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第24話 「再確認」



国王からの指示は絶対。

そう決める条文はない。だが王の命令は絶対であるとわかっているのだ。過去の行いがそう物語っているのだ。


「わー、綺麗だなあ」

「…そうだね」


レロスは目を輝かせるように眺めていた。

一方リーナスは正教会越しに国王からの暗示を受けたわけで、花火どころではなかった。レロスははしゃぎながら横目でそんなリーナスを観察し異変を感じ取った。ただならぬことが起きかねないのだと思った。


「………」

「……リー?」

「………え!なに!?」

「…大丈夫?」

「大丈夫だよ」


レロスはその「大丈夫」が「大丈夫じゃない」と直感で感じ取った。故に、速やかに行動に移したかった。体調が悪くなったのか?それとも…あれか!?それとも…あのことか…!?

しかしその考えを膨らませすぎて、最悪を考えてしまった。そう、別れたいのかもしれない、と。

それはまずい。パーティ解散の危機だ。


「…なんか僕まずいことした?」

「いやしてない。あれだよ。とても大事な用事ができたの」

「なに…?」

「あのね、私王城に呼ばれてるの」

「はい?王城?」

「うん、王城。悪いことじゃなくて、多分いつもの労いなんだろうけど」

「なんだ、何されてんだ!?やらしいことされてんのか!?」

「違う違う!食事会だよ!!王様はそんな淫らな人じゃない…はず」

「ちょっと怪しいな」


花火が打ち上がっている中、そんな会話を続ける。

リーナスが言うには、こうらしい。

今回の食事会は私だけでなく最近行動を共にしている黒い男も連れてくること…というものだった。


「別に問題なくないか?」

「うーんでも心配…絶対どこか行かないでよ?」

「え?わかってるけどそれくらい…当たり前じゃん」


レロスはとんでもないフラグを立てたような気がしたが、全スルーした。まずは今を楽しもうと、2人はそう思って寄り添い、打ち上がる様々な花火を楽しんだのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そんなこんなで海岸から帰宅している最中だった。


「私は王国軍近衛騎士隊第一部隊長、“ルリベル”。リーナス殿、レロス殿。お迎えに上がりました」

「早くない?あっちで待っているって言ってたよね」

「申し訳ありません、国王陛下は早く来られないか、と何度も申されていたもので」


国王はどうやらせっかちのようだ。

レロスは自分の名前すら知られているのが驚きでしかなかった。


「それで、なんで僕までお呼びなんですか?」

「国王陛下によれば、『娘が興味を示している』とのことです」


リーナスの雰囲気が一瞬で華々しいものから黒く禍々しいものに変わり、レロスはそれを察知し、リーナスから距離を取った。それはそれは、もう綺麗なまでの一転だった。


「ほほう……?」

「ま、まあ!何がともあれ行きましょう!遅くなるより早い方がいいでしょう?」

「そうですね、では参りましょうか」

「レロス、気をつけていくんだぞ」

「おう、そっちこそ『色欲』を頼んだ」


あの戦いの後『色欲』は穏健派のアジトの地下拘置室にて拘束されている。レロスの「超新星爆発」の効果の一つ、闇属性の発散を促した関係でここ数日意識不明である。


「まあ何かあれば私直々に向かう」

「おう、了解」

「…準備はよろしいですか?」


ルリベルはそう言っているがその隣にいるリーナスは「ふふふ…」と不気味な笑みを浮かべながら禍々しいオーラを放っていた。


「では、テレポート!!」


そう言ってレロスたち王城組一行はルリベルに連れて行かれたのだった。


「レロス…生きて帰ってくるんだぞ…」


ウヌクは冷や汗を流した。

おそらく国王の娘は、レロスその人を狙っているのかもしれない。それを考えれば、おそらく王国軍との戦闘も…いや、流石にないと思いたい。万が一のために…いやもう彼は言っているわけだし…どうしたものか。


「強く生きろよ…レロス」


ウヌクは希望なさげに愛想笑いを浮かべた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「それではどうぞ、こちらへ」

「ふぇええええ…」


王城の中は華やかで、それはそれは中世の王国の城といった感じ。シャンデリアがたくさん、玉座へ一直線にカーペットが敷かれていて…


「ようこそご来人。我が名はヴァルニビア5世。あなたが「紫」の横で噂のレロス殿ですかな?」

「…ご丁寧にどうも、噂はかねがねみたいですね。仰る通り、私がレロスです。」


国王は年齢は見た感じ35〜40歳くらいの優しそうなおじさんだった。言ってしまえば近所にいるお金をくれるおじさんみたいな感じである。


「そうか、来てくれてありがとう。私の娘が君に興味津々でね」

「娘さんが?話には聞いていたのですが…」

「ああ、そうですよ。そこにいる彼女が、我が愛しの娘です。」


そう国王が言うと金髪の美女が一歩前へ出てから一礼した。レロスは内心どうでも良かった。むしろ怖かった。リーナスが。あのリーナスが。真横にいるリーナスが俺を見ている。いつも以上に、とんでもない目線で。

そう言ってリーナスはレロスにだけ聞こえるようにボソッと喋る。


「あの泥棒猫…私の彼氏を奪おうと…?」

「泥棒猫??????」

「…レロス殿、娘の相手、ご不満等なければ任せてもよろしいでしょうか?」

「ええそれは別に構いませんよ」


レロスは即答した。この願いを下げれば自分の王国での住まいが詰むと直感で感じた。それほどまずいと思った。


「ではカーミラ、レロス殿にご無礼がないようにな」

「わかりました!で、ではレロス様、よろしくお願いします!!」


そう言ったリーナス並みの美少女のカーミラはレロスの手を引いてどこかへと連れていく。


「へ…?」

「レロスさん????????????」

「いやちがっ」


レロスはリーナスに弁明をしようとしていた。

しようとしたが、できなかった。カーミラの力は物凄かった。為すすべなしだった。


「国王陛下」

「…どうされましたか?」

「あの男は…レロスは─────。」


その後リーナスは国王に向かって国王が到底信じられないことを口走ったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「───それでそれで!?」

「ええ、まあそれで闇属性が発現しましたね」


レロスはカーミラを前にして、そう言って自分のことを話した。……多少盛ったが。

カーミラは疑うことを知らず、レロスが言うことを信じた。というのも、


「私はレロスさんの功績を知っているのです!先日の魔王軍過激派筆頭の七大幹部『色欲』戦では穏健派の七大幹部『傲慢』と協力し戦線を支え、闇属性を駆使し有利に戦いを進めたことを!」

「よく知っておられるんですね…」

「ええ!だからこそ私はあなたのことが気になって仕方がない!」


その言葉はどこかレロスの好奇心と似通ったところがあった。

レロスは懸念を抱いた。即座に聞いて真否を明らかにしなければと。


「それが異性への好意ではないと願いますよ?」

「否定はしません」

「はい?」


突然のカミングアウト。

────カーミラはどうやらレロスに好意を抱いているようだった。

レロスはまずかった。アプローチされて浮気してはまずい。今のリーナスはおそらく王国を場合によっては滅ぼすと思われる。むしろそうとしか思えない。


「あのカーミラさん。離れてください」

「なんですか、私と結ばれれば王国を自分のものにできますよ!?」

「あの、そんなんどうでもいいんですよ。僕はすでに心に決めた人がいるんですよ!それで誘惑とかマジでやばいっす!!ガチでやめて!!!ねえ!!!!!」


レロスは顔面蒼白でカーミラを引き離そうとする。

カーミラは言うことを聞かない。むしろ押し倒そうとしてくるばかりだった。


「やめてください!!!!リーナスが!!!!リーナスがやってくるから!!!!あなた死にますよ!???!」

「…へ?『紫』の名前がなんででるんです?」

「察しが悪いですね!リーナスですよ、俺の心に決めた人は!!」


カーミラは青ざめる。先ほど広間でおぞましいオーラを放っていたのはまさかこれが理由なのか。

と、いうことは。すでにリーナスは…


「いけません!落ち着いてください!お願いしますから!!」

「止めないでください。私の彼氏を汚そうものなら…王族でも容赦しません…」


そう言って扉は破壊された。


「こんにちはカーミラ王女。私の彼氏を返してもらいましょうか」


これまで史上一番怖い顔をしたリーナスがそこに立っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


気づけば王女を逃していた。

リーナスを止める。その一心で。

何もできない。

無力だった。

武器もない。

力もない。だがどうだ?

最初に比べれば力はついた。ならば、どうするか。


「リーナス!!落ち着け!僕は何も手を出されてないし出していない!本当に話をしていただけ!!」

「レロがそう言ってても無理だよ。あの泥棒猫は昔から何も変わってない」


どうやら過去に何度も同じようなことがあったらしい。まずい。こうなると難しい。どうやっても「日頃の行い」が勝ってしまう。

なら、苦痛だがやるしかない。


「なら俺をまず倒してからいくんだな…!!」

「うっ…」


そう言ってレロスの腰部のポーチから立方体が飛び出す。臨戦態勢を整える。

一方のリーナスも戦闘態勢を構える。構えようとしていた。レロスがとても早かった。


「糞食らえだよ、食らえッ!!“ポラリス”!!!」


そう言ってポラリスを発動する。

かなり弱めで、リーナスならすぐに払い除けれるくらいの黒いモヤを放つ。そして即座にレロスはリーナスを押さえつけた。


「落ち着け!!俺はここにいる!それで十分じゃないのか?!」

「言ってるでしょ!?あのクソ女一回懲らしめないと…」

「そういう問題じゃねえ!ここがいつものクエスト場ならまだしもそうじゃない!!王城だぞ!?いいわけがない!!」


レロスの必死の弁明は一理あった。もしここで大騒動を起こし、王城を滅茶苦茶にすれば、どうなるのか。

王国軍から狙われ、追われる形で住処は無くなる。それはレロスにとってもリーナスにとっても不都合だった。


「うう…でも…」

「ああ!?何がでもだ!?不満があると?そう言ってるのか??!」

「ちょっと待ってよ落ち着いてよ!今度はレロスがおかしいって!!」

「何がだよ!!急に不機嫌になったかと思えば王城で大暴れだと?!昔がなんだ!?俺たちが呼ばれた理由はなんだよ?!」


リーナスから見て、レロスは『憤怒』に包まれているようだった。それは見てわかった。明らかいつもの態度ではない。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い────。

そして最悪のパターンが頭をよぎる。

────『憤怒』がすでに王国内で悪さを働いているのではないか、と。

七大幹部の『憤怒』は、王国内では甚大な被害をもたらす七大幹部として知られる。


でもおかしい。『憤怒』の活動報告はここ数年聞いておらず、少なくとも前回は王国のちょうど反対側の東半球に位置する島国での暴動事件の主犯など、東半球での活動が大半だった。そんな彼女がわざわざ来るだろうか?しかしそうだとすれば、レロスは心の底からリーナスとカーミラに怒っていると。そしてリーナスに申し訳なさを感じているとも。


「れ、レロス…?」

「なに」

「ご、ごめんなさいぃいぃいいいい!!!許して怖いよお!レロが怖いよお!戻ってよお!!帰ってきてよ!!」


慌ててそう縋ってくるリーナスを見たレロスは顔面蒼白で見つめた。

────自分は今さっきまで、なんてひどいことを言ったんだ、と。

反省の念、自責の念。全てが押し寄せる。


「……ごめん、俺死んでくる」

「え?待ってよ、そんなに早まらないでよ、私を置いて行かないで?ねえ!?ちょっと?!」


リーナスはレロスとの関わり合いで考えすぎは良くないと思った。レロスのことをしっかり信頼しようとも思った。一方レロスもまた関わり方には十分気をつけようと思ったのだった。


「まあ落ち着いてくれた?」

「そっちこそ」

「ごめんってば」

「僕こそごめん」

「いいよ」


そう言ってお互い謝りあってから、誤解を解いた。

まずリーナスが抱いていた、『憤怒』の異能について。


「『憤怒』? 会ったこともないけど、どしたの?」

「その様子だと何も…あ、さっきのって本心?」

「え、うん…本当にごめんね」

「いいってば」


もう一つは、レロスから問われた。

過去にカーミラと何かあったのか、と。


「うーん、何かを取り合いしたのは覚えてるよ」

「えっと、その何かって?」

「執事さんだったかな、うん。執事さんだよ」

「人気だったってこと?その執事さん」

「そうだね、当時の私とカーミラからは一番人気だったと思う」

「………ところでリーナスさん」

「はい」

「扉はどうするんですか」

「………あ。」


そう言ったリーナスを見たレロスは、やや怪訝そうな顔をする。完全に忘れていただろ、と言った顔をする。


しばらくして王国兵が押し寄せてくる。


「『紫』殿!!!扉破壊はおやめくださいと言ったでしょう?!?」

「あ、えーっと…ごめんなさい」

「許されませんよ流石に!!」


その後はしばらく王国兵からのお叱りを受けるリーナスが俯いている姿を見て、レロスは「何してんの」という顔をしたのだった。

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