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第1話 電話は、そんなにしなくていいから。
「電話は……そんなにしなくていいからね」
娘の咲香の結婚式の帰
り際、そう言われて、言葉が出なかった。
どういうことだろう。
数日は、言われた通りに我慢した。
スマホを手に取っては、そっと置く。
でも、やっぱり気になってしまって。
「咲香、ちゃんとやってるの?」
「大丈夫だってば」
それでも、声を聞けたことに、ほっとする。
――よかった。ちゃんと元気だ。
そう思ったはずなのに。
時間が経つと、また不安になる。
あの言い方、やっぱり無理してたんじゃない?
本当は困ってるんじゃない?
気づけば、また電話をかけていた。
一度で出なければ、時間をあけて、もう一度。
それでも出なければ、さらにもう一度。
そして、ある日を境に。
呼び出し音だけが、虚しく続いた。
出てくれない。
何度かけても、出てくれない。
――どうして?
胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。
このまま、もう声が聞けなくなるかもしれない。
そう思うと、不安でたまらなかった。
じわりと、目の奥が熱くなる。
誰もいない部屋が、やけに広い。
咲香が幼い頃に夫を亡くし、私1人で頑張ってきた。
咲香と一緒なら、何があっても大丈夫だったのに。
「もう、私は……必要ないのかな……」
ぽつりとこぼした言葉は、やけに重く響いた。
その瞬間、視界がぐらりと揺れた。
――
……ここは、どこ?




