第三十二話 大浴場での入浴
--ライオネルの屋敷 大浴場。
大浴場はライオネルの屋敷とは別の建屋にあり、渡り廊下で繋げられ、木造で作られた結構な大きさのある建物の中に作られていた。
土台に「礎石(石束)」を地面に置き、その上に直接柱を立てる木造建築は、木材が常に空気に触れるため、乾燥しやすく、耐久性が高い利点があった。
対照的に長方形の大きな浴槽は、四角い切り石を組み合わせて浴槽を作ってあり、保温性に優れていた。
広い大浴場の角に長方形の浴槽が置かれ、ぬるめの温度の温泉で満たされており、源泉が常時注ぎ込む、かけ流しになっていた。
ゲオルグは、長方形の浴槽の一番奥の角に座り、肩まで温泉に浸かっていた。
広い大浴場は温泉から上る湯気が立ち込めていたが、透き通った、ぬるめのお湯は心地良く、一日の疲れを癒してくれる。
(『豊穣の女神が祝福した温泉』っていうのは、本当みたいだな……)
ゲオルグが浴槽にもたれ掛かって寛いでいると、クラウディアの声が聞こえてくる。
「みんな、こっちよ」
「え!?」
クラウディアたちは、ゲオルグがいるのを気に留める様子もなく、浴槽に入り温泉に浸かる。
ゲオルグの向かいにクラウディアが座り、その隣にゾフィー、エミリア、カタリナ、エリーゼと並んで座る。
ゲオルグたちは、この街で入浴することなど想定しておらず、何も用意していなかったため、獣人たちがハンドタオルを用意してくれていた。
クラウディアたちは、それぞれ湯船に髪がつかないように髪を結い上げて、長方形の小さなハンドタオルを身体の前に当て、胸などを隠して入浴しており、ゲオルグも慌ててハンドタオルを股間に当てて隠す。
ゲオルグは尋ねる。
「クラウディア! ゾフィーたちまで! どうしたんだ!?」
クラウディアは、悪びれた素振りも見せず答える。
「『どうした』って。……ゲオルグが『妃と入浴する』って言ったんじゃない」
ゾフィーもクラウディアに続く。
「そうですよ! ゲオルグ様がご自身で、そうおっしゃったんですよ!」
ゲオルグは気まずそうに答える。
「それは……そうだけどさ……」
クラウディアは、気まずそうなゲオルグに畳みかける。
「私たちが一緒に入らないと、番(※妃、既婚者の意)だというのが嘘だとバレちゃうじゃない」
ゾフィーも続く。
「そうですよ!」
「だけど、さぁ……」
ゲオルグは、目のやり場に困る。
獣人たちの用意してくれたハンドタオルは、何の繊維でできているのか、ゲオルグには判らなかったが、お湯に浸けると半分、透けて見える繊維であった。
女の子たちは、身体の前にハンドタオルを当てていたが、ゲオルグからはハンドタオルが半透明に透けて女の子たちの身体が見えていた。
ゲオルグは、向かいに座るクラウディアに目を向ける。
クラウディアは、ゲオルグの目線など気に留める様子もなく、上機嫌で目を閉じて気持ち良さそうに微笑み、鼻歌を歌いながらお湯に浸かっていた。
身体の前にハンドタオルを当て、左腕を使って胸の位置でハンドタオルを押さえていた。
しかし、ハンドタオルはクラウディアの身体を隠すことなく半透明に透けて見える。
(透けてる!? 見える!)
ゲオルグの目線は、クラウディアの身体に釘付けになる。
だが、突然、クラウディアが閉じていた目をパッチリと開いたため、ゲオルグは慌てて隣のゾフィーに目線を移す。
ゾフィーもスタイルの良い身体をしていた。
ゾフィーも身体の前にハンドタオルを当てていたが、ゲオルグの視線が気になって恥じらい、左腕は胸の位置でハンドタオルを押さえ、右手でハンドタオルの裾を押さえて隠していた。
しかし、ハンドタオルはゾフィーの身体を隠すことなく半透明に透けて身体に貼り付いていた。
(なんか、直接、見えるより、こういう状況の方がエロいな……)
ゲオルグがそう考えていると、ゾフィーと目線が合う。
ゾフィーは、恥じらいから頬を赤く染めて顔を少し俯かせていたが、上目遣いにじっとゲオルグを見つめて、自分を眺めるゲオルグの反応をうかがっていた。
(……マズい!)
ゲオルグは、ゾフィーに身体を見ていたことがバレたと思い、エミリアたちの方へ目線を移す。
エミリアたちは、下級貴族の生まれであったが、お嬢様育ちの『深窓の姫君』たちであり、初めて異性に肌を見せることを強く恥じらい、顔だけでなく耳まで赤く染めていた。
浴槽に注ぎ込む源泉によって緩やかに流れる湯船は、エミリアたちが身体を隠すハンドタオルの裾を揺らしており、エミリアたちはそれを気にして、少しでも身体を隠そうと、必死にモジモジとハンドタオルの裾をせわしなく押さえていた。
こちらの裾を押さえれば、あちらが裾が泳いでめくれ、あちらの裾を押さえれば、こちらの裾が泳いでめくれる。
ゲオルグの目に、エミリアたちの身体がチラチラと見え、ゲオルグを刺激する。
(……ヤバい!)
ゲオルグは、慌てて自分の股間をハンドタオルで隠そうとして、改めて気付く。
(げっ!? オレのタオルも透けてるのか!)
ゲオルグは、ハッとして目線を上げると、クラウディアと目が合う。
クラウディアは、にっこりと微笑むと、ゲオルグの隣にやってきて話し掛ける。
「ねね。ゲオルグ。背中を流してあげる」
「い、いや。いいよ」
ゲオルグは、バレないように必死に断るが、クラウディアは尚も迫る。
「今更、恥ずかしがらなくてもいいのに。前も一緒にお風呂に入ったじゃない」
「そうだけど……」
「ほ~ら。恥ずかしがらないの」
クラウディアはそう言いながら、ゲオルグが股間を隠しているハンドタオルの裾を掴む。
「いいから!」
ゲオルグは、クラウディアから逃れるように湯船から立ち上がった。
「ええっ!?」
驚くクラウディアの手には、ゲオルグが股間を隠していたハンドタオルが握られていた。
ゾフィーの目の前に、ゲオルグの下半身が突き出されていた。
「なっ!?」
驚きのあまり、ゾフィーは目を見開いて息を吞み、顔を引きつらせて絶句する。
「きゃあ!」
エミリアたちは、短く悲鳴を上げて両手で顔を隠すが、指の隙間から覗き見る。
ゲオルグは、クラウディアが自分のハンドタオルの裾を掴んでいると知らず、立ち上がってしまっていた。
ゲオルグは、自分の下半身を女の子たちの目に晒したことと、自分が女の子たちの裸を見て欲情していたことを知られ、恥ずかしくて赤面する。
「さ、先に帰るからな!」
恥ずかしさのあまり、ゲオルグは女の子たちにそう告げると、足早に湯船を出て、一人で先に揚陸艇に帰っていった。
ゾフィーは、ゲオルグの下半身を間近で見て絶句して固まっていたが、我に返ると、叫ぶように尋ねる。
「なんですか! アレは!?」
クラウディアは、当たり前だという素振りでゾフィーに答える。
「ゲオルグのアレじゃない」
ゾフィーは、興奮した面持ちでクラウディアに尋ねる。
「それは判ります! なぜ、あんなに腫れているのですか!?」
クラウディアは、したり顔で解説する。
「貴女もクレメンスのを見たでしょ? 男の子は、えっちしたくなったら、ああなるのよ」
ゾフィーは、尚も興奮した面持ちで告げる。
「ですが! お、大き過ぎます! 男の人のアレは、あんなに大きくなるのですか!?」
クラウディアは、少し考える素振りを見せて答える。
「ん~。貴女もクレメンスのを見たでしょ? ゲオルグのは特別、立派なの」
エミリアは、恥じらいながらクラウディアに尋ねる。
「その……クラウディア様は、ゲオルグ様の立派なアレで……えっちを?」
クラウディアは、平静を装いながら、したり顔で仕草をして見せる。
「ええ。そうよ。口でこうすると、彼、喜ぶの」
カタリナは、気まずそうに皆に告げる。
「ゲオルグ様。怒ってましたね」
エリーゼも追従する。
「そうですね」
エミリアも困惑した顔で追従する。
「どうしましょう……」
ゾフィーはクラウディアに尋ねる。
「クラウディア様、ゲオルグ様を怒らせてしまったようです。……どうします?」
クラウディアは答える。
「私が後で謝っておくから。みんな、気にしないで」
クラウディアの言葉を聞いて、女の子たちは皆、入浴を済ませると、揚陸艇へと帰っていった。




