのほうが安定感あるしいいんじゃね』とリスナーのコメントが流れた。
登録者数100人規模のチャンネルは、リスナーもだいたい固定されており、温かみのある雰囲気。
「でもサプライズがある方が人生にも潤いとツヤとハリが出るわよぉ」
「お肌みたいだね! でもたしかに、なにかびっくりすることがあったほうが取れたて新鮮ピチピチな感じする!」
「お魚かな?」
わりとどうでもいい話をしながら雀卓を囲む、それこそが雑談コラボの妙である。
「メンツといえばさ、麻雀由来の言葉って意外と生活に浸透してるよね」
レンちゃんがそんな話題を振った。
「えっ、メンツって麻雀由来なの? ……あっ、シュンツとかコーツとかのこと、たしかにメンツっていう!」
「そうそう。わかりやすいやつだと『テンパる』とか『アンパイ』とか」
「『ワンチャン』や『全ツッパ』など、挙げればキリがありませんね」
「『一気通貫』とか『断トツ』なんかもよく使うわよね。……あ、それロンよ」
「うぎゃー!」
純ママについでのようにロンされて悲鳴を上げる、テンちゃんの日常風景である。
「ねぇ、アタシ考えたんだけどさ」
親番が回り、配られた手牌を純ママがじっと見ていた。
「なに? 面白いこと?」
「そりゃもうとびっきり楽しいことよ」
テンちゃんと純ママの会話に、リスナーが『純ママが楽しいことってろくなことじゃなさそう』と茶々を入れる。
「なによぉ、失礼ねぇ!」
「……とりあえず話だけ聞こうかな」
「レンちゃんもなんか怪しんでなぁい?」
純ママはちょっと口をとがらせるが、3人が聞く姿勢になると、ある提案を始めた。
「そろそろアタシたちもテコ入れが必要だと思うのよ」
「なに? メタ的な話?」
「そうじゃなくて……いや、そうなのかしら? とにかく、毎日変わり映えのしない配信だけするより、アタシは刺激が欲しいわけ」
「それで? なにかするの?」
「アタシが主催になって、麻雀大会を開催するわ」
テンちゃん、レンちゃん、ユエも、リスナーも、その一瞬、時が止まったように静まり返る。
「――……ええーっ!? なんか楽しそう!!」
もちろん、我らがテンちゃんがそんな美味しそうなエサに食いつかないわけがなかった。
「麻雀大会。興味深いですね。詳細の開示を希望します」
ユエがクイッとメガネを指で押し上げると、レンズがキラリと光る。
「そうね、今思いついただけだから、詳細はあとで詰めるけど。とりあえず個人戦。参加者の数に合わせて何卓かに分かれて対局、勝ち上がった子が決勝って感じで考えてるわ」
「面白そうだね、テンちゃん。もちろん参加するんでしょ?」
レンちゃんが微笑みながら隣の相方を見た。
「参加したーい! リスナーさんたちとも一緒に打てるんだよね!?」
「そうね。まずは参加申込フォームを作って、参加者をSNSで募るわ。ここの配信を見てるリスナーだけとは限らないけど、小規模のローカル大会が成立する程度には集まるといいわね」
「わー! 楽しみ! レンちゃんも参加するよね!?」
「もちろん。テンちゃんに当たっても手加減しないから」
「うん! お互い頑張ろうね!」
わいわいと大会の話題で盛り上がる4人。
リスナーも『本当に開催されるなら参加してみたい』『役満賞とかもあると楽しそうだな』と、大半がいい反応だ。
「ところで、その……純さんは大会に参加するのでしょうか?」
ユエが控えめに質問する。
たしかに、大会主催者が一番の台風の目になりそうだが――。
「いやねぇ、アタシは参加しないわよ! アタシには実況・解説・賞の授与とか大会運営で大忙しなんだから!」
純ママの言葉に、ユエは安心したような落胆したような、不思議な表情を浮かべていた。
配信はそのまま、大会の詳細ルールを詰めたり、優勝・準優勝以外にも賞を考えたりと、4人とリスナーを交えて作戦会議を行うことにする。
大会は9月頃を目処に開催の予定が立てられた。
今は6月なので、3ヶ月の猶予がある。
みんな、「段位戦に潜ったり、友人と一緒に打って特訓しなければ」という結論に至った。
「必要だったら、この参加型配信でみんなで鍛える、っていうのもいいかもね」
「あら、いいわね。大会参加者同士で切磋琢磨。麻雀って青春よねぇ」
「よーし、参加するからには優勝する気持ちで頑張るぞ~!」
――正直、今のテンちゃんの実力では優勝は険しい道のりだろう。
しかし、その気持ちを否定するような人物は、この配信には存在しない。
みんな、夢を語る子供を見るような温かい視線を向けている。
『ツモってあそぼ!』の配信終了後、純ママは早速夜なべして参加申込フォームを作った。
SNSで参加者を募ったところ、テンちゃんたち3人を含めた16名が名乗りを上げる。
ローカルではあるが、いよいよ本当に大会に参加するという盛り上がりを見せたのだ。
テンちゃんとレンちゃんも、毎夜のように一緒に対局をして、腕を磨いたのである。
「楽しみだね、テンちゃん」
「うん! 優勝と準優勝で賞金を出してくれるって、さすが純ママだよね!」
それは、現金での金一封……ではなく、ウェブ上のどこの店でも使えるようなオンラインギフトカードであるが、大会参加へのモチベーションを上げるには十分な賞品であろう。
「テンちゃんは、優勝したい?」
「うーん。優勝する気持ちで頑張るとは言ったけど、正直、優勝は厳しいと自分でも思ってる。役満賞狙おうかなあ……」
試合中に役満を成立させたら、賞金は出ないが麻雀牌の形をしたクッションがもらえるとのことだった。
「私もちょっと欲しいな、麻雀牌クッション……」
「ね。レンちゃんも役満狙う?」
「どうしようかな……優勝はしたいんだよね。優勝ついでに役満も作れたら、って感じになりそう。でも、テンちゃんと一緒に麻雀してきた時間、無駄じゃなかったって証明したい」
「いいね。大会楽しみだな~。ワクワクしてきた!」
――こうして、立直姉妹の夜は更けていく。
初めての麻雀大会に向けて、熱い夏が始まろうとしていた。




